これが大人の恋ってやつなのか?捻くれものにオススメBLCD「ポルノグラファー」「インディゴの気分」感想
今回は、丸木戸マキ先生原作の「ポルノグラファー」「インディゴの気分」の感想です。
え、興津さんが出てないじゃないかって? (*当方は声優の興津和幸さんのBLCD感想ばかり書いているアカウントです)
そうなんです。ここまで聞いた作品(「囀る鳥は羽ばたかない」「Life 線上の僕ら」)での新垣さんの演技に心打たれ、それからそもそも別なコンテンツで古川さんの声が好きだったこともあり、聞いてみました。作品も、当時ドラマ化に当たって都内の電車の広告で「ポルノグラファー」の宣伝がかなりやっていたので、あああの作品か、と記憶にあったのでした。
CDのブックレットに台本が少し載ってるのも素敵でした。そして、原作のどこか懐かしみを感じるタッチに心惹かれて読みました。なにせ私、ヤンバルクイナが発見された年生まれなんです…。先生はおいくつなのか存じ上げませんが、作品に香る何とも言えない大人っぽい雰囲気がとっても好きになりました!
ネタバレない感想。まず、新垣さんの演じる役どころが、もう、新垣さんにしかできない領域だと思います。「囀る鳥は羽ばたない」の矢代さんとは違うものの、厭世観がある憂いのある声が堪能できます。それにしても、ご本人は沖縄の太陽のイメージしかない明るいお方なのにどうしてこうも一筋縄ではいかない複雑で捻くれた人物の声がぴったりと表現できるのか、声優さん、すごい。新垣さん、すごいです。
それに対する古川さんの役も、とっても好青年な感じでした。古川さんはうるさく騒ぐキャラもイケメンもチャラ男も王様キャラもなんでもできる印象ですが、こういう不器用な感じも素敵です。
そして、作品の雰囲気が、文学的という感じです。私はBL小説は今は嗜まないのですが、絵のある文学、といった趣の、人間ドラマだなあと思いました。漫画という媒体を卑下するつもりはないのですが、出会って恋に落ちるまでがわりとすぐとか、とにかく体から始まるみたいなBLの恋愛がお好きな方よりも、ずっしりとしたストーリーを楽しみたい、エロが全てではない、という方にお勧めです。原作も読んだのですが、あまりにも手ごたえがありすぎて繰り返しすぐ聞く気になれず、かなり久しぶりに聞き返しました。
ネタバレありの感想。
大学生の久住晴彦さん(CV古川慎さん)が自転車でぶつかって右手を骨折させてしまったのが、官能小説作家の木島理生さん(CV新垣樽助さん)。お金がないと謝る久住さんに、木島さんが口述筆記を頼む、というストーリーです。官能小説を聞かせるというのが漫画とドラマCDでは表現が違うから面白いと思いました。漫画だと字体(ちょっと筆文字感ある)の違いでエロ小説感が表されていますが、CDだと逆に棒読み!新垣さんがフリートークでこんなに棒読みでいいのか、仕事してる気がしないと言っていたのも頷ける棒読みでした。でもその棒読みがセクシーに聞こえてくるのがマジックのようで…。木島さんからお借りした本で抜いてしまう久住さんのお気持ち、わかります…(笑)
そんなわけで口述筆記をしているうちについつい下半身が元気になってしまう久住さんに、口で抜こうかと揶揄う木島さん、やっぱり普通の人じゃないですね、貴方!!!
この後の、久住さんの妄想でエロく迫ってくる木島さんが素晴らしいです。新垣さんが口で致している演技、息の使い方とか漏れ方とかがすごい生っぽいんです。こういうのはどうやるもんなんでしょうね…?
