落とし物選手権|掌編小説 片想い文芸部
850字
落とし物を拾って拾って拾いまくる、熱き戦い、落とし物選手権。
好きな人と同じチームになれて、僕は気合い十分。今日活躍すれば、彼女の印象に残るどころか、恋人候補に躍り出る可能性だってある。
今回参加するのは、地元の環境保護団体が主催する「ビーチクリーンできれいになっちゃう会?」。浜辺のごみ拾いとエクササイズを組み合わせたイベントだ。
まずは選手宣誓。ランダムにあてられたチームのリーダーが宣誓文を読まされる。
「宣誓。われわれ選手一同は、うつくしい海に感謝し、正々堂々と異性の目を気にしながら競技に挑むことを誓います」
続いて、ウォーミングアップ。講師の指導のもと、気持ちよくストレッチ。
軍手とトング、麻袋を受け取り、競技スタート。1時間の制限時間内で、いかに効率よくごみを集められるかを競う。
たばこの吸い殻を落とした人には、怒りと感謝の両方を感じてしまう。ペットボトル100gが40pt.なのに対し、吸い殻100gは100pt.もあるためだ。
ごみはごみを呼ぶ。ま、いっか、の心理にならないように。
きれいにしておけば、この海に遊びにくる人が増えるはずだ。
万歩計をつけた人物が3千歩数以内だったチームには「だらだらポイント」が加算される。広く浅くではなく、狭く深く、の精神らしい。
集めた落とし物を分別し、計量。結果発表を待つあいだ、クールダウンエクササイズ。
やりきった高揚感を潮風がなだめてくれる。
「しんどかったけど、楽しかったね~」
中谷真実のさわやかな笑顔に、1日の苦労が報われた。
「てか、全然だらだらでも、ぐうたらでもないんだが?」
副部長・松下久美はちょっぴり不満顔。ぐうたら部は、ときに活動的なのである。
茜色に染まる空と海をながめながら、ごほうびのスイカバーを並んでかじる。
嗚呼、青春。なんかいいかも。
「ひらめいた! この状態でサイダーを飲めば……」と腰に手をあて、ペットボトルをあおる久美。
「スイカスカッシュ!」
よかったねえ、と久美をねぎらう真実嬢。
大らかすぎる……かわいいかよっ!
(おわり)

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