息子の目が閉じた日、私は母を繰り返していると気づいた
「最低だな」
そう思いながらも、
私は止まりませんでした。
未来の不安を並べ立てて、
息子の今を削っていました。
守っているつもりでした。
あの目を見るまでは。
「最近、落ち着いたね」
そう言われるたびに、少しだけ胸がざわつきます。
穏やかになったのは、息子。
でも本当は違う。
穏やかになったのは、私の焦りでした。
その焦りで、私は長い間、息子を追い詰めていました。
そして、自分も。
その状態はずっと前から続いていました。
仕事から帰って、
山のような家事をこなして、
ワンオペで回して、
宿題を見て、
寝る前にはぐったり。
誰にも弱音を吐けない。
吐いたら、崩れてしまいそうだったから。
だから私は、ちゃんとやっているつもりでいました。
でも本当は、
「ちゃんとやれていない自分」を
息子に見せるのが怖かった。
息子が宿題でイライラすると、
私はそれ以上にイライラしました。
どうして?
あの子の態度が問題だったんじゃない。
私は頑張れる人でいなきゃいけない。
母なんだから。
ちゃんとしてるって思われなきゃ。
そうやって、ずっと自分を追い込んでいました。
最低な人間
母が家に来る日は、特にきつかった。
「勉強頑張らないとお母さんみたいになれないよ」
「お母さんは頑張り屋だから、あなたも似るわね」
息子に放たれた言葉は、
褒めているようで、
私を縛る言葉でした。
私はいい子なんかじゃない。
ずっと頑張り続けないと愛されないと思ってきただけ。
喉まで出かかった強い言葉を飲み込みながら、
「◯◯(息子)の人生なんだから、見守ってよ」とやんわり伝える。
母が帰ったあとの私は、ぐったりでした。
私はずっと、
頑張らないと価値がない子でした。
だから息子がだらけて見えると、怖くなった。
このままで大丈夫?
将来困るんじゃない?
でも本音は違いました。
この子が失敗したら、
私が失敗した母になる。
その恐怖でした。
最低だと思います。
でも、それが本音でした。

決定的だった瞬間
私は言ってしまいました。
「家のこと何もしてないくせに。怠けてる姿見るとイライラする」
息子は一瞬黙って、言いました。
「…じゃあ出てくね」
本当に、外に出ました。
追いかけて腕をつかんだとき、
息子が振り向きました。
息子の目を見たとき、
胸の奥が冷えました。
怒られているはずのあの子の目が、
どこか、静かに閉じていたからです。
反抗でも、涙でもない。
ただ、閉じる。
ああ、と思いました。
…これは、昔の私だ。
怒られないように。
失望されないように。
ちゃんとしている子でいられるように。
自分の本音を、奥にしまい込んだ目。
その目を、私はさせていた。
守っているつもりでした。
でも本当は、
「ちゃんと育てられない母」になるのが怖かった。
置いていかれるのが怖かった。
否定されるのが怖かった。
だから、
正しさで押さえつけた。
未来の不安で、今日を叱った。
そして怒ったあと、
ひとりで自分を罰した。
最低な母。
向いてない。
どうして優しくできないの。
でももし、
このまま気づかなかったら。
私はきっと、
「あなたのため」と言いながら、
息子の呼吸を少しずつ奪っていた。
そしていつか、
本音を言わない穏やかな子を
「育てやすい」と思ってしまったかもしれない。
それが一番、怖かった。
連鎖は、
大きな出来事で起きるのではありません。
日常の、
小さな「ちゃんとしなさい」の積み重ねでできていく。
私は、止まりたかった。
でも止まれなかった。
止まるには、
自分の奥にある恐怖を見るしかなかった。
「しんどい」
その一言を言うまで、
どれだけ時間がかかったか。
半年かけて、やっと気づきました。
怒りの奥にあったもの。
母を繰り返していた瞬間。
そして、
具体的にやめたこと。
もし今あなたが、
怒ったあとに胸が重いなら。
未来が不安で、今日を急がせているなら。
そしてどこかで、
「このままじゃ、何かを手渡してしまう気がする」
そう感じているなら。
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読まない方が楽かもしれません。
でも、読めば止まれます。
私は、止まりました。
連鎖は、怒りではなく、
恐怖でできていました。
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