息子の学校が始まった
アメリカでは、いまが入学シーズン。5歳の息子が初めて学校に上がり、先週からスクールバスに乗って毎日元気に登校している。
通う先は小学校だが、まだ1年生になる前の kindergarten 。幼稚園と訳されているのを見かけるけれど、小学0年生と言った方がわかりやすい。小学校のカリキュラムで授業がなされるが、1年生になる前の準備段階という位置付けだ。
登校初日のこと。
目覚まし時計が鳴って、のそのそと起きだした私は、まず息子を起こしにいった。私が声をかけると、息子はすぐにぱっと目を開いて、状況を確認し、
「今日は学校にいく日だよね。」
と言いながら、ベッドから下りてきた。息子は、昨晩から学校へ行くのを心待ちにしていたのだ。
着替えや朝の支度の手伝いは夫に任せ、私はお弁当の準備に取り掛かった。前日から息子にお願いされていたとおり、ふりかけごはんのおにぎりを握った。息子は、ふりかけ(特にのりたま)や昆布の佃煮などと白ご飯の組み合わせが何よりも好きである。
あとは、残り物のチキンを温めてケチャップを添え、家庭菜園で採れたプチトマトやプレッツェルを詰めて出来上がり。
お弁当に対する期待値が低いのは、アメリカで子育てをしていて有難く感じることの一つ。もちろん親の食意識によってお弁当の中身は違うものだが、一般的なアメリカの家庭では、子供の弁当といえばサンドイッチが主流だ。ピーナッツバターとジャム、ハムとチーズなど。それに、野菜や果物とか、チップスやプレッツェルみたいなパリパリしたものを一緒に詰めたりする。朝から卵焼きを作ったり、お肉を炒めたりしている親は本当に稀だと思う。
お弁当とは別に、おやつの時間が午前と午後に1回ずつあるとのことで、2回分のおやつも準備した。学校からは、キャンディやクッキーは避けて、なるべく健康的なおやつを、と通知があったので、一つはブルーベリー、もう一つはアメリカ版の「おっとっと」的なおやつを入れ物に詰めた。
荷物をバックパックに詰めて、スクールバスの停留地点まで歩いて向かった。家から子供の足で5分くらいのところ。この日は初日だったので、夫も含めて家族総出でお見送りに出た。
勇ましく前を歩いていく息子。私は、背後で娘の手を引きながら歩いていた。入学に合わせて準備した新しいバックパックが、息子の背中をすっぽり覆って、まるでバックパックから手足が生えているように見える。おかしいような、微笑ましいような気持ちで一人で少し笑った。
バスの停留所には、この近所にこんなに小学生がいたのかと驚くほど多くの子供たちがいて、わいわいと遊びながらバスを待っていた。今の家に引っ越してきて2年近くたつが、活動場所と時間が違うとなかなか会う機会がないものである。夫と私は、これから毎日顔を合わせることになる近所の親御さんたちと挨拶を交わしてまわった。
そうこうしているうちにバスが到着して、子供たちがざーっと塊りになってバスに向かって駆け出していった。息子はまだ勝手がわからず、周りの子供たちに圧倒されている様子だったので、さっと息子の手を握り、バスの乗り口まで一緒に歩いた。
「行ってらっしゃい。」
息子の目線までかがんで、ぎゅっとハグをしてから、バスの方へそっと息子の背中を押した。息子は周りの大きい子たちをきょろきょろと忙しく観察しながら、乗降口の数段を駆け上るようにしてバスに入っていった。そして、一番前の席を陣取り、窓から私や娘に向かって何度も手を振った。私も何度も手を振り返した。
バスが行ってしまうと、なんだか肩の力がすっと抜けたような気持ちになった。息子が初めて学校に上がる日は、きっと感情が込み上げて泣いてしまうんじゃないかと思っていたが、実際はそんな感傷に浸る暇がなく、慌ただしい朝だった。ちなみに、息子の学校は入学式がない。初日からいきなり日常が始まる。
そんなこんなで、泣かされずに済んだ(笑)。
これは後日談だが、ランチの時間に、息子のお弁当に入っていたおにぎりを見た担任の先生が、
「これは、SUSHI?」
と、息子に聞いたらしい。その日はおかかを混ぜ込んだ三角おにぎりだったのだが、この担任の先生のSUSHIの定義はさすがに広すぎるやろ、と笑った。息子は、「いや、これはおにぎりと言って・・」と説明したんだと楽しそうに話してくれた。
こんな小さな経験を積み重ねながら、半分日本人としてのアイデンティティが健やかに育っていくといいなと思った。息子のクラスには、様々な地域のバックグラウンドを持った子供たちがいる。私が子供の頃とは、比べ物にならないくらい多様で、国際的な環境である。
アメリカの学校は、私にとっても初めての体験。これからどんな学校生活になるのか、私も楽しみだ。
