切れないラップ(食品用)
ワタシは食品用ラップに異様なこだわりがあり、
「クレラップ以外はラップではない。ただのビニールである」
という信条を掲げている。
なぜかというと、
それはクレラップ以外のラップが全然上手く切れないからである。
すぐに箱の切り口の方がぐにょんぐにょんになったりそもそも切れ味が悪かったりで、
ぐんにぃぃぃぃぃぃ、とラップを引っ張り、
ほぼ引きちぎるような格好で切り離す。
そしてその切れ味の悪さにワタシの方がブチギレて発狂しているのだが、クレラップにはそれがない。
ピリリリリッと小気味よくラップを裁断し、
ピッタァァァァァと皿を覆う。
気持ちが良い。ずっとラップしていたい。
そんな訳で、貧乏な我が家もラップだけは(私の懇願により)安物ではなくクレラップを使い続けている。
のだけれど。
少し前に法事があり、その持ち帰り品の中に、どこの馬の骨とも分からないラップが入っていた。
商品名を挙げようと思ったが、読者様の中にそれを使用しているご家庭があると気まず過ぎるので自重。
貰ったものは無下にもできず使う他なし。
ということで今それを使っているものの、
まぁーーーーー切れない。
あん?ゴムか?これは?と思うほどにグニる。
刃も金属ではなく厚紙製?で、ギザギザ部分が全く鋭利ではない。おにぎりせんべいを一列に並べた方がまだ切れるのではないかと思う。
それでも何とか一生懸命使おうとして、
皿に盛ったキャベツにラップをかけようとしたところ、
ぐんにぃぃぃぃぃぃ、ブチィッ(ラップが引きちぎれる音)
の衝撃で皿がぐわっと宙に浮き、ざく切りのキャベツ達がバサァッと床に散らばった。
これにはワタシも最高潮のブチギレで、一人キッチンで
「ホワアアァァーーーー!!!!フィイイイイーーー!!!!」
と叫んでいたところ、妻に「何キレてんの」と宥められる。
ワタシはキャベツを拾い集めながら、こんなクソラップは今すぐにでも捨ててしまい、即刻クレラップを買いに行くべきであることを主張する。
そうしなければワタシの血圧は極限まで上昇し、近いうちそれが破裂してこの世を去るであろうと熱弁したところ、買い替えの許諾を得た。
やったぜ!やはりクレラップだ!
こんな訳の分からないラップ?いやビニール?いやゴム?なんてのはさっさと廃棄するに限る!
と喜び勇んでそのラップをゴミ箱にぶち込むべく手に取った時、
ラップと目があった。
ふと思う。
もしワタシがラップだったとして、
まだ使えるにも関わらず捨てられてしまったとしたら、
そして捨てた人間が喜んで別のラップを買いに行ったとしたら。
そんな無念は無いだろう。と。
急に、酷い罪悪感が募ってきた。
ワタシと妻の会話も、このラップは聞いていたはず。
どんな気持ちで聞いていたのだろう。
ごめん。ごめんよ。
ワタシはラップを椅子に置き、そこよりも頭が低くなるように土下座した。
妻には「え、何してんの」と言われたので、「ラップに謝ってんねん」と返した。
「え、何してんの」と、再度言われた。
とにかくラップに誠心誠意の謝罪をし、丁重に棚に戻した。
申し訳ないことをした。もっとラップの気持ちになる必要があった。
反省したワタシは、引き続きこのラップと生活を共にしている。
次に買うのは絶対にクレラップだけど、
縁あって今ワタシの元にいるラップは、これはこれで使い切るのが礼儀だろう。
ラップは今日も変わらず全然切れない。
ワタシはそれにより今日もキレている。
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