第42話:柏駅の駅神様
常磐線と東武アーバンパークラインが交わり、駅前にはデパートと商店街、さらにライブハウスやサッカースタジアム行きのバスまで揃う柏駅。千葉県北西部の「カシワ都」とも呼ばれるほどにぎやかで、若者文化の発信地でもある。
この駅を守る駅神様は、派手なアロハシャツにサングラス姿のお調子者。肩からはラジカセをぶら下げ、流す曲はいつも場違いに明るいダンスミュージックだ。
「イエーイ! 本日も柏ステーション、パーティ開幕やでー!」
朝、常磐線快速から降りたサラリーマンが「東武線どっち?」と慌てていた。神様はラジカセの音量を上げ、「こっちやでー!」とリズムに乗せて叫ぶ。もちろん人には聞こえないが、その瞬間、通りすがりの女子高生がノリノリで「アーバンパークラインはあっちっすよー」と教えてくれた。サラリーマンは助かり、神様はガッツポーズ。
「ほら見てみぃ、音楽は人を動かすんや!」
午前中、駅前のバス停でサッカーサポーターが「スタジアム行きどれ?」と大騒ぎ。神様はサングラスをくいっと上げ、「よっしゃ応援団出動や!」と叫ぶ。すると偶然、電光掲示板が点滅して「日立台行き」が表示され、サポーターたちは大歓声。
「柏レイソルの応援は駅から始まっとるんや!」
昼、デパートのレストラン街で学生が「オムライス? パスタ? カレー?」と迷っていた。神様はアロハの裾をひらひらさせながらラジカセを回す。すると、ちょうどテレビ画面に「本日カレー半額」の文字が映り、学生たちは「決まりや!」と突入。
「迷ったらカレー! これ黄金ルールやで!」
午後、ライブハウス帰りの若者が「駅どっち?」とキョロキョロしていた。神様はDJ風にターンテーブルを回す真似をすると、近くのバンドマンが「駅こっちだよ」と声をかける。若者は感激して「サンキュー!」とハイタッチ。
「イエス! 柏は音楽でつながっとる!」
夕方、帰宅ラッシュでホームは大混雑。神様はラジカセを肩に担ぎ、ビートに合わせて叫んだ。
「ステップ踏んで! 前詰めて! ドア閉まるでー!」
すると、不思議なことに人々の足取りがほんの少しだけリズムに合い、混雑の中でもスムーズに乗り降りができた。サラリーマンが「今日は混んでるのに不思議と楽やな」と呟き、神様はドヤ顔でサングラスを直した。
「ふふん、音楽は混雑すら踊りに変えるんや!」
夜。駅前の飲み屋街に灯りがともり、人々が笑い声をあげながら吸い込まれていく。神様は梁の上に寝そべり、ラジカセの音量を少し下げて、にやりと笑った。
「柏は若者も大人も、音楽もサッカーもごった煮や。でもそれが最高のリズムを生んどるんや」
そして夜空に向かってサングラスを外し、叫んだ。
「明日も踊れ、柏ステーション! パーティは24時間ノンストップやー!」
その声は人には届かない。けれど、駅を出ていく人々の足取りは、どこか軽快にスキップを踏んでいるように見えた。
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