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第25話 有楽町駅の駅神様

  銀座のすぐ隣、東京国際フォーラムや帝国劇場にも直結し、ショッピングと観劇と観光でにぎわう有楽町駅。JRと地下鉄が入り乱れ、待ち合わせスポットとしてもよく使われるが、案外「どの出口で待つ?」問題が多発する駅でもある。
 この駅を守る駅神様は、燕尾服にシルクハット姿の紳士。だが手に持っているのはステッキではなく、なぜかポップコーンの袋。本人いわく「劇場街だから観劇のお供」らしい。
「さぁ、本日も開演だ! 有楽町劇場のステージは、人の流れとドタバタ喜劇!」
 朝、改札を出ようとするサラリーマンが「丸の内? 銀座? どっち?」と右往左往。神様はポップコーンを一粒放り投げる。すると偶然、通りかかった観光案内所のスタッフが声をかけ、「銀座ならこっちです」と誘導する。
「はい一件落着! 観光も通勤も、舞台袖からスタッフ総出で支えとるんや!」
 午前中、帝国劇場へ向かう女性たちが改札で盛り上がっていた。
「キャストボードどこ?」「パンフはもう売り切れ?」
 神様はにやりと笑い、ポップコーンをポンと弾く。すると劇場前の列にちょうど割り込みそうになった人が立ち止まり、列がきれいに整う。女性たちは感激しながら「マナーが大事よね」と頷き合う。
「お客さんの秩序こそ、最高の演出や!」
 昼、駅前のガード下ではサラリーマンたちがランチに悩んでいた。
「カレー? ラーメン? いや焼き魚定食?」
 神様はポップコーンを三粒放り投げ、どれが当たりか自分でも分からない状態に。すると、偶然目に入ったのが「行列必至のカレー屋」。サラリーマンたちは「ここだ!」と入っていき、満足げに出てきた。
「おお、演目“カレー公演”大成功!」
 午後、観光客が「国際フォーラムってこっち?」と切符を握りしめていた。神様はステッキ代わりにポップコーン袋を振り、舞台役者のように一礼。すると、掲示板が切り替わって矢印が光り、観光客は歓声をあげて進んでいった。
「スポットライトを当てれば、誰でもスターになれるんや!」
 夕方。山手線のホームで外国人観光客が「ユーラクチョウ? ユーラチョ?」と首をひねっていた。神様は笑いをこらえきれず、「正解は“ユウラクチョウ”!」と叫ぶ。もちろん届かないが、隣の日本人が自然に発音を直してあげ、観光客は「オー!」と感心していた。
「よし、言語指導まで完璧や!」
 夜。劇場帰りの観客が興奮冷めやらぬ顔で駅に押し寄せる。パンフレットを抱きしめる人、キャストの話題で盛り上がる人、感動で泣いている人。神様はポップコーンをつまみながら、その様子を微笑ましく眺める。
「有楽町はいつだって舞台の延長や。笑いも涙も、ここでひとまとめに帰っていくんやな」
 最後の電車が出たあと、神様は帽子を脱ぎ、劇場の幕を下ろすように深々とお辞儀をした。
「本日の公演はここまで。明日も満員御礼やで!」
 誰もいないホームにその声が響き、静かな夜をちょっぴり明るくした。


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