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第38話 藤沢駅の駅神様

  東海道線、小田急江ノ島線、江ノ島電鉄が集まる湘南の要所・藤沢駅。駅前からは江の島へ向かう人々、海水浴や観光を楽しむ若者たちで、休日には波のような人の流れが押し寄せる。
 ここを守る駅神様は、アロハシャツに麦わら帽子、サーフボードを抱えた陽気なおっちゃん。いつでも「湘南ボーイ!」を名乗り、波乗りのノリで人の流れを整えている。
「イエーイ! 今日も人の波、ビッグウェーブや! みんな、うまく乗りこなせよー!」
 朝。東海道線から小田急に乗り換えようとする通勤客が殺到し、改札前が大渋滞。神様はサーフボードを掲げ、「波を割れー!」と叫ぶ。すると偶然、臨時改札が開放され、人の流れが二手に分かれてスムーズに進んだ。
「ナイスライド! サラリーマン波乗り選手権、合格や!」
 午前中、観光客が「江ノ電どこ?」とキョロキョロ。神様はボードを床に立てかけ、「レールの波に乗れ!」と指差す。するとちょうど、江ノ電カラーの緑の電車がホームに滑り込み、観光客は歓声をあげて走っていった。
「はい出ました! 江ノ電は湘南のローカルウェーブや!」
 昼。駅前の商店街で若者が「しらす丼? カレー? パンケーキ?」と悩んでいた。神様はサングラスを直し、「腹が減ったら全部サーフイン!」と叫ぶ。すると偶然、「湘南グルメ3点盛りセット」の看板を発見。若者は即決で入店。
「湘南フードトリップは欲張りで決まりや!」
 午後、江ノ電ホームで子どもが「海! 海!」とはしゃいでいた。神様は波乗りポーズを決め、「ビッグウェーブはもうすぐや!」と笑う。と、そのとき、ホームから海風が吹き抜け、子どもは歓声を上げた。
「湘南の自然エフェクトは、神様要らずやな!」
 夕方、帰宅ラッシュで小田急線ホームは満員電車を待つ人でごった返す。神様はサーフボードを横にかざし、「ゲートオープン!」と叫ぶ。するとタイミングよく増結された車両が到着し、人々はすんなり乗り込めた。
「追加の波、感謝や! 夕方のラッシュもこれでチューブライド成功!」
 夜。江の島帰りの観光客が土産袋を抱え、日焼けした笑顔で駅に戻ってくる。神様は梁の上に立ち、サーフボードを掲げて叫んだ。
「藤沢は都会と湘南の境目や! 働く人も遊ぶ人も、ぜーんぶまとめて波に乗せて運ぶでぇ!」
 そして夜空に向かってウィンクしながら、指でシャカサインを作った。
「明日もビッグウェーブ、カモンや!」
 その声は人には届かない。けれど駅を出ていく人々の顔には、海帰りのような爽快さが残っていた。


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