漫画家アシスタント物語 第4章〈10〉 デビューで終わるの?
初めての方は「 第1章」や「マガジン:第1+2章」(無料)がお薦めです!
《 画像上:1987年ヤングジャンプに掲載「雨のドモ五郎」のタイトル画 》
< この4章〈10〉は、文庫本約17ページ分 >
その55
漫画家アシスタントの物語‥‥「 雨のドモ五郎 」はそれまでに描いてきた作品とは大きな違いがありました。
それは主人公への思い入れとストーリーの「 展開 」です。 この作品は「 漫画大賞確実 」なんじゃないか‥‥ という確信じみた手応えがありました。
今度こそ、K談社のヤングM誌で「 死亡少年 」入選。 そしてこの「 雨のドモ五郎 」は集英社ヤングJ誌で漫画大賞を‥‥! 相変わらずの捕らぬタヌキの皮算用‥‥のままで終わるのか、どうか‥‥‥‥?
さて、「 雨のドモ五郎 」にカリコリとペンを入れている頃に「 死亡少年 」の結果が発表されました。
最終選考まで難なく勝ち残った「 死亡少年 」ですが‥‥ 結果的には佳作も( 記念品も!)取れずに終わりました。
『 選考委員長のC先生は、そんなにオレの作品が嫌いなのだろうか? 』
この時は、もうすっかりK談社への色気など無くしていた私は、あっさりと以降のK談社への投稿を断念します。
発表のあった当日の深夜、ヤングM編集部へ直接出かけてボツ原稿を返却してもらいに行きました‥‥。
『 よくも落としてくれたなぁああ~! 』
『 こんな雑誌には、頼まれたって二度と‥‥! 』
‥‥ってな、セリフは勿論口にはしません。 表情にさえ出さず。 ニッコリ笑顔でボツ原稿を受け取り、一礼!
この時、原稿を返却してくれた若い編集員が‥‥
「 残念でしたねぇ( 本当に残念そうに! )是非また持って来て下さい! 」
‥‥と、やさしく声をかけてくれたのですが‥‥
その時の私の頭には、目の前の編集員と副編集長のS氏がだぶりながらグルグルと回り‥‥‥‥
『 K談社では絶対に描きたくない‥‥ 』というムラムラした怒りで煮えくり返っていましたから、穏和な編集員の態度に‥‥ なぜか後ろめたい様な‥‥ かえって私の方が未練がましい様な‥‥ 申し訳ない様な‥‥ なんとも哀しい気分に落ち込んでヤングM編集部を後にしました。
それっきり‥‥‥‥K談社とはご縁がありません。
いや、正確には‥‥ その20年後に‥‥‥‥
100ページの長編「蟹工船・覇王の船」( 別冊ヤングジャンプ掲載 )の単行本化のオファーをいただきました。 当然、気持ちよく受けたのですが‥‥「会議」とかでキャンセルになりました。( 結局ご縁がありませんでした )
今は何とも思ってはいませんが、私なんぞがどう思おうと‥‥大手出版社やその編集員から見れば私の存在など、昨日出したゴミ袋の中の生ゴミ程度の価値なのかもしれません‥‥‥‥。
「 グワッキ 」「 AIZU2145 」「 僕です! 」「 死亡少年 」ことごとくボツになり、いよいよ最後の作品に‥‥‥‥。
「 雨のドモ五郎 」を持って集英社へ‥‥。
にぎやかな神保町の交差点から数分歩いた所に集英社ビルがあります。
「 アラレちゃんビル 」だの「 キン肉マンビル 」だのと1980年代の全盛期にあっちこっちに新社屋を建てまくっていた週刊漫画黄金期のあの集英社へ‥‥‥‥。
週刊ヤングJ編集員K氏‥‥ 表情を変えずに‥‥
「 ラストは、ちょっと‥‥甘いですね‥‥‥‥ 」
『 カチンッ 』( 頭の中で小さな音が‥‥ )

