第16話 大宮駅の駅神様
北関東から新幹線でやってくる人々を迎え入れ、在来線で東京へ向かう人々を送り出す。
大宮駅は、まるで大きな分岐点のように毎日ざわめいている。
その天井の梁に腰をかける駅神様は、ひょろりと背の高い青年の姿をしていた。首には赤いマフラーを巻き、足先はいつもそわそわ落ち着かない。
「おっ、新幹線が到着するぞ! やっぱり“E5系はやぶさ”はかっこいいなぁ!」
駅神様は思わず両手を広げ、ホームへ降り立つ列車を盛大に拍手で迎えた。もちろん人間には聞こえないが、その熱のこもった拍手に合わせて、ホームの子どもが「かっこいい!」と声を上げる。駅神様は嬉しくて小さくガッツポーズをした。
次の瞬間、在来線ホームではスーツ姿のサラリーマンが「乗り換え! 間に合わない!」と走っていた。
駅神様は慌ててマフラーをひらりと振る。すると、ほんのわずかにエスカレーターが速く動いた気がして、サラリーマンは間一髪で湘南新宿ラインに滑り込んだ。
「よしっ! 今日もナイスアシスト」
駅神様は鼻を鳴らす。
だが、大宮駅にはもう一つ、悩みの種があった。
改札前で、観光客たちが「鉄道博物館ってどっち?」と地図を囲んで困っている。駅神様も思わず額に手を当てた。
「鉄博かぁ……あれ、歩くと意外と距離あるんだよな」
そこで駅神様はひらめいた。マフラーをひゅっと振ると、ちょうどタイミングよく「ニューシャトル」の案内板が点滅した。観光客たちは「あ、これだ!」と笑顔になり、改札へ吸い込まれていった。
安心した駅神様は、天井からそっと人波を眺めながらつぶやく。
「うん、やっぱり大宮は“鉄道の街”だよな」
そして今日も、新幹線の到着音に合わせて、神様の手拍子が軽やかに響いていた。
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