メアリー・シェリーへと続く重要な補足

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メアリー・シェリーへと続く重要な補足

17世紀の先駆者から、ゴシック小説の黄金期、そしてメアリー・シェリーに直接的な影響を与えた思想的作家たちまでの系譜です。

1. 女流作家の黎明期からゴシック全盛期まで

まずは、プロの女性作家たちが道を切り開き、ゴシック小説というジャンルを確立させた時代の流れです。

17世紀末:プロ作家の誕生

  • アフロラ・ベーン (Aphra Behn, 1640-1689)

    • 作品: 『Oroonoko』(1688年)

    • 特徴: 奴隷制批判を含む植民地冒険譚。女性として初めて執筆で生計を立てた先駆者。

  • デラフィーヴ・マンリー (Delarivier Manley, 1663-1724)

    • 作品: 『The New Atalantis』(1709年)

    • 特徴: 政治風刺と宮廷スキャンダルの暴露。

18世紀中盤:風俗とロマンス

  • ジェーン・バーカー (Jane Barker, 1652-1732)

    • 作品: 『Exilius』(1715年)- カトリック貴族のロマンス。

  • フランセス・バーニー (Frances Burney, 1752-1840)

    • 作品: 『Evelina』(1778年)

    • 特徴: 社交界を舞台にした風刺的リアリズム。後のオースティンに多大な影響を与えました。

1770年代〜1790年代:ゴシック小説の熱狂

  • クララ・リーヴ (Clara Reeve, 1729-1807)

    • 作品: 『The Old English Baron』(1777年)- 古城の秘密と正義。

  • ソフィア・リー (Sophia Lee, 1750-1824)

    • 作品: 『The Recess』(1783-1785年)- 歴史とゴシックの融合。

  • アン・ラドクリフ (Ann Radcliffe, 1764-1823)

    • 作品: 『ユドルフの謎』(1794年)

    • 特徴: ゴシックの女王。 豊かな風景描写と「説明のつく超自然現象」で一世を風靡しました。


2. メアリー・シェリーへの直系:4人の重要作家

メアリー・シェリー(1797-1851)が『フランケンシュタイン』を執筆する直前、文学は単なる娯楽から「社会批判」と「リアリズム」へと進化していました。

① マリア・エッジワース:リアリズムと「声」の発見

  • 作品: 『ラックレント城』(1800年)

  • 深掘り:

    • 信頼できない語り手: 一族に仕える老従者の視点から主人の没落を語る、文学史上画期的な手法を採用。

    • 地域風俗の先駆: 舞台となるアイルランドの現実や方言をありのままに描き、スコットやオースティンにも道を示しました。

  • メアリーへの影響: 「特定の人物の歪んだ視点」による物語構成は、『フランケンシュタイン』の独白形式に繋がります。

② メアリ・ウルストンクラフト:地獄のような現実を告発する

  • 作品: 『女の権利の擁護』(1792年)、『マリア』(1798年)

  • 深掘り:

    • メアリー・シェリーの実母: 女性の知性と権利を求めた急進的思想家。

    • ゴシックの現実化: 小説『マリア』では、古城の地下牢ではなく「結婚制度や法という名の監禁」を描き、現実社会の恐怖を暴きました。

  • メアリーへの影響: 母の遺稿を読み耽ったメアリーは、「社会から拒絶される者の絶望」というテーマを怪物に託しました。

③ エリザベス・インチボールド:舞台仕込みの社会批判

  • 作品: 『Nature and Art』(1796年)

  • 深掘り:

    • 対比の妙: 「腐敗した文明社会で育った息子」と「純粋な自然の中で育った息子」を対比させ、教育の偽善を鋭く批判。

  • メアリーへの影響: 怪物が「自然のまま」生まれ、人間の「作為」によって拒絶され、独学で学ぶプロセスに強い影響を与えています。

④ ジェーン・オースティン:ゴシックの「脱構築」と日常の恐怖

  • 作品: 『高慢と偏見』(1813年)、『ノーサンガー・アビー』(1817年)

  • 深掘り:

    • 真の恐怖: 幽霊よりも「金銭欲や悪意ある噂」といった日常の悪意こそが人生を破壊することを示しました。

    • パロディ: ラドクリフ的な妄想を笑いに変え、ゴシックを一度解体しました。

  • メアリーへの影響: オースティンが幻想を現実に引き戻した直後、メアリーは「科学」というリアリズムを用いて、新たな時代のゴシックを再構築しました。


まとめ:メアリー・シェリーが統合したもの

1818年に『フランケンシュタイン』が登場したとき、それは突如現れた変異種ではありませんでした。

メアリー・シェリーの偉業

政治的・哲学的深み(母ウルストンクラフト、インチボールドより)物語構造の複雑さ(エッジワースより)幻想をリアリズムの地平に引き寄せる力(オースティンより)風景描写豊かな恐怖(ラドクリフより)

彼女は、先達の女性作家たちが積み上げてきた「社会への怒り」と「現実を見つめる眼」を、**「科学という巨大な稲妻」**で縫い合わせ、新たな怪物を誕生させたのです。





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