時間って、たぶん心の機嫌で伸び縮みしてる。
楽しい時間って、
どうしてあんなに短いんだろう…
たとえば、
夜更かしして観ていたドラマを、
「もう1話だけ…」って言いながら
結局朝まで観てしまった日。
お気に入りのカフェで、
気づけば何時間もぼーっとしていた午後、
旅行先のホテルで、
“明日帰りたくないね”って呟いた瞬間とか。
そういう時間って、
まるで炭酸みたいに消える。
シュワっと光って、
一瞬だけ世界を軽くして、
気づいたらもう空っぽになってる。
なのに、
退屈な時間は、
どうしてあんなに長い。
仕事中、時計を見たら
体感では30分働いた気がして、
実際はまだ7分しか経ってなかった時とか。
荷物の再配達を待ってる時間とか。
「今日中にやらなきゃ」って言った作業に、
なかなか手をつけられないまま
時計だけ進んでいく夜とか━━
時間って、
秒針で動いてるんじゃなくて、
たぶん心の機嫌で伸び縮みしてる。
だから人生って、
「何年生きたか」じゃなくて、
“どれだけ心が動いたか”
で長さが変わるんだと思う。
子どもの頃の夏休みって、
永遠みたいに長かった。
朝のラジオ体操、
お昼のそうめん、
夕方のひぐらし。
一日がちゃんと一日あった。
毎日がちゃんと新しくて、
世界をまだ“初めて”で
見れてた頃だったから。
でも大人になると、
気づけばもう木曜日で、
「え、もう4月終わるの?」みたいなことを平気で言ってる。
毎日を雑に生きたいわけじゃないのに、
“慣れた日々”は、
気づくと早送りみたいに過ぎていく。
それなのに、
嫌な時間だけはやたら細かく覚えてる。
苦手な人に言われた一言とか、
うまく返せなかった会話とか、
夜中に急に思い出して、
布団の中で“うわあああ”ってなるやつ。
脳みそ、
なんでそこだけ高画質保存なの。
楽しかった記憶は、
手のひらからこぼれる砂みたいなのに。
でも最近、少しだけ思う。
楽しい時間が短いんじゃなくて、
“終わってほしくない”から
短く感じるのかもしれない。
好きな曲って、3分しかない。
なのに、
レジがひとつしか開いてないスーパーの列は、
時間まで並んでるみたいに進まない。
つまり時間って、
長さじゃなくて密度なんだと思う。
心が「ここにいたい」って感じてる時ほど、
時間は残酷なくらい速くなる。
逆に、
「早く終われ」って思ってる時間は、
ずっと居座る。
なんかそれって、
人生そのものみたいだ。
“まだ終わらないで”と思える瞬間を、
人はずっと探してる。
好きな人と並んで歩く帰り道とか、
気づいたら朝になってた通話とか、
何も特別じゃないのに、
妙に幸せだった夜とか。
ああいうのって、
後から思い返すと、
ちゃんと人生だったなって思う。
大きな成功とか、
キラキラした出来事じゃなくて。
コンビニのアイス半分こしたとか、
疲れすぎて無言で牛丼食べたとか、
そういうどうでもいい場面が、
なぜか心に残ってたりする。
たぶん人間って、
幸せの最中には鈍感なんだと思う。
あとから気づく。
「あれ、楽しかったな」って。
写真フォルダの端っこにある、
ブレた景色みたいに。
だから、
楽しい時間が短いのは、
少し寂しいけど、
悪いことばかりじゃないのかもしれない。
もし永遠に続いたら、
きっと“特別”じゃなくなるから。
花火だって、
ずっと上がってたら感動しない。
一瞬だから、
みんな空を見る。
終わるから、
愛おしい。
そう思うと、
退屈な時間にも意味があるのかもしれない。
長くて、重くて、
なかなか終わらない日々があるから、
たまに訪れる“救われる時間”が、
ちゃんと光る。
ずっと幸せだと、
幸せって気づけない。
だから人生って、
ちょっと不便なくらいで出来てる。
でも本音を言うなら━━
楽しい時間、
もうちょっと長くしてほしい。
布団の中でうとうとしてる幸せな時間、
アラームなんかに連れて行かれずに、
ずっと漂っていたい。
旅行の最終日、
チェックアウト制度とか消えてほしい。
お気に入りのカフェで過ごす休日、
「そろそろ帰る?」じゃなくて、
気づいたら季節変わっててほしい。
でも、
そんな非対称さの中で、
私たちは今日も、
“少しでも好きな時間を増やそう”
として生きてる。
帰り道にコンビニスイーツ買ったり。
次の休みのためだけに、
欲しかった服をカートに入れたり。
夜中に、
お気に入りの動画をだらだら観たり。
その小さな抵抗が、
案外、生きるってことなのかもしれない。
人生はたぶん、
楽しい時間だけではできていない。
でも、
退屈な時間だけでもできていない。
その間にある、
名前のつかない瞬間たちで、
なんとか今日を繋いでる。
そしてきっと、
あとになって思い出す。
「あの頃、意外と悪くなかったな」って。
たぶんその時には、
今のこの長すぎる夜も、
古い映画のワンシーンみたいに
少しだけ愛せる気がする。
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