静かな決意
もう何年この土地に住んでるだろう。
30年がもうすぐというところか。
結婚して夫の実家の土地(近いが離れてはいる)に家を建てた。
家を建てる時のアレやコレやが蘇りそうになるが今はそれはお尻で踏みつけておく。
若い奥さんだった私は道を歩くと「どこの嫁さんや?」とよく聞かれた。
正直、「意味わかんない…」って思ったが夫の名前を出してみたがこれは不正解。
夫の父親の名前を出すのが正解だった。
「意味わかんない…」
私は誰かの所有物では無いし、知らない人はまず名乗ってから聞いてよと思った。
隣に住むおばさん(その頃からもうお婆さんに見えたが)は毎日家のリビングやら台所に面するおばさんちの犬走りを一日、多い時だと30往復くらいしていた。
「意味わかんない」
おばさんからの「お宅の庭に野犬が入ってたよ」って言葉にどう返してよいか分からずに「はあ、そうですか」って返したのもどうやら不正解。
子供を産み育てる中で私は更に不正解を重ねていく。
そして若くてまだ生真面目だった私は「きっと、私に落ち度があるのだろう」と自分を責めたり反省したりを繰り返していた。
誰も助けてはくれなかったし不正解を繰り返しながらも母となった私はガラスの鎧で強くなっていった。
その頃を思い出すと今でも苦しい。
今の私なら自分を抱きしめて、あんたは全く悪くない!って背中を撫でてあげられるけど。
そして私は子供達の寝静まった夜の9時過ぎからの飲酒を何よりの楽しみにするようになる。
あの頃「もう少し頑張れば楽になる。後、少し頑張ろう」って先にある楽園目指してその時の「今」を台無しにしていたような気がする。
嵐のような時が流れて、今、私には目標が出来た。
この地を出る。
いつかではなく。
65歳。
そんな遠い未来ではない。
だから力を蓄える。
日々を大切に過ごして自分を愛して周りも愛して。
逃げではなく、新しい土地に旅立つ。
そっと自分に誓う。
