漫画家アシスタント物語 第5章 〈2〉 楽しめない=生み出せない!
初めての方は「 第1章」や「マガジン:第1+2章」(無料)がお薦めです!
《 写真上:2004年12月、秋山プロの仕事場風景です。スタッフは全3人。》
< この5章〈2〉は、文庫本約15ページ分 >
その6
漫画家志望者の部屋の中には多くの漫画本やビデオテープが壁一面に積み上げられているものです。 ひどい時には窓さえ本立てで埋めつくされ、部屋の四方が本とビデオの山という人も‥‥
1987年、デビューした頃の私の部屋には漫画本がほとんどありませんでした。漫画家に成ろうとしているのに、漫画本が全然ない‥‥
その理由は、私自身にもよく分らないのですが、30歳を過ぎた頃( 85年 )から、漫画を読む事が苦痛になっていったのです。
漫画本を読むのもしんどくなるのですから、漫画制作が止まってしまう事など、日常的に起こります。1年でも2年でも‥‥7年10年当たり前の様にペンを持つことが出来なくなります。( 10年間漫画を描き続けるアシスタントより10年漫画を描かないアシスタントの方が圧倒的に多いのです! )
さて、漫画本を読む事についてですが‥‥‥‥
特に、漫画雑誌を読めなくなりました。 頭の中には『 漫画から学んでいたのではダメだ! 』といった固定観念があり、主に活字から情報や演出技術を学ぼうとしていました。
しかし、今から考えるとこれは完全に間違っています。
大きな謬りが二つあります。一つは‥‥ 漫画より、文学やエッセイの方が「上」にあると誤解している点。
もう一つ( より重要な点 )は漫画を描く時に優れた漫画作品ほど優れたテキストはないのだと考えなかった点です。
私のこの失敗は未だに尾を引いています。 少しでもイイ漫画を描きたいと思うなら歳が幾つであろうと、経験が多かろうと、やはり「 漫画 」から学ぶ事が大事だと思います。 失敗して、坂を転がり落ちていく私がそのイイ見本です。
文学も映画も大事ですが、漫画が一番大事である事を忘れる様では救いようがありません。( 後悔しても後の祭り )
漫画を読んで、しっかりそこから以下の点を考察して、その若い感性で感じ取って下さい。
『 この漫画はなぜ売れているのか? なぜ面白いのか? どうやって面白くしているのか? 』
漫画から素直に学ぼうとしないでいると‥‥私のようになりますので‥‥ご注意下さい!( しかし、小説を読み映画を見る事をおろそかにしては絶対にいけません! )
私の師匠であるジョージ秋山は、晩年をむかえても‥‥しっかり現代の漫画を読み、そのエッセンスや時代感覚‥‥そして、その『 魅力 』を喝破しようとしていました。
私なんぞとはモノが違い過ぎですが‥‥それにしても頭が下がります!
『 漫画、読まなきゃいけないなぁ‥‥ 』
‥‥と、反省しつつもなかなか読めない私、今年( note版改訂中、2025年 )で70歳。 どんどん型落ちしていく頭をかかえつつ‥‥‥‥

その7
漫画家に成るために漫画家アシスタントに成る‥‥
別に珍しくもない話ですが、最近では、漫画家アシスタントに成るために漫画家アシスタントに成る‥‥と、いう方もおられるそうな‥‥
世の中も変わったもんです‥‥。 さて、1980年代には、漫画家への「 弟子入り 」は漫画家への道のごく普通の選択肢の一つでした。
秋山プロにも突然、若い漫画家志望者が「 弟子入り 」を希望してやって来たりしました。もっとも、それは、80年代までの話で‥‥。 最近はサッパリ‥‥‥‥ 秋山プロを尋ねてくれる若者は見かけなくなりました。
ジョージ先生は実力よりも‥‥ 漫画に向かう真剣さで採用、不採用を決定していました。 ですから‥‥‥‥
「 絵が全然描けねぇ~のによぉ‥‥ 漫画家に成りてぇ~だなんてよぉ~! 信じられねぇ~よなぁ! 」
‥‥ってな事言っても、漫画に向かう態度が誠実であると‥‥ スタッフの一員として雇ってしまうジョージ先生なのです。
その逆に、漫画の実力がいくら高くても「 アルバイト気分 」や「 お試し気分 」に「 弟子入り 」を希望しても‥‥絶対に採用しませんでした。 実力があるのに‥‥ もったいない( 良い背景描けそうなのに )‥‥普通ならそう考えてしまうのですが‥‥
「 ダメだねぃ~っ! 」
キッパリと断られます。
しかし、秋山プロで漫画家アシスタントをする事で漫画家へのステージを一歩上がったと思うのは早計です。 ジョージ先生に採用を断られた人の方が見込みがあるのかもしれないのです‥‥‥‥
漫画家アシスタントに成るのは、漫画家に成るための道筋の一つである事は先ほども書かせていただいた通りなのですが‥‥ 意外と多いのが、漫画の背景を仕事として毎日デスクに向かう事で、精神的に充足してしまう人です。
歳を重ねると( 5年、10年 )自然にそうした傾向は出てきますが、若い人でも歳に関係なく漫画背景の仕事だけで、自分の「 まんが道 」を充実させてしまう人が少なくありません。
漫画家アシスタントとしては、申し分のない‥‥ とても良いアシスタントなのですが‥‥ まず、漫画家には成れません。 また、その事を気にさえもしません。
「 漫画がなぜ描けないんですか? 」
この質問に対する答えは・・・
「 求められもしない漫画を描けますか? 」
漫画家に成るためにアシスタントをする段階から、漫画家に成れなくてもアシスタントを続ける段階へとステージを一歩上がった‥‥と言えなくもないのです。
この辺りから時間が止まった様な奇妙な人生が始まります‥‥‥‥
このブログでは、漫画家に成るために漫画を描く物語から、漫画家には成れないけどアシスタントも辞めない物語へ‥‥‥‥
そしてさらに‥‥
漫画を描かないけどアシスタントを続けていたら漫画制作の依頼が来た‥‥という物語へステップアップ(?)していくのか‥‥ってな話のつづきは次回に!
「その8」より‥‥
デビューしてからが、連続ボツ、ダメネーム連発の蟻地獄‥‥

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漫画家アシスタント物語 第5章
ヤングジャンプでデビューしても楽はできない。 その先からが地獄のレース、だがそのコースは泥沼、迷路と迷走、遅延の地獄だった!
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