二話の途中にある「先生はとてもいい感じの声の人だったということ」「静かだがよく通る澄んだ声だと思った」と語る古川慎さんのモノローグに「貴方もね!!!」と全力で突っ込みたい。そして同意しかない。
ある日口述筆記中に、木島さんの学生時代からの友人で今の官能小説の編集者である城戸さん(CV松田健一郎さん)が現れます。城戸さんは木島さんの聞き手が怪我をした右で手はないのに気が付いて言おうとすると、木島さんから口止めされます。
勢い、三人で飲むことになって買い出しに行った久住さんが、またしても生き生きとした妄想(仕事をネタに無理矢理抱こうとする編集者と、お仕事じゃなくお〇〇ぽをねだる作家)をしてくれるお蔭で、城戸さん×木島さんのいい感じのシーンが聞けます。この妄想が官能小説ベースなので、普段触れている爽やかBLでもシチュエーションCD風味でもない、なんか独特のテイストでした。まるで兄弟の持っているアダルトな何かを覗き見したときみたいな背徳感が漂います。
飲み過ぎで寝てしまった木島さんを二人でベッドに運び、うっすら覚めると「3〇かな」っていう木島さんが好きです。城戸さんが帰ったあと、一緒に寝ればと言われて久住さんも横になり、ついキスまでしちゃう。
その後、木島さんの骨折のギプスも取れ、口述筆記が終わりそうになってくるにつれ、二人の心境が変化していきます。久住さんは木島さんへの気持ちを募らせて行くのに、木島さんはそれを突き放すようにします。そして、ついに、今まで口述筆記していたのは実は既に出版された作品で、仕事というのは嘘だったことに久住さんが気がついてしまいます。
当然、意味のない行為をさせられていたことに久住さんは怒ります。でも、それと同時に自分が木島さんのことを好きになっていると告白すると、お詫びにと手で抜くことに。嫌がるけど結局されたあと、利き手は骨折した右手ではなく左手と言われて、騙されていたことにショックを受け、続きを拒んで久住さんは去ります。
会わなくなって半月、木島さんの様子が変だと城戸さんから連絡が来て話を聞くと、木島さんは仕事を干されていると嘘をついていて実はスランプで書けないことを苦しんでいたと聞きます。ついでに、実は城戸さんとの間にも過去になにかしら肉体関係的なものがあったことを察した久住さんは、城戸さんが持っていた合鍵をもらって会いにいきます。そこで、携帯に今までのお詫びと「死出の旅のように思われる地に赴く」というメールが来て慌てて家にいきます。
自殺かと騒いでいると、ひょっこり普通に木島さんが現れます。ただし、部屋はすっからかん、引っ越しのために荷物が全てなくなっています。実家に帰り農家を手伝うという木島さんに、久住さんが自分がヌける作品を書いてと頼まれると、ついつい作家の性で好きな性癖を考えながらどういうのがいいか考えてしまいます。そして、作品が書けない苦しみがこみ上げて辛さに涙する木島さんを抱きしめて「大丈夫」という久住さん。ここでの二人のやりとり、木島さんからのメールから、本当に切ないんです。
私が「ポルノグラファー」と「インディゴの気分」が好きなのがここです。こういう芸術家とか作家の苦しみみたいなものは、普通の人にはわからないものじゃないかなと思っていて、そうしたことに触れている作品が面白いなと思いました。作家ゆえに捻くれてしまった木島さんの苦しみをただの普通の大学生の久住さんが救いになっていく過程がすごく丁寧に感じて、そしてここでのやり取りから二人の身体を重ねていく表現が見事だなあと思いました。
なんとなくの予感はありましたが、やはり起きると木島さんはいません。
そこから月日が経ち、久住さんが就職活動をしているあたりで本屋に、木島さんの新刊が並んでいるのを見つけます。田舎に引っ込んでもスランプを乗り越え、久住さんの好きそうな話をちゃんと書き上げたラスト。二人の小説を読み合わせる声が重なって終わります。
漫画の書き下ろしのお話、二人がその後2年ぶりに再会するのも音声化されています。木島さんの声が好きだという久住さん!!!私も好きだよ!!!!!の気持ちで終わります。
漫画を他の漫画で例えるのが失礼に当たらなければいいのですが、このポルノグラファーの終わり方の美しさ、吉田秋生さんの「櫻の園」みたいな感じというか、儚くて切ない、なんとも言えない余韻があるなあと思いました…。昭和の頃の趣があるというか…、人間のそれぞれのぶつかり合いみたいなものが話に感じられて本当に大好きです。
フリートークでは、木島さんは小説家や口述筆記で使う言葉がいつもとは違う感じだったねとのこと。こんなに棒読みで読んだことないと思った新垣さん。棒読みは恥ずかしいらしい。聞いたことない隠語沢山。日本語の良さを感じる。
演じたキャラクターについて。最後の大丈夫というシーンが良かった古川さん。木島さんは孤独だったし寂しい人間だったから文章が書けたのかなと新垣さん。感情を押し殺すのと棒読みが近くなって難しかった。
古川さんの最後の締めの言葉が真剣で素晴らしかったので新垣さんが言う事なくなってた(笑)
「ポルノグラファー」最高すぎてすぐに「インディゴの気分」も買っちゃったんですよ!!!!
