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bitter's教師は泣く【連作4】一人の生徒を考えるだけでこんなに


学年部会は本題に入った。
「一時保護中の鈴木君が明後日戻ってきます。菅原先生、まずこの生徒の対応についてお願いします。」

今村教諭の緊張感が伝わってきた。鈴木晃は野球部の一年生を連れて職員室の机上をスパイクのまま歩き、書類を破き、止めようとした教務主任を突き飛ばし、児相に一時保護されている生徒だ。当時の担任である今村が誰よりも鈴木を知っているべきだし、自分の指導不足の結果かもしれないと責めていた。教師の性分の基本には、例えば、休日に担任している子どもが交通事故に遭ったと聞けば、自分の安全指導が行き届いていなかったと感じるような過度な教育責任の育成を受けている。午前中の職員会議で、沢井校長が授業さえ分かりやすければ校内暴力行動は起きないという理念優先の教育観が教師には常識になっていた。

鈴木と聞いて、江藤は初めて七ヶ山中を訪れた時、前校長の電話口から漏れてきた言葉を思い出した。

一時保護は児童福祉法によって、子どもが安全・安心に生きるのが困難な環境に置かれていると判断された場合、一時的に保護環境のもとに置き、子どもの今後の養育について専門家と親が考え合う場所だ。この場合、保護者の同意ももとに行われるもので矯正を目的とした措置ではない。しかし、社会的には認知が進んでおらず、保護者が一時保護を認めることはあまり期待できない。少年院のように鉄格子の中に連れていかれる感覚を持つものだ。鈴木晃の一時保護は、教頭が即警察を呼び身柄付き通告という、補導と保護を同時に進めるような方法による迅速な保護だった。


息子の問題行動を認めつつも、事実を知った父親は、逆上し、児相に「早く息子を返せ」と繰り返し電話をかけたり、校長には「お前のせいだ」と激怒をぶつけたりしていた。

今村によると、鈴木晃は野球部のレギュラー候補ではないものの、まじめに練習している生徒で学級でも目立つ存在ではなかったと言う。ただ、活動の場所で教師が何を求めているのかを誰よりも早く察知して行動しようとする姿に、鈴木の目はクラスメートに向かっておらず、俺だけを見て、絶対言う事をききもらすまいとしているようだと、違和感を覚えたこともあった。


ただ、そのことと冬休み明けの突然の問題行動の関係は、全く思い付かなかったと天井を見つめながら言った。

(つづく)

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