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「節税と脱税の違いが分からなかった」では説明できない 宮崎麗果こと黒木麗香、約1億5700万円脱税事件の全容

「宮崎麗果」の名で活動してきた実業家・インフルエンサーの黒木麗香は、代表を務める株式会社Solarie(ソラリエ)の法人税や消費税など計約1億5700万円を免れたとして有罪判決を受けた。東京地裁は2026年7月15日、黒木に懲役2年6か月、執行猶予4年、Solarieに罰金4000万円を言い渡した。双方が控訴しなかったため、判決は同月30日に確定している。

黒木は被告人質問で、「節税と脱税の違いが分からない部分があって、やっていいスキームだと間違って言い聞かせてしまった」という趣旨の説明をした。しかし、公判で示されたのは、経費の範囲をめぐる微妙な解釈の違いではない。実在しない取引の領収書を第三者に作らせ、税務調査が始まると事実を隠すよう依頼し、協力者に報酬まで支払った一連の行為だった。

さらに、起訴内容には、約1億5700万円の脱税とは別に、消費税約1400万円の不正還付を受けようとした未遂も含まれていた。事件の数字と経緯を整理すると、「税務知識が足りなかった」という説明だけでは埋まらない隔たりが見えてくる。

■ SNS広告で急成長したSolarie

Solarieの公式サイトによると、同社は2020年2月に設立され、SNS運用戦略、コンテンツ企画、クリエイティブ制作、広告運用などを手掛ける。経済産業省のGビズインフォでも、同名法人の法人番号と東京都渋谷区の本店所在地を確認できる。

検察側の冒頭陳述によると、黒木は企業から依頼された美容関連商品をInstagramで紹介し、フォロワーによる購入実績に応じて報酬を得る成果報酬型の広告事業を展開していた。2021年のSolarieの売上高は約8800万円に達していた。

会社設立から間もない段階で事業が伸びる一方、利益に応じて納税額も増えた。事件の出発点として公判で示されたのが、税理士から伝えられた納税見込み額だった。

■ 税理士から「約2000万円」と説明された後、架空経費へ

検察側によると、黒木は税理士から、Solarieの納税額が約2000万円になる見込みだと説明された。黒木は想定外に大きいと受け止め、納税額を減らそうと考え、知人の北島義彦に相談した。

黒木は、北島が過去に架空経費を計上する方法で脱税したことがあると聞いており、今回も協力してくれると考えたとされた。北島は黒木に相羽友介を紹介した。黒木は相羽側に虚偽の領収書を作成させ、実際には存在しない業務委託費をSolarieの経費に計上した。

架空の請求書や領収書を用意する人物は、税務の世界で俗に「B勘屋」と呼ばれることがある。ただし、これは法令上の用語ではない。本件で問題になったのは、実際に支払った費用が経費として認められるかどうかではなく、取引そのものが存在しないのに、存在するよう装った点である。

国税庁の「法人税の重加算税の取扱いについて」も、相手方との通謀による虚偽の証憑書類の作成や、帳簿への虚偽記載を「隠蔽又は仮装」に該当する例として挙げている。架空の領収書を第三者に作らせる行為は、通常の経費判断の食い違いとは明確に区別される。

税理士は納税見込み額を説明しただけで、架空経費の方法を提案したわけではない。公判で示された経緯では、黒木がその後、自ら北島に相談している。この順序を混同すべきではない。

■ 約4億9600万円は「脱税額」ではない

報道でしばしば出てくる約4億9600万円は、脱税額ではない。架空の業務委託費を計上するなどして圧縮したSolarieの所得額である。

対象となったのは、2021年1月期、2023年1月期、2024年1月期の計3事業年度で、連続した3事業年度ではない。この所得圧縮によって免れた法人税などは約1億2600万円だった。これとは別に、2022年2月から2024年1月までの消費税約3100万円を免れたとされた。両者を合わせた約1億5700万円が、報道で「脱税額」とされている数字である。

