醒ますお仕事 #せりふ三題噺
こちらは、はらとけいさんの企画に参加しています!
「グミが降ってきた!」
息子が興奮気味に私に告げたのはちょうど正午だった。私はソファから身を起こして窓の外を見やる。
息子の言う通り、小さな町の広場に赤、青、黄色様々な色のグミが空から降り注いでは、地面にバウンドして跳ねまわっている。まるで地平線まで埋め尽くしそうな大量のグミだ。
虹をスライスしたらこんな雨が降るだろうな、とぼんやりと思う。
「あれはパパがやったの!?」
キラキラとした目で息子が語りかけ、私はにっこりと笑い、首を振った。
同じ職場でも、あれは”子供ドリーム課”の仕事だ。
”子供に夢を”のコンセプトから、政府は抽選で選ばれた子供の夢を”何でも1つだけ”叶える政策をとっている。極端な少子化とはいえ、大胆な政策をとったものだ。
「パパじゃないのかあ…」
残念そうに窓の外を見る息子の頭をなでて、私は立ち上がった。妻に仕事に行く旨を告げる。
「あら?今日だったの?」
キッチンで食事を作っていた妻が意外そうにこちらに顔を向けた。
「うん。今回はグミの集中豪雨だ」
苦笑しながら、作業着を着こむ。その声を聞いて妻が料理の手を止め、私の前までやってきた。
「で、感想は?」
「…子供の夢が叶うんだ。こんなに素晴らしい事はないさ」
「よろしい!」
ポン、と私の肩を叩き、妻が自分の持ち場に戻る。
窓の外を再び見やる。未だ続くグミの雨の中を子供たちが傘を差しながら駆け回っている。本当に夢の中にいるみたいだ。
しかし、そんな素敵な夢も明日になれば干からび、やがて腐ってしまうだろう。それでは世界はやっていけない。
夢はやがて醒ましてあげなければならない。
我々”ドリーム回収課”の仕事は、子供たちの夢をきれいに片付け、日常に戻す仕事だ。
明日も現実を生きる人たちのために。
私は勢いよくドアを開けると、巨大清掃車のエンジンをかけるべく、ガレージに向かった。

