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【読書感想文】あなたもこれを読めば、夏目漱石に親近感が湧くに違いありません

なんでもそうだと思うが、手に入るのが難しくなると、それまではなんてことなかったものが無性にほしくなったりするものだ。

私の場合、アメリカに来てから、和菓子が食べたくなって、レシピを見ながらわざわざ手作りしたり(日本にいた頃は断然洋菓子派だったのに)、日本の倍以上の値段を払って、こだわりの醤油を買ってみたり(日本にいた頃は醤油なんてなんでも良かったのに)。

そういう類の一つに、日本語での読書がある。まあ、電子書籍ならアメリカにいても日本語の本を手に入れることは難しくないのだが、普段の生活の中で日本語を使う時間が限られるので、その反動として、日本語にどっぷり漬かりたいという衝動がくるのだ。

そういうわけで、アメリカに来てから読書量が増えた。いろいろ読んでいたら、先日興味深い文章を見つけた。夏目漱石の短編エッセイである。本当に短くて、10分くらいあれば読める。

この短編は、夏目漱石が、作家という仕事について思うこと、書き手としての生活や書くときのこだわりなどについて語っている。文豪と呼ばれる大作家が、一書き手としての素顔を晒している。どんな形であれ、なにかを書いている人にとっては特に、興味を惹かれるところがあるのではないかと思う。

私が面白いと思った箇所を、以下にいくつか挙げてみる。

本を書いて売るということについて

一体書物を書いて売るという事は、私は出来るならしたくないと思う。売るとなると、多少慾が出て来て、評判を良くしたいとか、人気を取りたいとか云う考えが知ら知らずに出て来る。品性が、それから書物の品位が、幾らか卑しくなり勝ちである。理想的に云えば、自費で出版して、同好者に只で頒つと一番良いのだが、私は貧乏だからそれが出来ぬ。

へえ、一世を風靡した売れっ子作家だったのに、本を書いて売るということについてこんな風に思っていたのか。

私はnoteに自分の好きなことを書いているだけで、作家やライターのように書いたものを売るということはしていないが、言いたいことはわかる。「売る」という行為を、noteにおいて「スキ」や「フォロワー」の数を獲得することに置き換えてみればいい。「スキをたくさんもらいたい」とか「フォロワー数をがんがん増やしたい」いうことを目標にして書くと、本来自分が書きたかったことからずれて、気に入らなくなる。それよりも、私の場合は楽しくなくなる。

夏目漱石ほどの書き手でも、他者からの評価を得たいという抗いがたい欲をできる限り排除しながら、純粋に自分の中に生まれたストーリーに集中しようとしていたんだなあ。ちょっと親近感が湧いちゃう。

書くスピードについて

一回書くのに大抵三四時間もかかる。然し時に依ると、朝から夜までかかってそれでも一回の出来上がらぬ事もある。時間が十分にあると思うと、矢張長時間かかる。午前中きり時間が無いと思ってかかる時には、又其の切り詰めた時間で出来る。

ここで言っている「一回」とは、新聞の連載小説の一回分のことである。文字数を調べてみると、いまの原稿用紙に換算して4枚くらいだったようである。つまり、1600字ほど。それを3、4時間かけて書くというのは、決して速くない。まあ、調べ物をしたり、後々の展開を含めた構想を練ったりと、純粋に1600字を書く以上の行程も含まれているのかもしれないが。

だが、一方で、代表作の一つである『坊っちゃん』は2週間ほどで一気に書き上げたという話もある。1日あたりに換算すると、原稿用紙17~18枚ほど書いていた計算になるとか。連載小説とは書き方が違うのだろうか。よくわからない。

いずれにしても、凡人には到底追いつけない神がかりのスピードで書いていた、というわけでは必ずしもなさそうだ(少なくとも上記の引用部分を読む限りは)。それに、時間がたくさんあるときは、書くのにより時間がかかるという部分も、うんうんと頷きながら読んだ。ここでも、ちょっと文豪に親近感が湧いてしまったわたし。

書く場所について

障子に日影の射した処で書くのが一番いいが、此家ではそんな事が出来ぬから、時に日の当る縁側に机を持ち出して、頭から日光を浴びながら筆を取る事もある。(中略)こうして書くと、よく出来るようである。凡て明るい処がよい。

書く場所については、明るいかどうかがこだわりポイントだったようだ。この部分を読んだとき、「それ、私も同じ!」と興奮すら覚えてしまった。(まねっこしているわけではありません(笑)。)

いまは、子どもたちが寝静まった後のキッチンでパソコンに向かって書いているのだが、私もできたら夜ではなくて明るい昼間に書きたい。その方がうまく書けるかどうかはよくわからないけれど、気分がいいことは確か。気分がいい方が、書いていて楽しい。

書く上でのこだわりについて、文豪と共通点があったなんて嬉しい。勝手に喜んでいる。




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