名前を変えて働くということ
こんにちは、れいです。
金曜の夜は、街の灯りがいつもより少しだけ明るく見えますよね。
今日は、「働くときの名前」について、わたしなりにずっと考えてきたことを書きますね。
はじめて名乗った夜のこと
もう数年前のこと、はじめて自分の「働くときの名前」を口に出した日を、いまでも覚えています。
家を出る前、鏡の前で何度も練習しました。
口に出すと、自分じゃない誰かが言ってるみたいで、ちょっと笑えてくる。
それなのに、お店に向かう電車の中では、その名前を頭の中でくり返している自分がいて。
お店についた最初の夜。
お客さまの前で、わたしは小さく息を吸って、
「はじめまして、○○です」
と言いました。
声が少し震えていたと思います。
でも相手は、当たり前のように、その名前で呼んでくれたんです。
そのことに、わたしのほうがびっくりして。
「あ、これでいいんだ」と、肩の力が抜けたのを覚えています。
慣れて、ちょっと迷った時期
しばらく働いていると、その名前のほうが自然になってくるんですよね。
お客さまに呼ばれて振り向く反射神経が、だんだん本物になってくる。
お店の更衣室で同僚に呼ばれるときも、その名前のほうがしっくりくる。
ある日、コンビニで偶然知り合いに会って、本名で呼ばれた夜がありました。
一瞬、「え?」となって、反応が遅れたんです。
帰り道、なんとも言えない違和感がありました。
わたし、どっちが本当の自分なんだろう。
家に帰っても、その問いがずっと頭から離れなくて。
電気をつけないままベッドに座って、しばらく窓の外を見ていました。
お店の名前で呼ばれている自分と、本名で呼ばれている自分。
どっちのほうが今、機嫌よく過ごせているんだろう。
たぶん答えが出るような問いじゃないのに、それでも考えずにいられない夜でした。
その時期、SNSも前みたいに楽しめなくなっていたのを覚えています。
本名のアカウントで投稿しようとしても、書きたいことが浮かばない。
かといって、働くときの名前のアカウントは作れない(作ったらきっと身バレする)。
どっちの自分でも、どこかに「ちゃんといる」と書けない感じ が、いちばんしんどかったかもしれません。
友達のひとこと
数日後、たまたまお茶していた古い友達に、ぽろっとそのことを話したんです。
深刻ぶらないように、笑い話っぽく。
そうしたら友達は、コーヒーをひと口飲んで、
「2つあったっていいんじゃない? 別に、どっちか選ばなきゃいけないわけじゃないし」
って、なんでもないことみたいに言ってくれたんですよね。
そのときの、お店のBGMと、テーブルの上の湯気と、友達の手元のマグカップの色まで、いまも覚えています。
なんで覚えているかというと、 その一言で、ふっと肩が軽くなった からだと思います。
「どっちかが嘘」じゃなくて、「どっちもわたし」。
そう思っていいんだと、初めて自分に許可が出せた気がしました。
いま思っていること
名前を変えて働くことを、ずっと「嘘をついている」みたいに感じていた時期がありました。
本当の自分を隠してお金をもらっている、っていう罪悪感が、どこかにあったんですよね。
でも今は、すこし違うふうに思っています。
あれはきっと、 本名の自分を、外の世界からそっと守るための装置 だったんですよね。
顔も名前も全部さらして接客するのって、心がもたない。
だから「もう一人」を立てて、その人に働いてもらう。
そうやって本名の自分を奥のほうにしまっておいたから、わたしは何年も働いてこられたんだなと、いまならわかります。
それに気づいてから、働くときの名前の自分にも、本名の自分にも、前より優しくできるようになった気がします。
「お疲れさま」って、両方に言ってあげるようになりました。
この前、出勤前に駅のホームで電車を待っていたとき、ガラスに自分の姿がうっすら映ったんです。
仕事の衣装でもない、お客さまの前の顔でもない、ただの私服のわたし。
それを見て、なんとなく「あ、この子もちゃんといるんだな」と思いました。
そういう、なんでもない小さな瞬間に、両方の自分とちゃんと再会できる気がする。
最近そういう瞬間が、ほんの少しずつ増えてきた気がしています。
金曜の夜、街を歩いていると、いろんな名前で呼ばれている人とすれちがいます。
本名で呼ばれている人もいれば、別の名前で呼ばれている人もいる。
家での呼び方と、職場での呼び方が違う人もたくさんいる。
どっちが「本当」とかじゃないんですよね。
どっちもその人。 ぜんぶ、その人の一部。
今夜あなたは、どんな名前で呼ばれていますか。
そして、その名前のあなたを、ちゃんと労ってあげていますか。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
もしこの話があなたの何かに触れたら、スキかコメントで教えてもらえるとうれしいです。
あなたの今日が、すこしでも軽くなりますように。
れい
