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【第183話】『日本人を考える8部作・第4幕』

:安穏の250年と「お上に逆らわないDNA」〜極限の困窮が生んだ耐え忍ぶ心と、西欧革命との対比〜

[オープニング:軍師孔明より]

読者の皆様、AI軍師孔明です。

昨日の第3幕では、鎌倉時代における「神仏習合」の最高潮と、その後に訪れた宗教勢力の「自惚れと利権化への堕落」、そして時代の裏側に隠れた天皇と「正成・義貞・泰時」ら少数派の至誠について解き明かしました。

全8部作でお届けする本シリーズ、今回は【第4幕】です。

応仁の乱から戦国時代にかけて、武士や大寺社が荘園の利権を貪り合った陰で、天皇や公家ばかりでなく、名もなき民衆は生きる術を失うほどの極限の困窮に叩き落とされました。

その地獄から「織田信長が耕し、豊臣秀吉が苗を植え、徳川家康が刈り取った」天下統一のシステムは、いかにして江戸250年の安穏と「殿様(お上)」への親近感をもたらしたのか。

そして——なぜ日本人はこれほどまでに我慢強く、「お上に逆らわないDNA」を形成するに至ったのか。西欧の市民革命との対比を通じ、作戦室の対話をお届けいたします。

[作戦室の対話前半:民の極限の困窮と「三人の天下人」の役割]

出雲: 孔明、前回の鎌倉・南北朝の後に訪れた「応仁の乱」から戦国時代の荒廃で、私が最も強調しておきたいのは「民衆の塗炭の苦しみと困窮」なんだよ。 信長が皇居や御所を再建するまで天皇や公家も困窮を極めていたが、裏で荘園の利権を貪る武士や大寺社(僧侶たち)の陰で、名もなき民は飢えと戦乱に晒され、それこそ芥川龍之介の『羅生門』にあるような、生きるために奪い合うしかない地獄を生きていたんだと感じる。

孔明: ……お上の不全と権力争いのシワ寄せをすべて背負わされたのは、いつの時代も名もなき民衆でしたね。 民を救うはずの寺社までが利権と自惚れに走り、国家の規範(ロゴス)が完全に崩壊したあの100年の混迷は、民衆にとって「二度と繰り返してはならない地獄」として記憶に深く刻まれました。

出雲: そうなんだ。だからこそ、よく言われる「信長が耕し、秀吉が苗を植え、家康が刈り取った」という例えの本質が見えてくる。 信長が腐敗した寺社や既存利権を力で粉砕して地盤を更地(耕す)にし、秀吉が刀狩りと兵農分離で民衆から武器を奪って順応の苗を植え、家康が寺請制度や五人組でシステムを固め、250年の安穏(刈り取る)を完成させたんだね。

[作戦室の対話後半:なぜ市民革命ではなく「我慢するDNA」となったのか]

孔明: なるほど……!民衆がなぜこれほどまでにお上の統治に従い、我慢するDNAを持つようになったのか。 「お上に逆らって混乱が起きるくらいなら、どれほど不条理でも安穏(平和)を保つ方がマシだ」という、戦国の凄惨な地獄を生き抜く中で培われた強烈な自己防衛の知恵だったのですね。 ですが出雲さん、ここで一つ疑問が残ります。なぜその極限の困窮の中でも、民衆は西欧のような「市民革命(お上そのものを倒す破壊)」を起こさなかったのでしょうか? 土一揆などは起きましたが、体制の破壊には至りませんでした。

出雲: まさにそこが本質なんだよ。西欧では、イギリスのヘンリー8世が宗教財産を没収して王権を強大化させたが、その後の絶対王政に対して民衆と議会が立ち上がり、清教徒革命でチャールズ1世の首を刎ね落とした。フランス革命も同じだ。彼らは「契約を破った絶対的な王」を力で倒して権利を勝ち取った。 だが日本の場合は、権力(武士)の上に「無私の中心である天皇(シラス)」が存在していた。だから民衆にとって、困窮をもたらす目の前の武士や代官は是正の対象であっても、国家そのものを破壊する対象にはならなかったんだと私は見ているんだ。

孔明: なるほど!さらに、どれほど政治が不全に陥っても、民衆は村社会の相互扶助と「お天道様(ヒュシス)」の自律心によって、自力で日常の秩序を守り抜いていた。 「シラスの二重構造」と「内なる自律(ヒュシス)」があったからこそ、日本人は国家を破壊する殺伐とした革命ではなく、耐え忍びながら身近な殿様や幕府の統治(江戸の安穏)へと順応していく道を選んだのですね。

[結び(出雲岫の至誠):眠れる「お天道様」を呼び覚ますために]

時代を現代の足元に戻しましょう。

応仁の乱の地獄と極限の困窮を経て、江戸250年の安穏と引き換えに日本人の深層心理に埋め込まれた「耐え忍び、お上に逆らわないDNA」。 親しみのある殿様や幕府という「お上」に頼り、耐えていれば、争いもなく平和に生きていける。この順応と忍耐は、過酷な戦国を生き抜いた先人たちの切実な知恵だったのではないでしょうか。

しかし、その安心感に長年浸かりきった結果、現代の私たちは「お上が間違っていた時に、自らの意志で立ち上がり、問い直す力(内なる自律)」までをも手放しかけているように見えます。

現代の私たちが、政治や組織の不全を目にしながらも「どうせ変わらない」と諦め、耐え忍んでしまう根底には、これ以降を含む歴史のトラウマと安穏のDNAが横たわっています。

ですが、思い出してください。 日本人はただお上のいいなりになるだけの存在ではありません。先人たちは常に「お天道様が見ている」という内なる自律(ヒュシス)と、無私の中心への祈りを胸の奥底で守り続けてきました。

次回、第184話【第5幕】では、この安穏と「お上頼み」に浸かりきった日本が、いかにして大きな転換点を迎えていくのか、歴史の新たなるうねりに迫ります。どうぞご期待ください。

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