というわけで、「インディゴの気分」の感想も。
こちらは木島さんと城戸さんのお話です。
視点は城戸さんで、大学の恩師の葬儀で木島さんに遭遇するところから始まります。既に小説で有名な新人賞を取った木島さんと、小説家になるのを諦めて官能小説を出す出版社に編集で勤めている城戸さん。木島さんは自分の作品に色々注文をつけてくる出版社と喧嘩をして無職に近い状態。城戸さんは同棲していた彼女に追い出されて家がなく、木島さんの家に居候することになります。お金がない木島さんに官能小説を書かないかと進め、それと同時に会社からは余命が宣告されている大物官能小説作家の蒲生田郁夫さん(CV石野竜三さん)の遺作になるものを取ってこいと言われます。
「インディゴの気分」とは、木島さんが学生時代に賞を取った作品のタイトルで、文学や学問への道を否定されて反抗した木島さんの私小説的なものです。城戸さんは文学での道を諦めたきっかけである木島さんに、半ば復讐めいた気持ちで官能小説への道を勧めるのが面白いところです。ただし、父親と和解もせずに先な死なれてしまい、実は葬儀も一周忌も行けずにその代わりに大学の恩師の葬儀にでた木島さんへ、だんだん人間としての情みたいなものを感じ始めます。日々飲んだくれ、喧嘩をすれば近所の公園に逃げては一番安い菓子パンを食べる木島さん、本当に人として不器用で壊れてるけど、なんか嫌いになれません。
そうこうしているうちに城戸さんに蒲生田先生の作品を取ってきたら、官能小説ではなく実用書を扱う会社に紹介してくれるという話が舞い込みます。別れた彼女とは就職先の問題があったことからよりを戻すために必死で木島さんを説得して、蒲生田先生の弟子にしてもらうことで話を取り付けようとします。
ここで、蒲生田先生のいたずら心で木島さんに城戸さんのものをしゃぶれと言われてすると、なんと弟子採用になります。二人で帰る途中になんとなくホテルに入って致します。ここの心理の流れが漫画でもドキドキしますが、声で聴くと新垣さんの演技が色っぽくてすごいです。
弟子になった蒲生田先生の終活を手伝いながら、官能小説を書いていく木島さん。小説を小さな部屋で書きながら、夕方の感傷的な気分のうちに城戸さんを思いながら一人でしているシーンがあるのですが、そことオーバーラップして会社を変える話を進めようとする城戸さんのことが入ってきます。
木島さんの初めての官能小説ができたからとお祝いをして、久しぶりに二人で話しているうちに、蒲生田先生が倒れてしまいます。(二人きりでキスをしていくところの息遣いがしっとりしてドキドキしました!)
