苦味のない秋刀魚と赤いシャケ──離島に届く秋
十月。
カレンダーの上では、もう秋である。けれど、沖縄に住んでいると、その実感はなかなか得られない。感じたいのに、どうしても無理なのだ。
まだクーラーが欠かせず、服装は半袖半ズボン、足元はサンダル。
そして、まだセミが鳴いている。
「夏が長い」と言えば聞こえはいいが、暦と体感のずれには、もはや諦めの境地である。
それでも、ときどき「秋だな」と思う瞬間がある。
満月の夜。
月の輪郭がくっきりして、空気がほんの少しだけ澄んでいるように感じる。
あるいは、スーパーの鮮魚コーナーでサンマを見つけたとき。ただ、そのサンマには頭も内臓もなかった。サンマは内臓の苦さがうまいのだ。おそらく、輸送のあいだに劣化してしまうから、取り除かれているのだろう。
離島で秋の味覚を味わうには、少しばかり時間と距離のハンデがある。
秋鮭もまだ入ってこない。代わりに並んでいたのはアメリカ産の、驚くほど赤いシャケだった。「こんなに赤くて大丈夫なのか」と思わずつぶやくほどの赤。
だが、アメリカも北半球だ。
季節は同じく秋。
そう考えると、こいつも“秋鮭”のうちに入るのかもしれない。
冷房の効いた部屋で、その赤いシャケを焼きながら思う。ここに秋はないけれど、ちゃんと季節は巡っているのだと。
遠回りし、中途半端に届く秋も、それはそれで悪くない。そう思うことしかできない場所に、僕は住んでいる。
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