加えて、起訴状によると、黒木とSolarieは消費税約1400万円の還付を不正に受けようとした。これは未遂で、実際に受け取った還付金ではない。したがって、約1400万円を脱税額約1億5700万円に単純加算して、「約1億7100万円を脱税した」と表現するのも正確ではない。

■ なぜ法人税と消費税の両方が減るのか

業務委託費などの外注費は、実在する事業上の取引であれば、法人の所得計算で損金になり得る。また、消費税の課税仕入れに該当し、必要な要件を満たせば、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引く「仕入税額控除」の対象になり得る。

そのため、架空の外注費を本物の取引のように計上すると、法人税の計算では所得を不正に小さく見せ、消費税の計算では存在しない仕入税額控除を作り出すことになる。本件で法人税と消費税の双方が問題になり、不正還付未遂にも発展したのは、この二重の効果による。

■ 口裏合わせの1000万円と、判決認定の計1180万円

架空書類の作成後には、税務調査への対応も問題になった。初公判では、北島が黒木から「事実を隠し通すよう頼まれた」と話していたことが明らかにされた。また、黒木が東京国税局の調べに対し、口裏合わせの謝礼として、北島を介して相羽に1000万円を支払ったと供述したことも示された。

一方、東京地裁の判決は、黒木が相羽に渡した謝礼・報酬の総額を計1180万円と認定した。1000万円は、口裏合わせの謝礼について黒木が調査段階で述べた金額であり、1180万円は判決が認定した相羽への報酬総額である。同じ数字の言い換えではない。

存在しない取引の書類を作らせたうえ、調査が始まってからも事実を隠すよう頼み、金銭を支払った。この経緯は、単純な入力ミスや経費区分の勘違いとは性質が異なる。

■ 最初の声明は「過少申告」と表現

在宅起訴が報じられた2025年12月、Solarieは公式サイトに「ご報告」と題する文書を掲載した。そこでは、過去の税務申告について関係当局から指摘を受けているとして、「過少申告のご指摘を重く受け止め、深く反省しております」と説明し、修正申告と納税に速やかに対応するとした。

過少申告は、本来納めるべき税額より少なく申告した状態を表す広い言葉で、故意の脱税だけを意味するものではない。しかし、その後の刑事裁判で認定されたのは、架空の領収書を使って所得を意図的に圧縮した行為だった。最初の声明だけでは、架空書類、協力者への報酬、口裏合わせ、不正還付未遂という事件の核心は分からない。

Solarieは同じ文書で、GENiS、herbacieなどのブランドを運営する別法人や商品・サービス、家族は本件と無関係だとしている。少なくとも、公表された起訴内容で黒木の家族は被告になっていない。

■ 在宅起訴から判決確定まで

東京地検特捜部は2025年12月25日、黒木とSolarieを法人税法違反などの罪で在宅起訴した。在宅起訴は、被告人の身柄を拘束しないまま刑事裁判を進める手続であり、逮捕されなかったこと自体が、事件の軽重や無罪を意味するわけではない。

2026年3月18日の初公判で、黒木は起訴内容について「間違いありません」と認めた。5月14日の論告求刑公判では、検察側が黒木に懲役2年6か月、Solarieに罰金5000万円を求刑した。検察側は、納税額を減らしたいとの身勝手な考えから行われた悪質な犯行だと主張した。

弁護側は、税務署が調査すればすぐに発覚する手口で、巧妙さや悪質さはないとして、執行猶予付き判決を求めた。

7月15日、東京地裁は黒木に懲役2年6か月、執行猶予4年、Solarieに罰金4000万円を言い渡した。弁護側、検察側の双方が控訴期限までに控訴しなかったため、判決は7月30日に確定した。執行猶予は無罪や刑の免除ではなく、有罪判決は確定している。

■ 手口は「単純で稚拙」でも「悪質」

東京地裁は、架空の請求書や領収書を使った手口を「単純で稚拙」と評する一方、「悪質」で、身勝手な考えから犯行に及んだ責任は重いと判断した。発覚しやすい手口であることと、行為の悪質性が低いことは同じではない。

