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漫画家アシスタント物語  第8章 〈16〉 借金地獄で美人が相談に来た!

 
《写真上: 私が毎月通った池袋のサラ金の入口階段。この階段を上り下りした30年間‥‥ 本当は、一度下ったら二度と這い上がれない恐ろしい階段?》
              < この8章〈16〉は、文庫本約10ページ分 >

 

「第8章」は、独立した「章」ですので、「第7章」の続きではありません。
「第8章〈1〉」(無料)より、お楽しみいただけます!
 
ただし‥‥
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!
 

さて‥‥ ここで‥‥‥‥
「漫画家アシスタント物語」を購読してくれた方を紹介させてください。
adel(創作頑張る!)さん ‥‥‥‥‥‥ ありがとうございました!

 
 
 

               その31  
  
    《 漫画家アシスタントが・・・自殺を考え・・・!? 》
 
 
300万円( 銀行、信販、サラ金等 )の借金を年収300万円、実質手取り250万円の私が年利約100万円を払いながら生活するのは容易ではありませんでした。
 
1990年代の中頃に描き下ろし単行本「 サイコホスピダー 」( ※参照 )を完成させますが、その印税10数万円など、借金の利息返済にパッと消える有様でした。
 
いっそ死んでしまおうか‥‥‥‥
 
ガスを吸うか‥‥ 手首を切るか‥‥ 首をつるか‥‥ 埼京線のホーム( ※参照 )に立って通過する通勤快速に飛び込むか‥‥‥‥
 
『 電車でバラバラになるのは痛いだろうなぁ‥‥‥‥ 』
 
‥‥などといった暗い想念を抱く事は‥‥‥‥ まったくありませんでした。( いや、ホントに! )
 
税込みで年収300万円の私が300万円の借金を返すのは、もはや‥‥ まともな方法では返せない事は明らかなのですが‥‥
 
私は‥‥‥‥
 
『 連載漫画を描いて単行本が出れば何ンとかなるし‥‥! 』
 
‥‥と、楽観(!)していました。
 
「 楽観 」などと書くと‥‥‥‥ 違和感を感ずる方もおられるかもしれませんが‥‥‥‥ 長年漫画家志望者をやっていると不思議な楽観主義に陥るのです。
 
この‥‥ ゆるゆるの感じが、漫画制作が沈滞する( ゲームばかりに夢中になる )怠惰感と共鳴して貴重な時間を食い潰していくわけです。
 
人生とは面白いもの( 奇妙なもの? )で、こうした下り坂人生の途中で結婚したり( ※参照 )してしまうのです‥‥ 脳に軽い麻痺が進行しているのかも知れません。
 
もっとも‥‥ この「 ゆるゆる 」な思考能力であればこそ長年、漫画家アシスタントを続けられているのかも知れません‥‥‥‥
 
今から考えれば‥‥‥‥ 私の人生は、まさに「 借金人生 」でした。毎月の給料は利息と元本の返済に消え、生活費としての借金を繰り返す‥‥ まるで元本と利息を払うための人生!
 
80年代から90年代にかけて「 サラ金地獄 」が社会問題化する過程で、以下の様な説を読んだ記憶があります。( 私のあいまいな記憶ですので、数字が不正確かもしれません )
 
『 借金の金利18%なら3年以内の返済率は80%以上。しかし、金利36%以上なら3年以内の返済率は20%未満! 』
 
「 借りた金を返せばいいんだ 」‥‥ そう考えるのが当然なのですが‥‥ しかし、それほど単純な話ではないと思うのです。
 
つまり‥‥ 「 金利 」という「 根 」があるために、問題が「 賃借関係 」から「 搾取関係 」に転化しているからなのです。
 
私の様な「 サラ金地獄 」で何十年も奴隷の様になって生きる人々と、片一方では、「 サラ金天国 」で何百億円もの所得を得て毎年の「 長者番付 」に名前を連ねるサラ金の社長さんたちもいるわけです。( 1980年代の話です! )

2000年代に入り、日本の景気はさらに悪化‥‥ 漫画業界も、ゲームや携帯に圧されて右肩下がりに売り上げが落ちていきます‥‥ 
 
そんな中、秋山プロでのリストラやボーナスカットなどから、私がマッサージ店を始めた時には借金が400万円になっていました。 これに開店資金の借り入れ金( 母親からの借金 )約400万円を入れると借金総額は800万円。

小さなお店のスタート時点で、大変な重荷を背負ってしまっていたのです。
 
それでも、幸いにしてお店の経営は安定していました( 最初の半年は赤字でしたが! )ので、借金の利息や元本の返済などを滞らせる事はありませんでした。

この頃の思い出で、どうしても忘れる事の出来ないエピソードを一つ書いておきたいと思います。

借金がどうなったかの結論は、その後で!
 
