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2030年以降の再生繊維フェルトの役割――なぜ Rebornfiber® は必要か

2030年に向けて、日本でも本格的に「繊維 to 繊維」の国家プロジェクトが動き出しています。CFT2 のようなコンソーシアムが立ち上がり、東レや帝人フロンティアをはじめとする素材メーカー、NEDO・RITE などの公的機関が一体となって、廃棄衣料をもう一度糸や布に戻す水平方向のリサイクルに取り組み始めました。
政府のロードマップでも、繊維製品の資源循環は2050年カーボンニュートラルに向けた重要な柱と位置づけられ、「燃やして埋める」から「循環させる」へ、大きな転換が掲げられています。しかし、いくら国家プロジェクトとして「繊維 to 繊維」を推進しても、現実問題として、すべての廃棄衣料を「繊維 to 繊維」で処理することは不可能です。
その理由は以下のとおりです。

  • 素材の組成が複雑すぎること

  • 混紡・多層構造・加工(プリント・コーティング・起毛など)が多様であること

  • 汚れや破損が激しいものが多数含まれること

  • 化学・バイオリサイクルのコストやエネルギー負荷が、すべての衣類に適用できるほど低くはならないこと

この現実を直視すると、2030年以降の日本では、「繊維 to 繊維」と「再生繊維フェルト」という二つのルートを組み合わせた“ハイブリッド循環”こそが現実的な姿であることが見えてきます。


51万トンという山――すべてをハイエンドには戻せない

現在、日本で年間に廃棄される衣料品は、おおよそ79万トン規模と言われています。
その一部は古着として再利用(28万トン)されますが、相当量(51万トン)が焼却・埋立に回されているのが実情です。仮に「繊維 to 繊維」の技術が大きく進展し、選別・分別インフラが全国的に整備され、化学・バイオリサイクルの処理能力が飛躍的に高まったとしても――51万トンのほぼすべてを、再び衣料用繊維へと戻すことは現実的ではありません。
混紡比率が高く、付属品や異物が多く、汚れ・損傷も大きい衣料。処理コストやエネルギー負荷を考えれば、水平方向に戻すよりも、「繊維としてのボリューム」を活かしながら別用途に展開した方が、環境面でも経済面でも合理的なものは大量に存在します。
したがって、2030年以降の日本では、廃棄衣料のうち一定割合は「繊維 to 繊維」へ、残りのかなりの部分は再生繊維フェルトへ、という役割分担が避けられないと考えざるを得ません。少なく見積もっても、全体の半分以上、状況によっては 60〜70% 程度は、従来型・あるいは高度化された再生繊維フェルトのルートに頼らざるを得ない――そうした構図が2030年代の現実に近いのではないかとイメージしています。

Rebornfiber® の位置づけ――「受け皿」であり「出口」であり「材料」

このような未来の中で、Rebornfiber® をはじめとする再生繊維フェルトは、単なる“残り物の受け皿”ではありません。むしろ、サーキュラーエコノミーを支える「基盤インフラのひとつ」として位置づけられていくと考えます。
第一に、受け皿としての役割です。「繊維 to 繊維」の高度なリサイクルラインに乗せることが技術的・経済的に難しい衣料を、可能な限り繊維状態として救い上げる。そのための現実的な出口が再生繊維フェルトです。これは「それしか使い道がないから」ではなく、「最も無理なく、最も多くを救える経路」だからです。
第二に、出口としての役割です。Rebornfiber® は、ボードやシートへ加工され、吸音材・断熱材・下地材・内装材・家具・什器・雑貨などへ展開することができます。これは、アパレル用途に限定されない“広い出口”であり、在庫や流行に左右されにくい安定した用途でもあります。
第三に、材料としての役割です。2030年以降、建設・インテリア・音環境・防音・断熱といった分野で、環境配慮素材の需要は一層高まります。石膏ボードやロックウール・グラスウールに代わる素材として、再生繊維フェルトが存在感を増していく可能性は十分にあります。「廃棄衣料を素材にした建材」「循環型の内装材」という物語性もまた、大きな価値になります。
この三つの役割を合わせると、Rebornfiber® は 「繊維 to 繊維」が拾いきれない領域をしっかり受け止めながら、別の社会的価値へ変換する“変換装置”」 と言えるのではないでしょうか。