一方、黒木が事実を認めて反省を述べたこと、修正申告が行われ、免れた税金が全額納付されたこと、前科がないこと、会社代表として責任を果たそうとしていることなども考慮された。裁判所は、刑務所に収容するより、社会内で更生を図らせるのが相当だと判断し、執行猶予を付けた。

■ 脱税を手助けした2人にも有罪判決

北島と相羽も、法人税法違反ほう助などの罪に問われ、東京地裁からそれぞれ懲役8か月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。相羽には罰金900万円も科された。

公判では、北島が黒木の相談を受けて相羽を紹介し、相羽側が架空の領収書を用意する役割を担った経緯が示された。事件は黒木とSolarieだけで完結したものではなく、虚偽の証憑を作る協力者を組み込んだ仕組みで行われていた。

■ 修正申告しても刑事責任は消えない

黒木側は修正申告を行い、免れた税金を全額納付した。これは量刑上、有利な事情として考慮されたが、成立した脱税の刑事責任を消すものではない。Solarieへの罰金4000万円は、本来納めるべき税金とは別の刑事罰である。

修正申告で追加の税額が生じれば、法令に基づき加算税や延滞税が問題になり得る。地方税への影響もあり得る。しかし、黒木側が実際に支払った本税、加算税、延滞税、地方税などの総額は公表されていない。

したがって、「最終的に5億円を支払った」「追徴税額が5億円を超えた」といった断定には根拠がない。確認できるのは、起訴対象となった法人税や消費税などの脱税額が計約1億5700万円だったこと、その税金が判決までに全額納付されたこと、Solarieに罰金4000万円が科されたこと、そして約1400万円の消費税不正還付は未遂だったことまでである。

■ SNSの華やかな投稿が調査のきっかけだったのか

黒木はSNSで高級ブランド品、高級車、海外旅行などを紹介していた。そのため、投稿された生活ぶりと申告内容の差が査察の端緒になったとの見方が広がったが、東京国税局は、本件の査察調査を始めた具体的なきっかけを公表していない。「ブランド品を見せたため摘発された」と断定することはできない。

一方、国税庁がSNSなどを利用して収入を得る事業者も査察対象としていることは、公式資料で確認できる。国税庁の「令和7年度 査察の概要」によると、全国で検察庁に告発したのは82件、告発分の脱税総額は約84億円だった。東京国税局管内では19件、約20億円だった。なお、これらの公式統計上の「脱税額」には加算税が含まれるため、本件の約1億5700万円と単純比較する際には注意が必要である。

国税庁と東京国税局の資料には、美容系インフルエンサーの活動を通じて広告代理を行う会社が、不正加担者を利用し、取引事実のない架空の業務委託費を計上して法人税と消費税を免れた事例も掲載されている。社名と個人名は明記されていないため、Solarieの事件だと公式に断定はできないが、事業内容と手口は強く符合する。

刑事責任を問われた直接の理由は、華やかな生活を発信したことではなく、架空経費と虚偽の書類で税金を免れ、不正還付を受けようとしたことにある。

■ 父親は元参議院議員の白眞勲氏

黒木の父親は、元参議院議員の白眞勲氏である。白氏は朝鮮日報日本支社長を経て、2004年に参議院比例代表で初当選し、3期務めた。2025年の参議院選挙にも立憲民主党から比例代表で出馬したが落選しており、2026年8月現在の肩書は元参議院議員である。

■ 「節税だと思った」では終わらない

合法的な節税は、法律が認める制度や、実在する事業上の支出を適切に用いて税負担を抑える行為である。取引の実態や税法上の評価をめぐり、納税者と税務当局の見解が分かれることもある。

しかし、本件で認定されたのは、実在しない取引について虚偽の領収書を第三者に作らせ、その金額を経費に組み込み、調査開始後には事実を隠すよう依頼して報酬を支払った行為だった。そこに、約1400万円の消費税不正還付未遂も加わる。

税務知識が十分でなかったとしても、存在しない取引を存在するよう装った事実は変わらない。税理士から約2000万円の納税見込みを告げられた後、架空経費による脱税経験があると聞いていた知人に相談し、別の人物を紹介してもらい、虚偽の書類を作らせ、税務調査への口裏合わせまで求めた。この積み重ねを、「節税と脱税の違いが分からなかった」という一言だけで説明することはできない。