 
 
 


秋山プロ仕事場の床です。左側にデスクと椅子があり、右側には台所と画材の整理棚があります。床の黒ずみは、人の足跡やインクのシミなどの40年のアシスタントたちの歴史です。2010年11月


               その32 
 
    《 漫画家アシスタントが・・・絶句する・・・!? 》
 
 
漫画家アシスタントという仕事が漫画家に拾われた野良犬の様な存在だった時代から「 美術スタッフ 」として一つの地位を確立したのは、この10年ほどの事だと思います。

そんな時代だからこそ、拙ブログが単行本化( ※参照 )されたりもしたのだと思うのです。数年前( 2007年前後 )にこのブログを単行本にしたいと連絡があった頃と、私がサラ金地獄の最底辺を這いずっていた時とがほぼ同時でした。

ブログの書籍化作業という嬉しい仕事と借金の返済がもはや不可能( 永久に利息だけを払い続けねばならない )で、精神的に追い詰められた状態が重なり、からまった糸屑のような精神状態になっていました。

仕事は、お昼から秋山プロで漫画背景を描いて、夜からマッサージ店( 年中無休 )の手伝いと会計事務や後片付け‥‥ ですから晩御飯を食べられるのは深夜1時ごろ。

それから自分のデスクやPCに向かうので、眠りに就くのは夜明け頃。 そして朝の10時過ぎに起床‥‥‥‥

土曜も日曜もなく、ただ毎日々々‥‥ 時間と請求書に追い立てられる日々の中で精神的に限界に近づいていました‥‥‥‥

そんな頃の事です、私と同じ様に多重債務に苦しむ知人が問題を起こしました‥‥( 例の如く、内容を一部変更しています )

私のカミさんの友人で、北区赤羽でタイ食材店を経営するタイ人女性のイームさん( ※参照 )の旦那さんは日本人で、私たちはよく一緒に食事をしたりする間柄だったのです‥‥

その旦那さんの名前は下村さん( ※参照 )と言って40歳ほどの色男でした。言葉使いが丁寧で腰の低いとても優しい旦那さんでした。( 若い頃の加山雄三を酸っぱくした様な色男 )

ただ、人の良さとビジネスは別で、お店の経営は巧くいっていない様でした。 この時には噂ですが、1千万円近い借金に苦しんでいたとか‥‥

カミさん同士は仲が良かったのですが‥‥ お互いに夫婦で一緒に食事をしながら借金の相談をするほど親しい関係にあったわけではありませんでした。

4人で食卓を囲んでいる時に、お皿にのった料理の最後の一片をお互いに遠慮して、結局誰も手を付けずに終わってしまう様な‥‥ そんな間柄でした。
 
2007年の春。 私がサラ金地獄にギブアップして弁護士に相談しようかどうしようか‥‥‥‥ そんな事を毎日悩んでいた頃の事です‥‥ ( まるで、警察に自首する前の逃亡犯の様に )
 
赤羽のタイ食材店が終わってから、突然、イームさんが訪ねてきました。 彼女も年齢が40歳ほどで、私のカミさんとは同じ世代。 でも40歳には見えない笑顔の温かい感じの美人でした。( 女優で言えば鈴木京香風 )

いつもニコニコしている彼女が暗い顔でドアの前に立っていました‥‥

私は、カミさんに用事があるのだろうと思って‥‥

「 今はお店で仕事してますから‥‥ 」

‥‥と、隣の部屋( 住居用の部屋とお店はマンションの隣同士 )を指さして、インターホンを押すように促すのですが‥‥

「 違う‥‥ 小池さんに‥‥ 話ある‥‥ 」

深刻な表情に圧される様にして私は、彼女を居間へ通しました‥‥‥‥ 彼女は前置きもなく突然、本題を切り出すのです‥‥

「 うちの旦那さん、捕まった‥‥ 」
「 ‥‥はぁ? 」
「 痴漢して捕まった‥‥ 」

私は、とっさに「 痴漢冤罪ちかんえんざい 」を想起しました。 これは、まったく偶然なのですが‥‥ 当時、話題になった「 それでもボクはやってない 」( 周防正行監督、東宝07年公開 )という映画を観たばかりだったのです。

『 あの真面目で優しい好男子が、痴漢なんてするわけない! 』

私は、そう直感しました‥‥!

しかし‥‥‥‥

しかし、イームさんの次の言葉で私の「 直感 」は粉砕します‥‥‥‥

下を向いたまま‥‥‥‥ イームさんは、表情を変えずに‥‥‥‥

「 これで3回目なんです‥‥ 」

‥‥‥‥‥‥‥‥おいおい‥‥‥‥ ダメだぞ、こりゃ!
 

 
  
 

       「 漫画家アシスタント物語 第8章〈17〉」へつづく・・・・

                   「第8章〈15〉」へもどる‥‥

                   「もくじ」 へ‥‥

 

  

 ~~~ 参照 ・第8章〈16〉 ~~~ ( 読んでも、読まなくても!)
 
 【その31】
「サイコホスピダー」 : 1996年、〇一書房より「〇魔の精神病棟」を原案に出版された描き下ろし漫画単行本。
埼京線のホーム : 当時、私が利用したJR線「北戸田駅」。快速電車と、通勤快速の通過駅。
結婚したり : 1995年1月、タイ人女性とチェンマイにて結婚。
【その31】
単行本化 : 2006年12月、最初のオファーがマガジン・マガジン社の編集員氏からありました。本格的に単行本化が進むのは、それから1ヵ月後。
イームさん : 仮名。北区赤羽の裏通りで小さなタイ食材店を日本人の旦那さんと経営している40歳のタイ人女性。
下村さん : 仮名。イームさんと同じ年のハンサムな中年男性。真面目で優しく、寡黙な人。若い頃の加山雄三を酸っぱくした様な色男。

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