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一言口に出したら止まらなかった、あんなこと言うつもりじゃなかったのに

もう取り返しがつかない、と思った。

言ってしまって、しまったと、明らかに私は自分でわかる位狼狽した。
けれども、口に出したものは私のものではなかった。
口から出てしまった言葉は、それ自体が意志を持ち、人を傷つけたり、人を温めたりする。
私が生み出した言葉は、彼を傷つけたのかもしれない。
いや、実際のところはわからない。
彼は笑っていたし、それは弱々しく、明らかに傷ついているように感じた。それだって、私が感じているだけかもしれない。

私が口から出してしまった以上、その言葉の持ち主は私になるわけで、飼い主は私になるわけで、私が責任を取らなければならない。
当然、私の意思で、その言葉を発したのだから。
「それは、本当の意思ではないのです」と訴えたところで、私はそれを口に出してしまったのだ。
もう取り返しはつかない。
どんなに言葉を尽くしても、どんなに態度で示しても、その口に発した言葉と言うのは元に戻せないのだ。

こぼれたミルクはコップに帰らない。

その通り、私はその言葉を口に出し、彼を傷つけて、そしてのうのうと今後生きていくのだろうか。
あまり自信がなかった。
かといって、このまま消えてしまうなど、ありえないことであり、私が自ら命を立とうなど、そんな勇気も出ないのだ。
私は結局、弱く、わがままで身勝手で、だから人を傷つける。
私と関わる人は、みんなそうやって傷ついて、私から離れていくのだ。
すべては私が原因だなんて、知っていたよ。
もちろん自分の事は自分が1番知っているんだから。
私が発する言葉が様々な人、私と関わる多くの人を傷つけているって言うことをちゃんと理解している。

私はもう少し言葉に気をつけなければならない。
言葉に対して意識を持って、意識を高く言葉に対して持っていなければならないのだ。
そうすればきっと、そう意識することが私に許された唯一の、改善策なのかもしれない。
私は無力で、弱い存在なのだ。
それを言い訳に今まで、のうのうと生きてきたのだ。
理解した、それはすべて理解したのだ。

けれども、今日も月が綺麗で、私は歩いている。
歩いている私は駆け出す。
あの月に向かってただ意味もなく駆け出すのだ。
それが私に許された、唯一の。

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