見出し画像

何か面白い小説はないかい?     モームの <月と六ペンス>はどう? ふむ!

 サラリーマン時代に、経理部の同僚と社員食堂でランチしている
時のことです。その同僚は、その時私と同い年の26歳でした。
 早稲田大学の商学部を卒業して在学中に公認会計士の二次試験を
パスし、入社後も3年間三次試験の勉強を続け見事に公認会計士に
なったという努力家です。

彼が、
「何か面白い小説はないかね」と私に聞いてきました。
 彼がどのような意図で面白い小説と聞いてきたのか、
単に面白い大衆小説なのか、それとも純文学なのか、考えの底を
測りかねましたが、
「そうね」と言って、しばらく考えました。
 できれば彼のために純文学を勧めたいと思いました。
素晴らしい小説は山のようにあるけれど、彼が読んで
感動できる小説は、というと難しい、というのが私の
感想です。
 彼は学生時代から勉強勉強でほとんど文学には縁遠い
生活をしていたと思うからです。
 ふと、最近、まだ十代の文学部の女子大生と話しを
した際に、「愛読書は何ですか?」と尋ねたら
「モームの<月と六ペンス>」と答えたのを思い出して、
あの小説なら読み易いし面白いし、文学初心者の彼には
ぴったりだと考えました。それで、
「モームの<月と六ペンス>はどう?」とアドバイスすると、
「モームはごめんだよ、受験勉強の時、散々、読まされたから、
もう二度と読みたくないよ」というのが彼の答えでした。
「ふむ」と答えて私は黙ってしまいました。

 モームの小説はどれも読みやすく文学初心者にはぴったり
だと考えるし、あんなに面白いモームの小説をそんな風に
しかみられないなんて可哀そうなことだと心の中で思いました。
モームの<赤毛><雨><大佐の奥方><サナトリウム>と
いった読みだしたら止まらない短編小説や、長編小説では
<月と六ペンス>―――<世界の十大小説>のような評論も
実に面白く有益だったのを覚えています。

 しかし、彼が小説を読みたいと考えるようになったのは
とても素晴らしいことだと思って、他の読み易く面白い小説を、
食事をしながら一生懸命考えました。
  最初が肝心ですから、最初の小説が面白ければ小説の
世界にはまってくれる筈ですから。
 結局、その時はアドバイス出来ず、ランチは終わってしまいました。
 その後、どんな小説を勧めたか忘れました。

 この文章を書きながら、ふと考えました。
 <月と六ペンス>が駄目だとすると、今の私なら多分、
チェーホフの<犬を連れた奥さん>などの短編集、
長編小説なら、パールバックの<大地>を勧めようと思います。
両方とも読み易く名作だからです。
 もっとも今までに世界の名作をそれほど読んだわけでは
ありませんから、私の独断と偏見であることをお断りしておきます。
 しかし、振り返ってみると、文学書を夢中になって読んだのは
30歳位までで、それ以後の人生ではほとんど経済関係の本しか
読んでいない気がします。

文学書を読む意味って何なのかと改めて考えてしまいます。
 この点については私なりの考えがありますが、
その件はいつかの機会に書いてみたいと思います。
 今日は税務会計とは関係ない、私の経験をお話しました。
 私の拙い文章を最後までお読みいただきありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!