7インチ盤専門店雑記989「Kisses On The Bottom」
ポール・マッカートニーが2012年にリリースしたジャズ・アルバム「Kisses On The Bottom」です。もう可能な限りアナログ盤で買うようになってからの盤ですから、しっかりアナログです。プレス枚数が少ないとかで、猛烈な高額盤となっておりますが、旅立つことになりました。こういうのは欲しいという方にお買い上げいただけるのがイチバンです。
このアルバム、ポール・マッカートニーがジャズをやるというちょいと色物的な企画盤かと思いきや、意外なほど中身が濃く、ヒットもしました。ダイアナ・クラールとジョン・ピザレリが中心となってベース・トラックは作られたようですが、多彩なゲストが参加しております。個人的には「マイ・ヴァレンタイン」というポールの自作曲が最も気になります。12曲中10曲がジャズ・スタンダード、それも結構渋いところできました。2曲が自作曲でそのうちの一つです。
この曲を強く意識したのは、ブラッド・メルドーのライヴを観に行ったときに演奏していたからなのですが、「そんなにいい曲なのか?」と思いまして、あらためて聴いたところ、やはり忘れられないメロディです。まあタイトルがタイトルですから、ファニーを抜く意味をのっけから考えますよね。気にはなる曲でした。さらにはエリック・クラプトンがギターを弾いている曲なんですよね。2曲で弾いているうちの1つです。
いろいろな意味で売れて当然なのかもしれません。…では何故アナログ盤をもう少し多めにプレスしといてくれませんでしたかね。2012年頃といえば、アナログ・レコードの生産工場がまだ再興に追いついてない状態で、既存のラインをフル稼働させているが…などと言い始めた頃です。新人はアナログを作らせてもらえないとか、一年待ちとか、なかなかに悲しい情報が飛び交っておりました。

ブラッド・メルドーは2016年リリースのアルバム「Blues And Ballads」でも「マイ・ヴァレンタイン」をカヴァーしておりまして、こちらも素晴らしいテイクです。ベースのラリー・グレナディアもドラムスのジェフ・バラードも大好きですからね。No.1ファースト・コールが3人集まったトリオの演奏クオリティが低いわけはないのですが、素晴らしいなどという言葉で足りるでしょうか。そもそも、2016年の時点で、この人がスタンダード集の中でこの曲をやるということは、「はい、これもスタンダード入り確定です」と言っているようなものですね。
ブラッド・メルドーは数多いるジャズ・ピアニストの中でもイチバン好きかもしれません。以前にARBANというウェブ・メディアで2023年の3曲を選ぶ企画に参加させていただいたときにも、べた褒めしておりますが、コロナ禍のシンドイ時期、内省的な部分も抽出しながら随分ブラッド・メルドーを聴いていたように思います。彼のピアノに随分救われましたねぇ…。
さて、ポール・マッカートニーの「Kisses On The Bottom」のアナログ盤、ヤフオクなどで価格チェックしても、笑えることになっております。さあどうしましょうかね。お世話になっている方ですから、お安くしておきますけどねぇ…。

