第15話 秋葉原駅の駅神様
電気街、メイド喫茶、最新ガジェット、アニメとゲーム――秋葉原駅を降りれば、あらゆる「好き」が入り乱れる。そんなカオスな街を守る駅神様は、今日も梁の上で落ち着きなくそわそわしていた。
姿はというと、半分はメイド服、半分ははっぴ姿。右手にゲームコントローラー、左手に半田ごて。本人いわく「秋葉原仕様の正装」なのだが、どう見てもコスプレの寄せ集めだ。
「えっと……今日はパソコンパーツセールの日? それともアイドルイベント? ……あ、また観光客が迷ってる!」
神様が視線を落とすと、改札前で外国人旅行者が困っていた。
「アキハバラ? アニメ? ガンダム?」
神様は慌ててコントローラーを連打する。すると偶然、改札横の観光案内所のスタッフが目に入り、旅行者はすぐに案内を受けることができた。
「ふぅ、ナイス連打! 必殺技“誰かが助けてくれる”!」
ホームでは電車を待つ人々の中に、リュックいっぱいにパソコンパーツを詰めた学生が立っていた。袋が重さで破れそうになり、今にも床に崩れ落ちそうだ。神様はとっさに半田ごてを振り上げる。すると、袋の紐が奇跡的に持ちこたえ、学生は「よかった……」と胸をなでおろす。
「ドヤ! ここに来る人はパーツごときで泣かせん!」
昼になると、駅前のメイドたちが一斉にビラを配り始める。観光客は恥ずかしそうに受け取り、サラリーマンは苦笑しながらも一枚ポケットに入れる。神様はメイド帽子を直し、まるで仲間のように満足げにうなずいた。
「配布完了! 今日も秋葉原は平和!」
だが午後、トラブルが起こる。総武線からつくばエクスプレスに乗り換えようとした男性が、長い通路で迷子になってしまったのだ。
「え、どこ? どっち? これもうRPGのダンジョンじゃん!」
神様は急いでコントローラーを連打する。すると、たまたま通りかかった中学生の集団が「俺らもつくば行くから一緒に行こうぜ!」と声をかけてくれた。男性は涙目で感謝し、集団の後ろを必死に追いかける。
「ほら見ろ! 秋葉原の迷宮はパーティープレイ必須なんだよ!」
夕方、駅ナカの飲食店はオタクたちと観光客で大賑わい。カレー屋の前には行列ができ、ラーメン屋では替え玉が飛ぶように売れていく。神様もお腹が鳴り、思わず梁の上で正座した。
「……神様だってカレー食べたいんだよなぁ」
そのつぶやきに答えるように、行列の客がカレーの香りをまとってホームに戻ってくる。香りがふわりと漂い、通勤客の顔も少しほころんだ。
夜、電気街のネオンがきらめく中、駅神様は空を見上げて深呼吸する。今日も人は迷って、笑って、荷物を抱えて帰っていく。
「うん、やっぱ秋葉原は“全部ごちゃまぜ”が似合う街だ」
神様はコントローラーを高く掲げ、最後に一言。
「次のステージも――クリアしていこうぜ!」
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