この事件が示した境界線は曖昧ではない。法律の範囲内で実在する取引や制度を使うのが節税であり、架空の取引と虚偽の書類で税額を減らすのは脱税である。

税金は、生活に余裕のある人だけが納めているものではない。身体に不自由を抱える人も、けがや病気の最中にある人も、子育てに追われる人も、高齢者も、祖国を離れて日本で働き、社会を支えている外国人も、それぞれの事情を抱えながら、法律に基づいて負担すべき税を納めている。

そのような人々が誠実に納税する一方で、存在しない経費を作り上げ、約1億5700万円もの税金を免れた本件は、単なる会社の不正では済まされない。誠実に税を納めてきた人々への冒涜であり、甚だしく不愉快な脱税事件である。

■ 出典URL一覧

国税庁「令和7年度 査察の概要」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2026/sasatsu/r07_sasatsu.pdf

東京国税局「令和7年度の査察事績」
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/release/r07/sasatsu/pdf/01.pdf

国税庁「課税売上げと課税仕入れ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6355.htm

国税庁「仕入税額控除の対象となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6451.htm

国税庁「延滞税について」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm

国税庁「確定申告が間違っていたとき・確定申告を忘れていたとき」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/campaign/r6/Apr/03.htm

国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm

経済産業省 Gビズインフォ「株式会社Solarie」
https://info.gbiz.go.jp/hojin/ichiran?hojinBango=6012801019947

株式会社Solarie 公式サイト
https://solarie.jp/

株式会社Solarie「ご報告」
https://solarie.jp/assets/img/pdf/report.pdf

テレビ朝日「1億5000万円超 脱税のきっかけは『想定外』 人気インフルエンサー初公判」
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900186346.html

テレビ朝日「インフルエンサー脱税 社長の女に懲役2年6カ月を求刑」
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000505118.html

テレビ朝日「【経緯】1.5億円超脱税の罪でインフルエンサー社長に有罪判決 東京地裁」
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900195064.html

FNNプライムオンライン「約1.5億円脱税の“美容系インフルエンサー” 宮崎麗果被告 東京地裁で涙の謝罪」
https://www.fnn.jp/articles/-/1044637

毎日新聞「インフルエンサーの宮崎麗果被告 1.5億円脱税認める 地裁初公判」
https://mainichi.jp/articles/20260318/k00/00m/040/101000c

毎日新聞「美容インフルエンサーが頼った男 1.5億円脱税の裏に『B勘屋』」
https://mainichi.jp/articles/20260713/k00/00m/040/200000c

毎日新聞「インフルエンサー宮崎麗果被告の有罪判決確定 1.5億円脱税の罪」
https://mainichi.jp/articles/20260730/k00/00m/040/079000c

オリコンニュース・共同通信「“インフルエンサー”宮崎麗果被告、初公判で約1.5億円の脱税認める」
https://www.oricon.co.jp/news/2443016/full/

日刊スポーツ「5億円近い所得隠しの『宮崎麗果』こと黒木麗香被告に懲役2年6月、執行猶予4年判決」
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202607150000554.html

日刊スポーツ「インフルエンサー『宮崎麗果』の犯行手口明らかに 会社役員の男にキックバック1180万円も」
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202607150000599.html

テレビ西日本「『納税額減らしたいとの身勝手な考え』宮崎麗果被告に有罪判決」
https://news.tnc.ne.jp/social/917616_1.html

参議院「第20回参議院議員通常選挙」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/old_gaiyo/160/1600000.pdf

立憲民主党「白しんくん候補者情報」
https://cdp-japan.jp/archive/election2025/candidate/4201/%E7%99%BD%E3%81%97%E3%82%93%E3%81%8F%E3%82%93

日刊スポーツ「参院選立候補者の娘実業家、『選挙終わった途端、何も説明なし?』の声受け説明」
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202507240000258.html

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