第8話 品川駅の駅神様
新幹線、在来線、京急まで乗り入れる品川駅。東京南の大動脈として、人の波は朝から晩まで途切れない。
この駅を守る駅神様は、ちょっとせっかちな青年の姿をしていた。髪はオールバック、足は常に小刻みに動いている。
「はいはい、次の電車はもうすぐ来るよ! 急いで急いで!」
駅神様が声をかけるたび、エスカレーターが少し早く動いたり、改札の行列が偶然ぱっと進んだりする。
そのとき、新幹線ホームに駆け込むビジネスマンの姿が。
「出張に遅れる~!」
駅神様は指を鳴らした。すると自販機がちょうど品切れになり、ビジネスマンは買おうとして立ち止まらずにホームへ。おかげで無事に新幹線に飛び乗れた。
「ふぅ、危なかったな。……まぁ、コーヒーは名古屋で買えばいいさ」
一方で京急の改札口では、外国人旅行者が困っていた。
「エアポート……どっち?」
駅神様は足を止め、スマホの電波をひゅっと集める。すると、旅行者の画面に「羽田空港行き」と大きく表示され、彼らは歓声を上げて走り出した。
「よしよし、無事に飛行機に間に合うだろう」
だが――駅ナカの立ち食いそば屋の前で、会社員が迷っていた。
「天ぷらそばか……いや、かき揚げうどん……」
駅神様は頭を抱える。
「……これは僕でも決められないや」
結局、会社員は両方頼み、食べすぎて午後の会議で眠くなった。
品川駅の駅神様は、天井の梁に腰かけて空を見上げる。
「人の流れは止められない。けど、ちょっと背中を押すくらいなら――僕の役目だね」
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