『おくびょう鳥が歌うほうへ』『PROJECT X』『good one』の鑑賞をした感想
上田映劇さん別館のトラゥム・ライゼさんで、映画3本の鑑賞をしました
今回はわりとネガティブな感想が多く、かつ映画の内容をオブラートに包まずに書いちゃってるとこが多々あるので、閲覧にはご注意下さいませ
おくびょう鳥が歌うほうへ

スコットランドの北方、オークニー諸島に位置する故郷に、10年ぶりに帰った女性ロナが、幼い頃の記憶を思い返し、苛まれたりしつつ、自身の来し方行く末を見つめ直す物語
ロナはアルコール依存症からの回復を目指す施設を退所したばかりであること、幼少期の頃から父親の双極性障害の症状のために不安な日々を過ごしていたこと、母親は新興宗教にのめり込み、ロナのアルコール依存を信教で励まして癒そうとしたなどの事情が少しずつ明かされ、場面の時系列が飛んだり巻き戻ったり、現在と過去が混じり合う風景もあり、過去の出来事や後悔を幾度も幾度もフラッシュバックしてしまう、心身が摩耗しているロナの視点に同化するかのような演出になっている
ロナはふたたび、アルコールにのめり込みそうになるけど、症状の悪化する父親、信教の集まりに誘う母親からも離れて、オークニー諸島の中でもより辺境の島に住まいを移し、そこで新たな仕事や研究テーマを見いだして、少しづつ、僅かながらの歩みで回復してゆくのだった……という結末
身近で双極性障害の人間を見たことがあるので、この映画における(言い方は悪いけど)“双極性障害あるある”がほんとにあるあるで、分かるなあと感じた
落ち込む期間は日がな一日寝ていて、自分で寝返りも打てないし食事も取れないけど、気分が上がりすぎるとめちゃくちゃ活動的になってあれやこれやと仕事を始めて大声でビジネス(というか金の)の話をするようになる
人の話をまったく聞かず、極端に猜疑心が強くなって攻撃的になり、身近な人間を罵倒しだす、そしてどちらもちゃんと投薬をするのが難しい
双極性障害の方を非難する意図はありませんが、あくまで自分が観測した身近な人間は、そうだった
そんなあるあるがリアルだったから、ロナの新たな住まいの工面とか研究テーマを得ることによって回復していく過程がどうもピンと来なかった
主として資金源が謎すぎて
ロンドンで修士課程を修了していたロナは働き口はなく、アルコール依存症の影響で友人も恋人も無くした状態で、更生施設に入っていたはずだった
とてもアルバイトなどやれてた様子はないけど、じゃあお母さんにお金出してもらってたのでは? と引っかかる(福祉支援の補助金とか奨学金があったのかも知れないけど)
立ち直れたロナは立派かも知れない、でも、農場の仕事を維持し、精神疾患持ちの配偶者を見捨てず、頼りにならないばかりかケアまで必要ないい年した子供の世話までしていたと思われる母親の方がよっぽどではないか
家族が救いにも生きる理由にもならないから、新興宗教のコミュニティに救いを求めてたんだろうにと、いたわしくなる
ロナは自分の面倒しかみてないし、何だったらずっと見れてなかったじゃんって冷めてしまう 厳しい言い方だが
ロナ役の女優さんの演技は見ごたえあるし、スコットランドの辺境諸島の風景と、ケルト風味の音楽はすごく良かったのですがね

PROJECT X

女性バディでケイパー韓国映画なんて、いいじゃないのよ!
と思って観たけどダメだった
お金を騙し取られた女性ふたりが取られたお金を取り返したと思ったら、相手の莫大な隠し資産を発見し、それを強奪して高飛びしようと思ったけど家族が殺されたので復讐じゃい! って流れの場当たり的犯罪ぶり
犯罪がメインに据えられているにも関わらず、計画性のある人や口の固い人がひとりも居なくて、うっかりミスと情報の漏洩で話が展開していく、犯罪偏差値の低すぎる話だった
いいシスターフッドが見れると思ったんだけどなあ……ナンバーワンホステスと腕の立つ白タクドライバーのバディものって顔して始まったのに、ツメが甘々な内容でガッカリだぜよ
あの強固なお顔立ちのボディガードさんが寝返って味方になってくれる展開とかでもいいのよ あんな死に方あんまりだわ

good one

繊細で、身につまされる話だった
親の機嫌を取るのがしんどかった経験のある人間には、悪寒のはしる心地のする映画だろうな
高校生の女の子が父親とその友人と一緒にキャンプに行って帰ってくる それだけの内容だけど、台詞のテキストによらない感情の情報がこれでもかと詰められている
賢く優しい思慮深い子が、我慢を強いられ続けた果てに、ついにキレるとどうなるのかってことを、丹念に見せてくれる作品
父親とその友人の世話をして、機嫌を取ることに追われてる娘と、機嫌をとってもらってる事を意識もせず、のびのびとやりたいように振る舞い続け、娘に何の気も遣わないばかりか、大人との楽しいキャンプ体験をさせてやってる、くらいの呑気さでいるいい年したおっさんふたりの対比が実に痛々しい
キャンプの旅の終盤で、娘が父親の友人にされたことは、父親は毅然と対処して怒らなければいけなかったし、それをしなければ娘からの信頼は永遠に無くすほどの事だったけど、しかしおっさんたちふたりは「そんなことくらいで怒るな」ってぞんざいに片付けてしまう
娘のした報復はごくささやかなことで、でもおっさんたちにとっては、ずっと優しかった娘が豹変したことが心底堪えたのだろうとよく分かる幕切れだった
もっとギタギタに叩きのめしてもいいのよ? おばちゃんがやってあげようか? ってしゃしゃり出たくなる
娘ちゃんはずっとキャンプなんか楽しくなかった、父親とその友人の楽しさを壊さないように気を遣い続けていた、その挙句に父親が先に寝ちゃった時に友人のおっさんが気持ち悪いことを言ってきて心底嫌だったことを訴えたのに、まともに取り合ってもらえなかった
「楽しい日にしたいんだ」って言い出した父親は、本当にダメだった 娘を自分たちの楽しさに犠牲にし続けたことを何も理解していない
(話はまったく違うけど)一昨年に観た映画の『グレース』のことも思い出した
生理中で体調が良くないのに、入浴やトイレもままならない場所へ連れて行かれるし、まともな寝床もないところとか
すべての父親がそうとは言わないけど、父親って娘の体調に全然気遣えないし、想像力もない、娘も父親にはひとつも期待しない、でも父親への気遣いもケアもやってしまう……って場面が共通している
母娘、母息子、の組み合わせだったら、まず発生し得ない状況だと思える
ポスター画像の、good one(いい子)を塗りつぶす白いマーカーの乱雑な筆跡に、心から共感する
決して嫌な幕切れでは無かった、けど鑑賞していて自分の嫌だった記憶を思い返し過ぎる、改めて怒りを忘れずにいられることが嬉しい、そんな映画だった




地元の上田千曲高等学校美術班さんの作品
昨年の作品と共に撮影

