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konton57
悟君と豆腐第二弾
「その辺は当時は水道がなかったので、豆腐屋は豆腐を硬水の井戸水で造った。」
そういえば、悟君の家も井戸水だった。祖母の家は最初の頃は井戸水だったが、いつの間にか水道水に変わっていた。しかし、悟君の家は依然として井戸水だった。悟君の家の軒先にはポンプ式の井戸があり、そこの水を飲むのは格別にうまかった。少し鉄分を含んだ、夏の匂いのする硬水だった。
「井戸水の硬水で造った豆腐は、あの豆腐とこの豆腐との味が別になる。水道の水で造ったのは千篇一律の味である。」
「硬水の豆腐は固いけれども、田舎では豆腐を縄で縛る云う悪口を云うが、それほどのこともないけれど、たしかに固い。」
悟君の家の豆腐も硬かった。その硬さが評判を呼び、いとこのおじさんが隣の町からわざわざ食べに来るほどだった。毎週土曜日になると、祖母の家にやって来て、昼食に豆腐を食べて帰るのが習慣だった。そのため、昼飯前になると僕が悟君の家へ行き、その日出来たばかりの豆腐を買ってくるのが役目だった。
悟君の家では、豆腐はコンクリートの風呂のような水槽にできたばかりのものを入れ、しばらく冷ました後に引きあげてくれる。昼ごろにはちょうどよい冷たさになっていて、井戸水のため水槽の中に手を入れるとしびれるほどの硬水だった。その豆腐は外側が硬水で冷たく引き締まっている一方で、内側はまだほんのりと温かみが残っており、口に含むと豆の甘みがほのかに広がった。
ニガリのかすかな苦さと豆の甘さが混じり合い、「ロ福とは、この事だ」と実感した。
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