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【第20話】第2章 投資の格言に学ぶ「億」の細道|損切りは早く利は伸ばせ

第2章 投資の格言に学ぶ「億」の細道

投資の世界には、古くから多くの教訓が「格言」として伝えられてきました。これらの言葉は、単なる表面的な知識ではなく、多くの投資家が経験と失敗を重ねてきた中で生まれた、本質的な知恵の結晶です。
資産形成を目指す投資家にとって、これらの格言は投資のノウハウとして、そのいばらの道を照らし続けてくれるでしょう。
感情に流されがちな投資の局面で、投資家の心の拠り所となる、代表的な格言をいくつかご紹介します。


1.「損切りは早く、利は伸ばせ」

これは、感情に流されがちな投資家が規律を保ち、長期的に市場で生き残るために最も重要な原則の一つです。この格言は、損失と利益に対する人間の非合理的な心理への対処法を明確に示しています。

損切りは早く:損失の限定と資本の保全

投資において、損失は避けて通れません。しかし、その損失をコントロール可能な範囲に留めるのが「損切りは早く」の目的です。

  • プロスペクト理論の罠: 人は、含み損を抱えたとき、「損失回避性」という心理的な傾向により、損を確定させたくないと強く感じます。「いつか価格が戻る」という根拠のない希望的観測にすがりつき、小さな損を放置しがちです。

  • 損失の複利効果: 放置された小さな損失は、資産全体に対する割合として次第に大きくなります。例えば、資産の50%を失った場合、元の水準に戻すには100%の利益が必要になります。この「損失の複利効果」を避けるため、致命傷になる前に、あらかじめ決めたルール(たとえば、5%または10%の下落)で機械的に損失を確定し、資本の保全を最優先するのです。

  • 資金の再配分: 損切りによって資金を解放することは、機会費用の観点からも重要です。その資金を、将来有望な他の銘柄や、より良いタイミングでの再投資に振り分けることが可能になります。


利は伸ばせ:利益の最大化と市場の成長への追随

一方で、「利は伸ばせ」は、含み益が出たときに生じる「利食い千人力」という早期の利益確定への誘惑に抗い、成長の恩恵を最大限に享受することを促します。

  • 後悔の回避: 含み益が出ると、「せっかく出た利益が減るのは怖い」という後悔回避の心理が働き、多くの投資家はすぐに売却してしまいます。しかし、これは、成長株の持つ真のポテンシャルを早期に手放してしまう行為です。

  • トレンドへの追随: 実際に株価が大きく上昇している銘柄は、企業業績や市場環境の変化といった確かなトレンドに乗っている可能性が高いものです。焦って売るのではなく、市場の勢いに乗じて利益を伸ばすことで、大きな成功体験と複利的なリターンを得ることができます。


【第5話】でその概要に触れた「定量分散投資」については、いずれ詳解することになりますが、この投資手法には「損切りルール」は設定しますが、「利確ルール」は設けません。
利益確定の売りは、基本的に「各銘柄ごとに設定された評価額の上限を越えたら、超えた分だけ自動で売る」という定量分散のシステムに任せます。
これによれば、いわゆる「テンバガー」さえ可能です。

「テンバガー」はその銘柄を見つけることより、それを保有し続けることのほうがはるかに難しいものです。
定量分散のシステムは、株価が上がっても、その上昇分に応じて売り上がるだけですから、全部を売るというはありません。これによって、手元に残ったものが買値の10倍になっているということが起こり得るのです。
ただし、株価が10倍に到達する前に、9割が利確され、残りの1割がテンバガーを達成しているという状態になります。(銘柄ごとの時価評価額は一定)


「5%(10%)損切りルール」と規律ある投資

この格言の考え方は、後ほど「定量分散投資」とともに提唱する「5%(10%)損切りルール」に集約されます。
このルールは、「いつか戻る」という感情的な期待や、「もっと上がるはず」という過信を排し、あらかじめ設定した客観的な数値に基づいて行動するための規律を与えます。

苦境に立たされた司令官は、自分の艦隊が劣勢に立たされたとき、「このまま耐えれば、あるいは増援が間に合うだろう」という根拠なき希望的観測に囚われます。しかし、その甘い判断は、やがて戦線全体の崩壊、すなわち取り返しのつかない致命的な損害へと直結します。
損失が5%あるいは10%に達したその瞬間、それは戦術的な敗北の確定であり、感情的な逡巡は許されません。
損害が限定的であるうちに、速やかにその艦隊を戦線から離脱させる戦略的撤退を行うことで、残る戦力を失うことなく、来るべき主戦場での決戦に備えるのです。
司令官の任務は、艦隊の全滅を避けることで戦力を温存し、その後の戦略的勝利に導くことであり、そのためには一時の敗北を潔く認める叡智が求められます。

銀英伝的投資指南

規律ある投資とは

  • 感情の排除: 市場の変動に動じず、恐怖や欲望といった人間の本能的な感情が判断を曇らせるのを防ぎます。

  • 一貫性の確保: 損切りと利食いの基準が一貫しているため、投資行動にブレがなくなり、戦略の検証と改善が容易になります。

  • リスク管理の徹底: 投資における最も重要な要素であるリスク管理を体系化し、一回の失敗が致命傷になることを防ぎます。

この「損切りは早く、利は伸ばせ」の精神と、具体的な「5%(10%)損切りルール」の適用こそが、市場の波に打ち勝つ規律ある投資家への第一歩となるのです。

「戦場において、撤退の決断を遅らせる将に勝利の女神は微笑まない。」

一時の感情的な抵抗や、前のめりな楽観主義に流され、負の戦線をずるずると引き延ばすことは、全軍の瓦解に繋がります。損切りは「万力」という表現もあるように、規律と意志力を要する最も重要な戦略的行為です。

銀英伝的投資指南


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