その56
持ち込み原稿を新人担当の編集員がパラパラめくる音は、非常に重要である。
持ち込み経験のある方なら、その音にどれほど神経を尖らせているかご存じの事と思う‥‥。
パラパラパラパラッ‥‥と見られたらまず絶望的である。 しかし、パラッ‥‥パラッ‥‥と一枚づつしっかり見てくれているようなら希望が持てる‥‥。
さらに、見ている途中で原稿をめくる音がピタリと止まったり、繰り返しページをめくる動きが出たりすれば‥‥! リーチがかかった様なものである。
私が集英社のヤングJ誌に、春夏の「 青年漫画大賞 」への応募作品として「 雨のドモ五郎 」を持ち込んだのは、1987年の晩春でした‥‥。 「 死亡少年 」の完成からこの「 雨のドモ五郎 」完成までに4,5ヶ月がかかっていました。
ヤングJ誌の編集員K氏( 後に少年誌で編集長を務める )は私とほぼ同世代( 正確には私より一つ年下 )で、メタボぎみでしたが年齢より落ち着いた感じの穏和な人物でした‥‥( 拙作「 壁 」に出てくるキャラクターで編集員のモデル )。
K氏は私の原稿「 雨のドモ五郎 」をパラリッ‥‥パラリッ‥‥と同じリズムで読んでいきました‥‥。 表情一つ変えずに‥‥。
読み終わってからの最初の一言が‥‥‥‥
「 ラストはちょっと‥‥ 甘いですねぇ‥‥ 」
クールな一言です。 この作品には以前にも書きましたように自信と手応えがありましたから私は正直な話‥‥‥‥
『 この編集員は、何か感想を言わなきゃならないんで無理にこじつけてるんじゃないのか‥‥!? 』
‥‥と、疑ったりしたものでした‥‥
「 現実は、キビシイっていう終わり方のほうが良いんじゃないですか? 」
「 ‥‥‥‥ 」
私は黙っている‥‥。 頭の中には‥‥
『 何をどう描き直すんだ‥‥? 』
この終わり方以外には何もイメージがわきません!
「 描き直しますか? 」
私は少しイライラしながら‥‥
「 これでいきます! 」
「 そ‥‥そうですか‥‥。 分りました‥‥。 お預かりします‥‥ 」
この日から1ヶ月ほどで最終選考作品が決まります。 その間、私はある事をこのヤングJ誌で試してみるのです‥‥‥‥。
それは‥‥
K談社でボツになった「 僕です! 」や「 死亡少年 」を集英社へ持ち込む事でした。 言ってみれば‥‥リサイクル‥‥! ダメで元々のこずかい稼ぎへ!
しかし、本来ならば過去の作品を引っ張り出す事よりも「 雨のドモ五郎 」の次の作品へ向けた構想を練るべきでしたが‥‥ いや、絶対にそうするべきでした‥‥‥‥!
しかし、この時すでに手持ちのカード( 自分の作品 )は底をついていたのです‥‥‥‥!
( 勿論、無価値な駄作はノートにいっぱいストックされていましたが )
「 雨のドモ五郎 」を越える次の作品が思い浮かばなかったのです‥‥。
今、考えてもゾッとしますが‥‥‥‥「 雨のドモ五郎 」のあの「 手応え 」に匹敵する様なストーリーの「 発想 」「 展開 」がないのです!
一度、ある程度の作品ができれば次はもっと良い作品が求められる‥‥!( 至極、当たり前の話! )その要求に応えられるのか?
同じ様な作品ではなく、より優れた、より面白い作品が作れるのか? 最も深刻な問題が夜の闇の様に静かに広がっていたわけです‥‥‥‥
しかし、最も恐ろしいその現実に当時の私はまだ気付いてはいなかった‥‥。 いや‥‥ 気付いていないフリをしていたのです‥‥‥‥。
人生の分かれ道‥‥ とても重要なこの瞬間に‥‥ 私は一仕事終えてのんびりと一服する様に‥‥ まったく油断した‥‥ バカ丸出の‥‥ 気楽さで‥‥ レンタルビデオなんぞを見ながらハイライトをプカリプカリと吹かしていたのです‥‥‥‥
「その57」より‥‥
最終選考に「ドモ五郎」は残ったが‥‥ 作者は結局どうなるの?

ここから先は

漫画家アシスタント物語 第4章
ジョージ秋山に弟子入り9年目・・・・テイクオフの時だ! 連続投稿、メジャー誌制覇! 男の野望と欲望の結末は・・・・!?
年金生活者にとって、とても嬉しいご支援! 感謝申し上げます!
