#74 意外と知らない有給休暇5つの誤解
「働き方改革」という言葉が出てきて、ここ10年くらいで働く環境とか会社の雰囲気は随分変わったと思いますが、根強く誤解が残っているのが有給休暇。
有給休暇って会社の就業規則じゃなく法律で決まってるものなんですが、ちゃんと教わる機会はほとんどないんですよね。
僕自身も学生時代はバイトして、社会人になってっていう過程ではまったく教わることがなかったので、あの時ちゃんと知らなかったから有給を丸々放棄しちゃったなーという経験があります。
その後、僕はたまたま人事部という場所で仕事をするようになったので、あとから有給休暇について知ることができました。
厄介なのは、上司や経営陣でも正確に知らない人が多いということ。
どんな立場の人であっても、教わる機会が無いのは一緒なんですよね。
だから「お前は勤務態度悪いから有給は使わせない」なんて言ってる上司は、それが違法行為だということすら知らなかったりするから余計にタチが悪い。
そんなわけで今回は、元人事部の経験から、特に多い「有給休暇の誤解」を解いていけたらと思います。
誤解1:「自分は正社員じゃないから」有給なんて無い
これ、よく聞きますよね。
僕自身も、この理由で「自分には有給休暇はつかない」と思っている人にたくさん出会ってきましたが、これは誤解です。
有給休暇は「正社員だけの特権」じゃなく、契約社員・パート・アルバイト、どんな雇用形態であっても、一定の条件を満たせば働くすべての人に与えられるものです。
本当は「有給休暇が与えられること」を「付与される」と言い、「有給休暇を使うこと」は「有給休暇を取得する」という言い方をするんですけど、ここではわかりやすく「有給がつく」とか「有給を使う」「有給を消化する」っていう一般的な言い方で統一しますね。
🔹有給休暇がつく条件
条件は2つだけです。
6か月間、継続して働いていること
週1でも週5でもOK。
「6か月連続してそこで働いているかどうか」が重要です。その6か月の間、出勤率が80%以上あること
ざっくりいうと、欠勤しまくっていなければ大丈夫。
ちなみに遅刻や早退はノーカウントです。
この2つをクリアすれば雇用形態に関係なく有給休暇がつきます。
誤解2:「自分は短時間勤務だから」有給なんて無い
──という人もいますが、これも誤解です。
有給が発生するかどうかの線引きはあくまでさっきの2つの条件で、これを満たしていれば有給休暇は発生します。
※計算方法がかなりややこしく、表で見たほうがわかりやすいので、後述で早見表を貼っておきます。
🔹ただし、日数の計算がちょっと複雑
「週に何日、何時間働いているか」によって、有給休暇が何日つくかが変わります。
週5日働いている人、または週に30時間以上働いている、どっちかを満たしている人は「フルタイム」という扱い:有給休暇は10日つく
週4日勤務かつ週の労働時間が30時間未満:7日
以下、同様に週3日勤務 → 5日
週2日勤務 → 3日
週1日勤務 → 1日
つまり、短時間で週1日しか勤務していなくても、わずかながら有給がつきます。
🔹途中で勤務日数が変わったらどうなるの?
