なぜ、子どもたちは学校から消えるのか? 西アフリカの教室で、一人の日本人が見つけた「本当の国際協力」 地理総合160
なぜ、子どもたちは学校から消えるのか? 西アフリカの教室で、一人の日本人が見つけた「本当の国際協力」
「世界中の子どもたちが、学校に通えるように」
それは、国際社会が長年掲げてきた、大切な目標の一つです。
では、もし、その「学校に通える」という夢が、ようやく叶ったのに、子どもたちが、次々と学校を去っていくとしたら…?
その背景には、一体どんな、知られざる問題が隠されているのでしょうか。
今回は、日本のODA(政府開発援助)の一環である「青年海外協力隊」の一員として、西アフリカの国・ベナンに派遣された、高田裕行さんの体験を手がかりに、「教育支援」の、その先にある、もっと深く、もっと大切な課題について、一緒に考えていきたいと思います。
念願の「授業料タダ!」でも、教室は空っぽに…
高田さんが派遣された、ベナン共和国。
この国では、2007年、大きな教育改革が行われました。
これまで家庭の負担となっていた、小学校の授業料が「無償化」されたのです。
その結果は、目覚ましいものでした。
経済的な理由で学校に通えなかった子どもたちも含め、ほぼすべての子どもが、小学校に入学できるようになったのです。
夢への、大きな一歩。誰もがそう思いました。
しかし、現場では、新たな、そしてもっと根深い問題が、浮かび上がってきました。
それは、「せっかく入学した子どもたちの「中途退学者が、非常に多い」」という、厳しい現実でした。
なぜ、やっとの思いで通えるようになった学校を、子どもたちは辞めてしまうのでしょうか?
「勉強は、楽しい!」その“当たり前”を、どう作るか
その答えは、子どもたちの、そして親たちの、心の声の中にありました。
・「学校に行っても、授業がつまらない…」
・「勉強したって、どうせ将来の役には立たない…」
・「学校に行かせるより、家の仕事を手伝わせた方が、今日の暮らしの足しになる…」
貧しい暮らしの中では、学校に通うことの「価値」が、日々の労働の価値よりも、低く見積もられてしまうのです。
問題の根っこは、「学校に行けるか、行けないか」という制度の問題から、「学校が、子どもたちにとって、本当に行く価値のある、魅力的な場所になっているか」という、教育の「質」の問題へと、移っていたのです。
高田さんのミッションは、まさに、この課題に挑むことでした。
彼がベナンの子どもたちに教えたのは、算数と体育。
そして、その授業を通じて、彼が本当に伝えたかったこと。
それは、
「学校は、楽しい場所なんだ」
「勉強って、こんなに面白いんだ!」
という、学びの根源的な「喜び」でした。
教科書を読むだけの退屈な授業ではなく、ゲームを取り入れたり、身近なものを使って数え方を教えたり…。
子どもたちが「もっと知りたい!」「もっとやってみたい!」と、目を輝かせるような、授業や教材の工夫を、日々、凝らし続けました。
草の根の国際協力。「青年海外協力隊」という選択
高田さんが参加した「青年海外協力隊」。
これは、日本の政府開発援助(ODA)の中でも、非常にユニークなボランティア事業です。
医者や、看護師、教師、農業技術者、コンピューター技師…。
日本で培った、それぞれの専門的な「知識」や「技術」を持った、20歳から39歳までの若者たちが、アジアやアフリカ、中南米といった発展途上国へ、原則2年間派遣されます。
彼らの仕事は、大きなインフラを作ることではありません。
現地の言葉を学び、現地の人々と共に生活し、同じ目線で、彼らが抱える日々の課題の解決に、汗を流すこと。
まさに、顔の見える「草の根」の国際協力です。
高田さんのように、一人ひとりの子どもたちの心に火を灯そうとする地道な活動は、一見すると、とても小さな一歩に見えるかもしれません。
しかし、その一歩こそが、子どもたちの人生を変え、ひいては、その国の未来を創る、最も確実で、最も尊い力になるのではないでしょうか。
「楽しい!」という感動が、子どもたちを学校に繋ぎ止め、学ぶことの価値を教える。
そして、その学びが、いずれ貧困の連-鎖を断ち切る、大きな力になる。
国際協力の最前線にあるのは、必ずしも巨額のお金や、最新の技術だけではありません。
一人の人間が、別の一人の人間に、情熱と知識を手渡そうとする、その地道で、温かい営みなのです。
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