2030年以降の風景――二階建ての循環構造

2030年代の資源循環をイメージするとき、私は「二階建ての循環」という構造を思い浮かべています。
一階部分には、再生繊維フェルトがあります。ここは、量を受け止める基層です。素材的に複雑な衣料、汚れや破損の大きい衣料、多種多様な廃棄衣料を、まず繊維として回収・反毛し、厚みのある板材やシート材として、建築・内装・家具・雑貨へと変換する層です。
二階部分には、「繊維 to 繊維」があります。ここは、品質や用途の高さを追求する上層です。選別・分別の条件をクリアした衣料を、化学的・バイオ的・機械的な高度技術で再び糸・布へと戻し、再び衣料や高付加価値テキスタイルとして循環させる層です。
この二階建て構造が整ってはじめて、年間79万トン近い廃棄衣料全体を視野に入れた「日本型のサーキュラーエコノミー」が現実味を帯びてきます。
どちらか片方だけでは成立しません。技術的に高度な「繊維 to 繊維」だけでは量をさばききれないし、再生繊維フェルトだけでは“循環の物語”が平面的になってしまう。両者が役割分担し、ときに接続しながら全体を支える――まさに循環のエコシステムです。

Rebornfiber® に求められる進化――「ただのフェルト」から「循環の要」へ

その中で、Rebornfiber® 自身もまた、進化を求められます。
ひとつは 性能の進化 です。吸音性能・断熱性能・耐久性・加工性・安全性といった技術的指標において、石膏ボードやロックウール等の既存素材と十分に競合できるレベルを目指すことが重要です。「環境にいいけれど、性能は二流」ではなく、「環境にもよく、性能も優れている」素材であって初めて、本当の意味で選ばれるようになります。
もうひとつは、説明力の進化です。再生繊維フェルトが「なぜ必要なのか」「何を解決するのか」「どれだけの廃棄衣料を救っているのか」を、データとストーリーの両面から示すことが求められます。これは、LCA(ライフサイクルアセスメント)、CO₂削減量、廃棄削減量などの定量的な指標と、企業や自治体・ユーザーとの協働事例や実装のストーリーを組み合わせて見せていく作業です。
そして最後に重要なのは、ネットワークの進化 です。「繊維 to 繊維」のプレイヤー、自治体の回収スキーム、アパレル、建設・内装業界、デザイナー、教育機関などとの連携を深め、Rebornfiber® を「点」ではなく「面」として広げていくこと。このネットワーク構築こそが、2030年以降の再生繊維フェルトの価値を決めると言っても過言ではありません。

「すべてを救えない」からこそ、救えるものがある

国家事業として「繊維 to 繊維」が推進される時代に入るとき、「すべての衣料を『繊維 to 繊維』で」というスローガンは、ある種の理想として掲げられるかもしれません。
しかし、現実には、それは叶わない夢であると同時に、目指すべき方向を示す“北極星”でもあります。私たちが向き合うべき本当の問いは、「何パーセントを『繊維 to 繊維』にできるか」ではなく、「残りの何十パーセントをどう救うか」 ではないでしょうか。
Rebornfiber® をはじめとする再生繊維フェルトは、その問いに対する現実的かつ力強い答えのひとつです。
すべてをハイエンドに戻せないからこそ、別の形で価値を取り戻す。廃棄されるはずだった衣類を、静かに、しかし確実に新しい役割へとつなげていく。2030年以降の世界で、再生繊維フェルトは、「『繊維 to 繊維』の時代だからこそ必要とされる、もう一つの循環の柱」としてますます重要になっていくはずです。
その未来の中で、Rebornfiber® がどのように位置づけられ、どこまで進化できるか。それは、日本のサーキュラーエコノミーの成熟度を測る、一つのバロメーターになるのかもしれません。