家庭の事情でシフトを減らしたとか、病気や怪我で2〜3ヶ月休んだ、みたいな場合もありますよね。
この場合は、年間勤務日数で計算します。
年間217日以上=週5と同じフルタイム:10日つく
年間169〜216日=週4と同じ:7日
という具合です。
🔹勤務年数が1年延びるごとに有給休暇の日数も増える
これがまたややこしいんですけど、勤続年数によっても有給休暇の日数が変わります。
週5(フルタイム)で働いている人の場合は…
入社6ヶ月:10日
1年6ヶ月:11日
2年6ヶ月:12日
3年6ヶ月:13…かと思いきや14日
4年6ヶ月:16日
5年6ヶ月:18日
6年6ヶ月:20日(MAX)
と、勤続年数が長くなるにつれて1度につく有給休暇が増えていき、上限は6年6ヶ月の20日間となっていて、同じペースで働いていれば7年6ヶ月以降はずっと20日の有給がつきます。
表で見た方がわかりやすいので、早見表を貼っておきます。

誤解3:うちの会社(上司)は有給取らせてくれない
「うちの上司、有給取らせてくれないんですよ」
「ウチの会社は忙しいから、休むのムリです」
これもよく聞く話ですよね。
本人の思い込みならただの誤解ですが、上司が言ってるとしたら法律的には完全にアウトです。
会社や上司はあなたが「有給休暇を使いたい」と言ってきたら原則的に断っちゃいけないんです。
有給休暇は「権利」なので原則、拒否できない
前提として、有給休暇は「会社にお願いして取らせてもらうもの」ではないんです。
労働基準法第39条で、労働者が自由に取得できる「権利」として定められているからです。
会社側に許されているのは、どうしてもその日に休まれるとヤバいという時に、会社側が「別の日にしてもらえないだろうか」とお願いできる「時季変更権」だけです。
そうなんです。
本来お願いするのは有給使う側じゃなく、会社側(上司)なんですよ。
しかもこの時季変更権が使えるのは、「特定の人が休むと業務が回らない」みたいな一時的・例外的な状況に限られます。
つまり、常に人手不足とか、常に繁忙期みたいな状態は一時的でも例外的でもないので、実は時季変更権すら使えません。
こういう状況で上司から「忙しいから今はダメ」「人が足りない」という理由で拒否した場合、労基基準法違反になる可能性が高いんです。
じゃあなぜ上司は有給休暇を拒否してくるのか?
誤解を恐れずにいうなら、これは単純に上司が「無知」だからです。
有給休暇がどういうものなのかも、自分の権限でどうこうできるものではないということも、拒否することが違法であることも、よくわかってない。
上司だからといって、経営者だからといって、法律を正確に理解しているとは限りません。
本当はこんなことあっちゃならないんですけど。
零細企業とかだと、社長自ら従業員の有給休暇を拒否してるケースも珍しくないですからね。
僕が人事コンサルに入ってる会社では、経営層にこういう法律をどのくらい把握しているか必ずチェックするし、新しく役職者になった人たちにもルールを理解してもらうために、「管理職研修」を作る場合もあります。
権限を持ってる人たちが無知だと部下が不幸になるし、部下たちが無知な上司を指摘するってなかなかできませんからね。
ルール上は「上司が有給休暇を許可してくれない」ということはあっちゃならない、というか、それはどういう理由があれ法的にアウトなんですけど、実際の現場では業務上の調整が必要なので、上司に「この日に休んでも大丈夫ですか?」っていう相談はすることになると思います。
補足:会社側は「有給を取らせる義務」がある
ちょっと補足ですが、2019年の法改正で会社は「年に10日以上有給がある人には、最低5日は必ず有給休暇を使わせなければならない」というルールができました。
これは「努力義務」ではなく「法的義務」なので、守らなければ会社に罰則が科されます。
つまり今は、「有給のルールをわかってない」「有給を拒否しちゃう」ような管理職を放置しておくと、会社が行政指導を受けるリスクが有ると。
今はこんな時代になっているということも知っておいてもらえると良いと思います。
誤解4:こんな理由じゃ有給申請しにくいなぁ…
こんな声もよく耳にします。
有給休暇を使うためには、「出社できないくらいの体調不良」とか「日程変更できない冠婚葬祭」みたいな、誰から見ても「それは仕方ないね」っていうような理由が必要だと思ってる人もいます。
「私用」とか「リフレッシュ」みたいな理由じゃなんとなく弱い気がして、申請しないまま我慢してるケースも少なくありません。
もちろんこれも誤解で、有給休暇に妥当な理由は必要ないし、なんなら理由を説明する義務すらありません。
