【イタリア20州ワイン巡礼 #18シチリア】——火山と海が育てた、イタリア最南の銘醸地
イタリア最大の州、
シチリア。
約25,700平方キロメートルという広大な面積を持ち、
ブドウ畑は島全体に広がる。
かつては「量産地」という印象もあった。
しかし近年、シチリアはイタリアを代表する銘醸地の一つとして数えられるまでに躍進した。
その理由は単純だ。
この島には、
他では代替できない地品種と、他では再現できない土地がある。
1|歴史が途切れなかった島
シチリアは、
ワイン造りが“何度も断絶した土地”ではない。
支配者は変わった。
文化は混ざった。
だがブドウは植えられ続けた。
■ ギリシャ時代
紀元前8世紀、ギリシャ人が東部に植民都市を築き、
ブドウ栽培と醸造文化を根付かせた。
エトナ周辺にも古代の痕跡が残る。
■ ローマ時代
ローマ帝国はシチリアを穀倉とし、
ワインは地中海へと輸出された。
■ アラブ支配
ワイン文化は一時的に衰退するが、
灌漑技術や乾燥地農法が進歩する。
これが後の甘口ワイン文化の基盤となる。
■ マルサラの成功
18世紀末、
Marsala DOCが英国市場で成功。
シチリアは再び国際市場へと繋がる。
■ 20世紀後半
大量生産とバルク輸出の時代。
「濃い南」というイメージが固定。
しかし1990年代以降、
品質革命が起きる。
COS、Planeta、Gulfi、Occhipintiなどが
評価を塗り替えていく。
2|シチリア唯一のD.O.C.G.
Cerasuolo di Vittoria D.O.C.G.
Cerasuolo di Vittoria DOCG
(昇格:2005年)
葡萄品種:
ネロ・ダーヴォラ50〜70%
フラッパート30〜50%
最低熟成:
Classicoは18ヶ月(うち8ヶ月以上樽)
地域:南東部
このワインは、シチリア唯一のD.O.C.G.である。
ネロ・ダーヴォラが骨格を担い、
フラッパートが香りと軽やかさを与える。
単一品種では想像できないバランス。
鮮やかなルビー色。
サクランボ(Cerasuolo=チェリー色)、
ザクロ、花のニュアンス。
軽快さと奥行きが共存する。
エトナほどの話題性はないかもしれない。
だが、完成度は疑いようがない。
3|エトナ革命
Etna D.O.C.
Etna DOC
(設立:1968年)
赤・ロゼ
ネレッロ・マスカレーゼ80%以上
ネレッロ・カプッチョ最大20%
白
カリカンテ60%以上
カタラットなど最大40%
主なカテゴリー
Etna Rosso
Etna Rosso Riserva(48ヶ月熟成)
Etna Bianco
Etna Bianco Superiore(ミロ村限定、カリカンテ80%以上)
Etna Rosato
Etna Spumante(メトド・クラシコ)
エトナは1990年代まで低迷していた。
それを変えたのが、
醸造家サルヴォ・フォティ。
彼はBenantiなどで品質向上を実現し、
区画名(コントラーダ)の公式設定を推進。
ブルゴーニュのように
区画ごとの個性を表現するワインへと転換した。
ネレッロ・マスカレーゼ
明るい赤ベリー、ドライローズ、スパイス、火打石。
色はそれほど濃くない。
しかし緊張感があり、
ネッビオーロやピノ・ノワールを連想させると評されることも多い。
イタリアを代表する黒葡萄の一つと見なされている。
カリカンテ
塩味を感じさせるミネラル。
はっきりとした酸。
熟成すると蜂蜜のニュアンス。
Etna Biancoは
イタリア白ワインの中でも特筆すべき存在である。
4|その他の重要産地
Faro D.O.C.
地域:北東部メッシーナ周辺
葡萄品種:
ネレッロ・マスカレーゼ45〜60%
ネレッロ・カプッチョ15〜30%
ノチェーラ最大10%
海の影響を強く受ける丘陵地。
エトナと似た品種構成だが、
ブレンドが義務付けられる。
赤ベリー、ハーブ、バラ。
軽快さと塩味が特徴。
Menfi D.O.C.
地域:南西部
在来品種と国際品種が共存。
Planetaの成功をきっかけに
品質重視へと転換。
温暖で乾燥した気候。
熟度が高く、塩味を帯びるスタイル。
Pantelleria D.O.C.
ジビッボ(モスカート・ダレッサンドリア)から造られる
Passito di Pantelleriaは極甘口の名作。
干しブドウ由来の
アプリコット、レーズン、蜂蜜。
イタリア屈指のデザートワイン。
Terre Siciliane I.G.T.
島全域を網羅するIGT。
在来品種の高品質ワインも多数。
ネロ・ダーヴォラやカリカンテ単一の
優れたワインもここから生まれている。
結論|シチリアは“多面体”
エトナの緊張感。
ネロ・ダーヴォラの包容力。
Cerasuoloの芸術的ブレンド。
パンテレッリアの甘美。
シチリアは単純ではない。
古代から続く文化と、
現代の革新が同時に存在する。
だからこそ今、
シチリアはイタリアで最も刺激的な産地の一つなのである。
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