第4話 横浜駅の駅神様
横浜駅といえば――いつまで経っても工事が終わらないことで有名だ。
そんな駅を守る駅神様は、どっしりとした体格に工具箱を抱え、今日も天井の梁に座っていた。
手にはスパナ、口には飴玉。人の流れを見守りながら、工事現場の音に合わせてトントンとリズムを取る。
「よしよし、今日も改札は順調……おっと、そっちの出口はまだ仮設だぞ」
駅神様が小さく首を振ると、サラリーマンが間違った通路に入りかけて、なぜかくしゃみをした。
はっとして引き返すと、偶然正しい改札にたどり着く。
「ふふ、鼻は正直だねぇ」
そう微笑んだ瞬間、今度は観光客の一団がわいわいと押し寄せてきた。
「港の見える丘公園って、どっち!?」
駅員が必死に地図を示すが、人波に埋もれて見えない。
駅神様はそっと指を鳴らす。すると、天井から光が差し、目的の出口だけがふわりと明るくなった。観光客たちは「あっちだ!」と声を合わせ、わいわい歩いていった。
だが――駅神様の足元には、まだ無数の工事計画図が山積みだ。どれもこれも「予定」「仮設」「新通路」と書かれていて、見ているだけで頭が痛くなる。
「……ねえ、工事って、いつ終わるの?」
駅神様はぽつりと呟き、飴玉を転がした。
答える者はいない。けれど、横浜駅の雑多で活気ある空気は、それでも毎日、人々を迎え入れていた。
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