病院に入院して、日に日に弱っていく蒲生田先生の看病をしている間に木島さんの初めての作品の出版が決まり、そこで城戸さんの転職のことを知ります。木島さんは裏切られたと怒ってしまいます。
でも最終的に城戸さんは転職をやめます。
私はこの蒲生田先生の最期のあたりの描写がとても刺さりました。木島さんの負担を考えて苦労をさせたくないといったり、城戸さんに木島さんのことを頼んだり、城戸さんにやり残したことばかりだとお前のせいだと泣きながら言ったり。一人の人間の終わりをしっかりと描いてくれています。父親との関係が不全のまま別れてしまった木島さんの心がいつのまにか自分にも移ってしまって、その心の傷を蒲生田先生という存在が埋めてくれたような錯覚がしました。石野さんの蒲生田先生の苦しそうな演技が真に迫っていて、本当に素晴らしいです。
蒲生田先生の葬儀のあと、城戸さんは転職をやめたことを話します。そこで、木島さんが自分とは違うと言いながら、木島さんはいいやつだと言って「好きだよ」と言います。普通の会話の普通の感じで。ここも、普通の恋愛小説やBL漫画の甘い感じでもなんでもないトーンで言うんです。でも、孤独な木島さんにとって、そう言える人がこの時には他に誰もいないんだろうなと思うととっても染みるシーンです。そして、葬儀の遺影の前で(実は蒲生田先生の約束だったらしい)二人が身体を重ねます。
木島さんはそれから売れっ子官能小説家としてデビュー、仕事が忙しくなります。城戸さんも当たり前の結婚をして子どもも出来て幸せに。ただ、その城戸さんの家庭が出来たあたりから木島さんのスランプが始まります。
シーンが飛んで、「ポルノグラファー」のあとに久住さんと再会したあと、城戸さんと木島さんがバーで飲んでいるところになります。ようやく久住さんと幸せになれたような木島さんの顔が漫画では穏やかでとても素敵です。タクシーで帰る時に、寄りかかった木島さんに思わず初めてホテルに行ったあの日のようにキスをしそうになり、木島さんに「ごめん」と言われてハッとする城戸さん。木島さんは久住さんの待つ家に戻っていくのを見て、城戸さんは最後に、「胸のどこかにずっと 小さな炎が燻っているのだ あの頃あの日々に 燃やし尽くせなかったから 多分一生消えない」とモノローグを語ります。松田さんの寂寥感ある声…めちゃくちゃブンガクや!!!!
やはり、城戸さんにとって木島さんは憧れで一生手に入らないものであり続けるんだろうな…幸せな家庭、平凡な日々を送りながら、傍らで創作を突き詰めてボロボロになっても諦めないで生きていく木島さんを支えて行くんだろうな…と思う最高のラストでした。
おまけに「ポルノグラファー」の補遺として、単行本に収められている短編で久住さんと木島さんのその後が入っています。こちらの久住さんが久しぶりな感じと、時折現れる木島さんへの疑念の声がコミカルで思わず聞くと笑いが出てしまいます。ほろ苦な本編に対して、ここで木島さんの甘い声が聞けます。
フリートークは新垣さん、松田さん、石野さん、古川さんの豪華なキャスト陣でした。
松田さんは、いっぱい喋った感想。城戸さんの過去の姿が風呂入ってないと言う新垣さん。石野さんは優しいお声ですごいかっこいいです〜。蒲生田先生にシンパシーを感じたらしく、過去のどのような人生を送ったのかを想像していたらしい。その想像がすごいありそうで、さすが役者さんだなあと思いました。やっぱり役を解釈するのにはここまで掘り下げていくものなんだなと…。古川さん、久住さんは木島さんの過去を知らなくてモヤモヤしてるのを、自分は本作を見て事情を知っているので知らないフリでモヤモヤするのが楽しかったそう。石野さんが「モヤモヤは人生のスパイス」っていう名言が生まれる。新垣さんは、「物書きの性」みたいなものがハードに描かれていたとコメント。作り手とか創作する人の生みの苦しみを感じて演じられていたと感じた。新垣さんは最後のコメントをばっちり締めてくれました。1人ずつ喋って終わるのでもっと聞きたかった!!!
というわけで感想でした。CDとしても、漫画と合わせても重厚なお話だけどするする心に入ってくる作品です。ドラマになっているのも、やはりお話の骨格がしっかりしてるからなのかなと納得です。
ちなみに、こちらのシリーズはCD化はされていませんが「續・ポルノグラファー プレイバック」という続編の漫画も出ています。私はこちらも好きで、木島さんと久住さんのその後で、捻くれ者の木島さんがどうやってお付き合いをしていくことになるのか描かれています。ここに出てくるスナックのアケミさんが、私の好みのキャラです(木島さんの妹の元ヤンさんもめちゃくちゃ好き)
ぜひぜひ、まだお読みになってない方にはオススメです!
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!!
(丸木戸マキ先生の「目を閉じても光は見えるよ」も読んだら大好きだった、興津さんに受けを演じて欲しいなと思ったけどこの感じは斉藤壮馬さんな気もすると思って調べたら羽多野渉さん✕斉藤壮馬さんだった)(丸木戸先生作品で興津さんが受けの作品があったらマジで聞きたい)
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