なので、「私用のため」とか「家庭の都合」みたいな、フワッとした理由で十分だし、証明書を出す必要もありません。
有給休暇は「理由を問わず自由に取れる休暇」とされていてるからです。
上司がしつこく理由を確認する行為は厚生労働省のガイドラインでは「不適切」とされているんですけど、ここはちょっとグレーゾーンなんですよね。
実際の現場では「業務の調整が必要だから確認する」というケースは普通にあって、これは法的にもセーフだからです。
たとえば、締切近くに有給を使おうとした場合
・理由が単なるリフレッシュ
→「申し訳ないけど納期が近いから日にち変えてもらってもいい?」っていう時季変更権を行使する
・「子どもの運動会」とか、「家族で旅行」とか、日にちを動かすのが難しいもの
→どうにか休めるように調整してみようか
という具合で、状況によって判断基準が変わりますよね。
一方で、有給を申請する側も中途半端な知識で「理由を答える必要はないはずです!」みたいに突っぱねちゃうと相手との関係や立場が悪くなってしまうのでご注意を。
お互いルールをわかったうえで(これが意外とハードルなんだけど)、ちゃんとコミュニケーション取って調整しましょう。
誤解5:退職時に残った有給は買い取ってもらえる
これもよく聞きますが、半分正解で半分間違いです。
まず法律上、会社側は有給を買い取る義務はありません。
というのも、有給休暇は「健康維持のために休ませること」が目的だから。
なので、実際に休ませるのが原則です。
じゃあなんでこんな説が囁かれるようになったかというと、その会社独自のルールで例外的に買い取るケースが実在しているからです。
本来は休むための制度ですが、有給休暇は給料が発生しますよね。
もし残った有給を放棄しなければならないとしたら、それは本来もらえるはずだった給料を放棄することになってしまう。
なので、義務ではないけど余った有給は会社が買い取る、つまり本来もらえるはずだった給料を払って精算しましょう、というルールにしている会社もあるということ。
これは会社独自のルールなので、会社によって異なります。
「制度はあるけど、知らない人は損をする」というのは有給に限らずよくある話です。
本当は会社側は有給のルールを従業員に周知する義務があるし、一人ひとりの残りの日数を管理簿にまとめて保存する義務もあるんですが、残念ながらそれを知らない管理職、経営者が多いというのが実情です。
本当は「法律なのに知らない」なんて状況はあってはならないとは思うんですけど、実務上それを徹底したり、取り締まったりするのはなかなか難しいので、結局自分で勉強しておきましょうということになっちゃうんですけど。
面倒くさいですけど、面倒くさいことを進んでやる見返りは確実にあります。
能動的に知識を付けて、人生の難易度を下げていきましょう。
ということでお送りしました、意外と知らない有給休暇の誤解。
なるべくわかりやすく話したつもりですが、それでもややこしいのが法律です。
音声とnoteでまとめたので、うまく使ってください。
そして、今回は特に多い誤解をピックアップしましたが、実際の現場ではもっと細かいいろんなケースがあると思います。
コメントなどで「この場合どうなの?」って聞いてもらえればわかる範囲で回答します。
聞いて損はなかったわ!と思ってくれたそこのあなた。
スタエフ・note・Threads・Xのフォローと高評価で応援してもらえると、とても励みになります。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
🔗この記事の音声は【こちら】
📝 このnoteについて
このnoteは、stand.fmで配信中の音声番組「ガクの聞いて損はない話」のテキスト版コンテンツです。
本noteでは、放送内容のまとめや補足に加えて、note限定の深堀りや裏話などを書いています。
気になるテーマがあれば、音声もあわせて聴いてみてください。
📝 番組の感想・お悩み相談・リクエストはぜひコチラから
▶ ThreadsのDM: https://www.threads.com/@gaku.0711
▶ stand.fm:https://stand.fm/channels/682c3f37cb60702ebd73d77c
▶ X:https://x.com/gaku_official_
🔗関連リンク集:lit.link/gaku0711
※stand.fmのレターはこちらから返信する機能がないため、配信内でお返事させていただきます!ご了承ください!
いいなと思ったら応援しよう!
ありがとうございます!
サポートいただけると更に多くの企業や人をサポートでき、皆さんにもより多くの情報を還元できます!