漫画家アシスタント物語 第3章〈6〉 ユミさんは飛び出した
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《 写真上:2006年当時の秋山プロの夕食。冷え切った近所の仕出し弁当 》
< この3章〈6〉は、文庫本約17ページ分 >
その30
その頃、前回書きました様にマツさん( 仮名:松村 祐樹、広島出身、当時24歳 )とユミさん( 仮名:吉村由美子、?出身、自称23歳、実は27歳 )の関係がこじれるわけです。
私が秋山プロに入った1978年春はちょうどそんな頃でした・・・・・。
マツさんは、仕事中に話をしたり笑ったりする事がまったくありません。しかし、お酒が入ると饒舌な広島弁が流れ出します。
ちょっと短気で( 高校時代はそうとう目立つツッパリだったそうです )無鉄砲な所がありました。
ユミさんは、おしゃべりで明るく( 描く少女漫画は暗かったのですが )律儀でやさしい人でした。
私が秋山プロに入って半年ほどした頃( 1978年 初冬 )、ちょっとした出来事がありました。
それは、この二人の関係が険悪化している事が最初に分かった出来事でした・・・・・・。
仕事開始の午後1時ごろ、いつもの様に遅刻して寝ぼけ眼の私が席へ着いたのですが・・・・・・
ユミさんは、私に出前の注文を聞くのを忘れていたのです。 私自身も、注文する事を忘れていていたのです・・・・・・
4~5分して、マツさんが席を立つと、ユミさんの背後へ回り・・・・・
ガッシャーーーンッ!!
一瞬、アシスタント全員が凍りつきました。 何が起こったのか・・・・?
マツさんはユミさんの椅子を蹴飛ばしたのです。 音は大きかったのですが、ユミさんが怪我をするような事はありませんでした。
マツさんが大きな声で
「 注文を聞いてやらんかいっ!」
・・・・と、一声怒鳴るとそのまま、トイレへウンチをしに行きました・・・・・。
秋山プロに入ったばかりの私には、この二人の関係を知りませんでしたから、いったい何がど~なっているのか、当時は全然分りませんでした。
数ヶ月前にはマツさんがしつこくユミさんに・・・
「ヤラせ~や・・・・ ヨカろぉがぁ・・・・・」
( 今なら完全なセクハラ! )
などと、話しかけていたのに・・・・・・
その当時、マツさんはジョージ先生から・・・・
「 おめぃ~、手ぇ出すんじゃねぇ~ぞぉ! 」
・・・・と、注意された事もあったらしいのですが・・・・・・セガレを大きくした広島男には無駄な説教だったのかもしれません・・・・・。
ユミさんは、その後、マツさんとは絶交状態に・・・・・。
そして・・・・・・
他の先輩が、自分のパンツをのぞいているんじゃないか・・・・? みんなにイヤラシイ目で見られてるんじゃないか・・・・? 先輩アシスタントの一人が、ジョージ先生の奥さんと不倫してるんじゃないか・・・・・・・・?
・・・・・考えてみれば、バカバカしい誤解や嘘に一人で傷ついてきたユミさんだったわけです・・・・・・・。
ユミさんが秋山プロを飛び出す事になる決定的な事件が起きたのは、秋山プロに新しいアシスタントがやって来るその当日でした・・・・・・・・。

その31
インベーダーゲームが流行った1979年昭和54年、春・・・・・・。
私がジョージ秋山プロに入ってから1年後に新しいアシスタントが来る事になりました。
ジョージ先生の大ファンだった彼の名はA君( 栃木県出身、22歳 )。背景画の技術は、秋山プロの画風とかなり違う、児童漫画的なレベルでした。
ジョージ先生が彼と同じ栃木県出身なので、気が合ったのか、すぐに弟子入
りが認められました。
A君は、藤子不二雄などの児童漫画や、童話の世界に憧れていたのだと思いますが、ドロ臭い油じみた秋山プロへ入って来た事がはたして彼にとって、幸せな事だったのかどうか・・・・・
こっちにしようか、あっちにしようか、そんなちょっとした選択で人生の航
路が決まってしまうものです。
彼の出勤初日・・・・・・
とんでもない事が起きたのです・・・・・・
その日の朝、まだアシスタントが誰も出勤していない時・・・・・・
ジョージ先生はA君の席を、作画の参考になる様に画力№1のケイさん( 仮名:堺原 慶佑、神戸出身、26歳 )の隣に決めたのですが・・・・・・
この席は元々ユミさんの席なので、彼女の荷物を全て仕事部屋のスミの席に移してしまったのです・・・・・・・。
( あくまで、技術的な事をカンさんの隣りで勉強させようと先生は考えたのです )
アシスタントたちが出勤してきます・・・・・・
( この時間、私はまだアパートで惰眠をむさぼっています )
A君は仕事場へ来て、自分の席( 前日まではユミさんの席! )に座り、他のスタッフとあいさつをしょうとしていました。
そこへ、何も知らないユミさんがやって来ます・・・・・。
ユミさんは自分の席に見知らぬ男( 1週間ほど前に秋山プロに面接に来た時に案内しているので、初対面ではないのです )が当たり前の様に座っているのを見つけます・・・・・
はじめは理解出来なかった彼女ですが、すぐにその意味を悟りました。
自分の作画道具一式が・・・・漫画の資料が・・・・雑誌が・・・・私物が・・・・ゴミ箱さ
え・・・・雑然とスミの席に置かれていたからです・・・・・・!
ユミさんは、口を少し歪めながら目を見開き・・・・ 一瞬、固まります・・・・
「 えぇ~~~っ? 何でぇええ~~~っ?! 」
顔面蒼白のユミさんは、そのまま一言もなく仕事場を飛び出し・・・・・・・
「その32」より‥‥
ユミさんがいなくなったその後‥‥

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漫画家アシスタント物語 第3章
そして・・・ 鬼才ジョージ秋山の弟子に、また馬鹿が加わる! 全7本、40話! ・・・・ごゆっくり、お楽しみください!
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