第30話 五反田駅の駅神様
山手線、都営浅草線、東急池上線が交わる五反田駅。オフィス街と歓楽街が背中合わせに存在し、昼はビジネスマンで溢れ、夜は居酒屋から笑い声がこぼれる。駅前には不思議と“カオス感”が漂っている。
ここを守る駅神様は、サラリーマン姿にネクタイを鉢巻きにしたおっちゃん。右手にビールジョッキ、左手に電卓を持ち、口癖は「仕事も飲みも、計画的に!」だ。
「さぁ今日も朝から残業覚悟! でも夜は乾杯やでぇ!」
朝。山手線ホームでスーツ姿の青年が眠そうに立っていた。電車が来た瞬間にふらりとよろけ、危うく乗り損ねそうになる。神様はビールジョッキを掲げて「カンパーイ!」と叫ぶ。すると青年の隣の女性が「どうぞ」と軽く押し込んでくれ、青年は無事に乗車できた。
「助け合いや! 朝から乾杯は無理でも、心の一杯は大事やで!」
午前中、池上線ホームで観光客が「戸越銀座? 洗足池? どっち?」と迷っていた。神様は電卓を叩き、「答えは2択や!」と叫ぶ。すると偶然、隣にいた地元の小学生が「戸越銀座はこっちっす」と教えてくれる。観光客は感謝し、神様は親指を立てた。
「五反田の小学生、ええ仕事するやんけ!」
昼。駅前の牛丼屋は行列で大混雑。サラリーマンが「大盛り? 特盛?」と悩んでいる。神様はジョッキを振って「飲み会前に食べすぎ注意や!」と叫ぶ。すると、サラリーマンは「並でいいや」と呟き、午後も無事に働けた。
「はい、胃袋も業務改善成功!」
午後、改札近くではOLがスマホを見ながら「次の会議室どこ?」と困っていた。神様は電卓を叩き、「X=会議室、Y=出口、解け!」と呟く。すると偶然、会社の同僚が通りかかり「一緒に行こう」と声をかける。OLは安堵の笑みを浮かべた。
「ナイス連携プレー! 五反田は“人脈ソリューション”や!」
夕方、浅草線ホームで外国人旅行者が「アサクサ? シンジュク?」と迷っていた。神様はジョッキを掲げて「浅草は飲み歩き、歌舞伎町は夜更かしやー!」と叫ぶ。もちろん届かないが、近くの高校生が英語で説明してくれ、旅行者は大喜び。神様は目を細めてつぶやいた。
「若いのに頼もしいわ……オレも英語勉強しときゃよかったな」
夜。駅前のネオンが輝き、居酒屋に吸い込まれる人々でごった返す。神様は梁の上に腰を下ろし、電卓を片手にビールジョッキを高く掲げた。
「五反田は、昼は働き夜は飲む。その繰り返しや。でもな、それが人間らしさっちゅうもんや!」
そしてジョッキをカンと掲げ、電卓をポチポチ叩いて笑う。
「残業代? まぁ飲み代でチャラや! ほな明日も、乾杯の準備しとくでぇ!」
その声は人には届かない。けれど駅を出ていく人々の顔は、どこか一杯やった後のようにほころんでいた。
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