見出し画像

第27話 金山駅の駅神様

 名古屋の副都心、金山駅。JR・名鉄・地下鉄が交差し、駅ビルには映画館もライブハウスも居酒屋もそろう。朝から晩まで人が行き交い、まさに「なんでもある駅」として君臨している。
 ここを守る駅神様は、金色のはっぴを着て、手に軍配を持った陽気なおっちゃん。本人いわく「名前が金山やから金ピカに決まっとる!」らしい。
「さぁさぁ、今日も金運ならぬ人運アップ! 人の流れはワシに任せときゃええがね!」
 朝、通勤ラッシュでJRから地下鉄に乗り換える人の波が殺到する。神様は軍配をブンと振り下ろした。すると偶然、エスカレーターが一台空き、流れが自然と分散。乗り換え客はスムーズに進む。
「はい勝負あり! 金山の混雑も軍配ひとつで一発解決や!」
 午前中、観光客が「名古屋港ってどっち?」と改札で迷っていた。神様は軍配を掲げ、力強く叫ぶ。
「港はこっちや! 夢とイルカと水族館が待っとるで!」
 もちろん聞こえない。だがちょうどそのタイミングで路線図を指差した子どもが「こっち!」と元気に叫び、家族全員が笑顔で進んでいった。神様はにんまりと頷いた。
「子どもは未来の案内人やな!」
 昼、駅ビルのレストラン街は大混雑。若者たちが「味噌カツ? ひつまぶし? 手羽先?」と悩みまくっている。神様は軍配を振り、「全部行っとけー!」と念じる。すると、偶然「ハーフ&ハーフセットあります!」という看板が目に入り、若者たちは歓声をあげて店に入る。
「これぞ金山名物“欲張りセット”や!」
 午後、ライブハウス帰りの若者が改札前で「打ち上げどこにする?」と相談していた。神様は軍配をひらりと動かす。すると、駅前の居酒屋の提灯がパッと灯り、若者たちは「ここや!」と即決。
「よっしゃ、宴会ルート確定! ワシの軍配に狂いなし!」
 夕方、帰宅ラッシュが始まると、JR・名鉄・地下鉄の乗り換え客が一斉に押し寄せて大混乱。神様は額に汗を浮かべながら軍配を乱打した。
「東へ! 西へ! 南へ! はい勝負ありー!」
 不思議なことに、人の流れは自然と三方向に分かれていった。サラリーマンが「今日は混んでるのに妙にスムーズだな」とつぶやき、神様は勝ち誇ったように笑う。
「これぞ金山流“人間将棋”や!」
 夜。映画館帰りのカップル、居酒屋で飲みすぎたサラリーマン、ライブで汗だくの若者――さまざまな人が駅に戻ってくる。神様は梁の上で軍配を掲げ、金ピカの法被をなびかせながら叫んだ。
「金山は人も路線もイベントもぜーんぶごった煮や! でもそのごった煮がうまいんや! 明日も金運、人運、笑運、全部まとめて任しとき!」
 その声は人には届かない。けれど駅を出ていく人々の顔には、どこか金色の笑みが浮かんでいた。


いいなと思ったら応援しよう!

Goldness 楽しんでいただけることが一番の喜びです。いつもご覧いただき、ありがとうございます!これからも、皆さんと一緒に素敵な時間を共有できるように、より一層努力していきます。