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10年後の夢は、人材戦略で天井が決まる

先日、ある老舗ブランドの経営者と話していたら、新製品の価格設定の話から、気づけば10年先の話になっていた。「来年の売上をどう上げるか」ではなく、「10年後にどんな会社でいたいか」——その問いを真剣に語れる経営者と過ごす時間は、私にとって何より刺激的だ。

■ 製品とビジョンは、一本の線でつながっている

新製品の発表を控えたその経営者が、開発の細部より先に口にしたのは「このお客さまに、どんな体験を届けたいか」だった。価格帯の話が、いつのまにかお客さまの体験の話になり、それがブランドの10年先の方向性へと、ごく自然に広がっていく。話を聞きながら、私はその「順番」に唸っていた。

これが本来の「経営」だと私は思う。目先の数字ではなく、「誰に、どんな価値を届けるか」という問いが先にあって、そこから製品も価格も戦略も決まっていく。国内と海外、それぞれに高い目標を掲げながら、その経営者は静かに「やるべきことは、もう見えている」と言った。ビジョンが製品の細部にまで血を通わせている会社は、強い。

■ AI時代でも、意思決定は人がする

話は財務にも及んだ。AI時代において、経営者に求められる力はますます「判断力」に集約されていく、と私は感じている。情報の収集も整理も、これからはAIが担ってくれる。だが、「この数字をもとに、今どう動くか」という意思決定だけは、依然として人間——とりわけ経営者——の仕事として残る。

そのためには、財務数字を自分の言葉で読める力が要る。PLを見てビジネスの流れを感じ、BSを見て財務体力を把握し、CFを見て資金の息継ぎを確かめる。この基礎がないまま、AIが出した分析を「なんとなく正しそうだ」と受け取るだけでは、経営の舵を本当の意味で握っているとは言えない。「だからこそ、後継者にもこの財務リテラシーを早く渡したい」——その経営者の言葉には、切実さがあった。

■ 人材が、夢の天井になる

10年ビジョンとして、大きな数字を掲げる。けれど、ここで必ず立ちはだかるのが「人材」だ。「やりたいことは、わかっている。でも、やれる人がいない」——この言葉を、私は本当に多くの経営者から聞いてきた。

海外展開を加速したい。でも、語学と専門知識を兼ね備えた人材が採用できない。採用に割く時間も人手も足りない。だから現状のメンバーで回し続け、また採用に手が回らない——この悪循環こそが、多くの会社の「夢の天井」になっている。やりたいことの大きさではなく、やれる人の数で、未来の上限が決まってしまう。

だからこそ、人材は戦略の「前提条件」ではなく、「戦略の一部」として考えたい。どんな人材を、いつまでに、どうやって確保し、育てるのか。それを10年ビジョンと同じ熱量で並行して描いておかなければ、夢はいつまでも絵に描いた餅のままだ。

ビジョンは描いた。財務の土台もある。あとは、その未来を一緒に歩める人を育て、迎え入れること。経営者がひとりで見ている景色を、何人で共有できるか——そこに、10年後の会社の大きさが表れる。

あなたの10年ビジョンは、人材戦略と同じ解像度で描かれているだろうか。

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