第13話 名古屋駅の駅神様
名古屋駅――通称「名駅」。東海地方の玄関口にして、新幹線・在来線・地下鉄・名鉄・近鉄がひしめき合う巨大な結節点だ。
この駅を守る駅神様は、金のしゃちほこの冠をかぶった、ちょっと陽気なおじさんの姿をしていた。
人混みの中でもやたらと声が大きく、笑い声が響けば、どこかしらの店の呼び込みと勘違いされることもしばしば。
「おーし、今日も元気にいくがね!」
駅神様は両手を広げ、人々の流れを見守る。
ちょうどそのとき、新幹線ホームに向かって急ぐ旅行者のカップルがいた。時間ぎりぎりで焦り顔。駅神様はひょいと冠を傾けると、エスカレーターの上りが空き、二人は人混みをすり抜けるように駆け抜けていった。
「ほれ、間に合ったがや! よかったなぁ」
駅神様はにんまり。
一方、地下鉄の改札では、観光客がきしめん屋の前で立ち止まっていた。
「食べる? でも新幹線の時間が……」
迷う二人の背中を、駅神様はぽんと押すように風を送った。暖簾がふわりと揺れ、だしの香りが漂う。結局、二人は「やっぱり食べよっか!」と笑顔で席に着いた。
「うんうん、旅の思い出にゃ腹ごしらえも大事だがね」
そう呟いた瞬間、駅の西口でビジネスマンが迷っていた。
「えっと、名鉄ってどっち!? 近鉄は? あれ?」
駅神様は頭をかきながら苦笑した。
「……そればっかりは、わしもたまに迷うんだわ」
名古屋駅の広大さは、神様でさえ手を焼くのだ。
それでも人の流れは賑やかで、名駅は今日も活気にあふれていた。
駅神様は胸を張り、大声で笑う。
「よっしゃあ! 次は誰を幸せにしたろか!」
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