野球変態の会<長嶋茂雄を偲ぶ>
野球を肴に
年に3回ほど、外で飲む機会がありまして。
昔仕事で出会った4つ年上の方と、定期的に飲み会を開いているのね。
きっかけは一緒に仕事をしていた当時、お互い好きな野球の話で盛り上がっていてさ。高校・大学・社会人・プロ・メジャー問わず、野球全般ね。
職場が違くなった今でも、野球界に何かあるとメールをし合ったり「そろそろ行きますか?」なんて飲みに行く仲でね。
その方、佐藤さん(仮名)と野球の話をする時は、試合の結果とか、誰が調子が良いとか、そういう話ってあんまりしないのね。
もうそういうのは、チェックして分かってる前提で、あえて2人の間で改めて議題には挙がらないの。
どちらかと言えば球界ゴシップやトレード、それに伴う各球団の監督と選手の人間関係とか、プレーそのもの以外の話が多くって。
それらを話す上で、俺たちの間で重要視されるのが、監督や選手・球団フロントに至るまでの「出身・経歴」なのよ。
どこの生まれでどこの高校野球部の出身とか、大学・社会人までの経歴を2人共異様に詳しいので(だから話が合って仲良くなった)そういう情報を交えて勝手に妄想するのが好きなの。
例えば、巨人に重信慎之介という外野手がいましてね。2015年のドラ2で入った俊足巧打の10年目。ただ、巨人にはこの手のタイプの選手が10年以上前からワラワラいて、正直どの選手もレギュラーに定着することなく、引退したりトレードに出されたりしているんですね。
それで、佐藤さんと飲んでいた時に
「何で重信はクビはともかく、トレードに出されないんだろう?」
って話になったのよ。年俸もずっと3,000万前後だし、どこかの球団が欲しがっても良い手頃な選手だから。
それで2人して「ドラ2だから扱いが慎重なのかも」とか「やっぱ捨てがたい何かが監督にとってあるのかな」なんて最初は真面目に考察していたんだけどね。
でも、そこで俺がハッと閃いちゃったの。
「いや佐藤さん、違うわ。重信って千葉の佐倉市の出身でしょ?で、高校は早稲田実業ですよ?ということは…」
佐藤さんもビクッとして
「長嶋の出身地、佐倉!そして王貞治と同じ早実か!
つまり重信は”ひとりON”ということだ!」
「そう、巨人としても簡単に放出できませんわね、さらに阿部と同じ”しんのすけ”だし」
言ってることはMMRキバヤシと変わらないんだけど、俺たちの結論はそれでOKなの。真実なんてどうでも良いの。
そんでまぁ飲みながら、こんなことばかり喋ってるんですけどね。
そんな不毛なやりとりをしている飲み会を、佐藤さんが
『野球変態の会』
と何時からか呼ぶようになって。今はすっかり定着して「変態の会そろそろ行きますか?」なんてメールが来る感じなんですよ。
巨星堕つ
年に3回のペースで会う内訳は、まず「ドラフト後」がマスト。ドラフト前に今年の注目選手をお互いメールで情報交換をしていたりするので、その選手がどこの球団にドラ〇位だった、とかの答え合わせをする。
経歴マニアとしてはこの時が出身地、出身高校など知識を仕入れたり考察したりと変態性が本領発揮されて、話していても一番楽しい。
後は特にいつ集まるかは決めていないんだけど、今年はキャンプインの2月1日に飲みに行って。自主トレやら新人選手の仕上がりやら、プロ野球選手の正月と言われるキャンプインの日に、話して飲むという会になってね。
そしてつい先日の土曜日に、今年としては2回目の会合がありましてね。
6月3日にお隠れになられた、長嶋茂雄氏を偲んで献杯をしましょうという事になって。
俺も佐藤さんも、長嶋さんの現役時代は知らないのよ。文化人としての長嶋さん、監督になってからのミスターしか知らないの。
この前のラジオ「東京ポッド許可局」でも、同世代のマキタスポーツさんやプチ鹿島さんが喋っていたけど、まさに同じ印象。
17時の予定で集合したら、2人共20分くらい早く集合場所に来ちゃっててね。いつも行くもつ焼き屋さんが17時開店だから、ちょっとそれまで喉を潤すのに立ち飲み屋で生ビール1杯づつ飲んで。移動してもつ焼き食べながら2時間。さらに移動して炉端焼きのお店で真ほっけをつついて2時間。
合計4時間ちょっと飲んだんだけどさ。
ビックリすることに、その4時間のうち98%が長嶋さんの話(残り2%は秋広とリチャードのトレード話)。
現役を知らなくても、ほぼ4時間話題が尽きないの。長嶋さんだけで。
やっぱり凄いよミスター長嶋茂雄は。
2人共、よくテレビで披露される長嶋さんの天然エピソードとか、そういうの正直言って嫌いでさ。チャーミングな一面だけど、何か笑いの対象にしたくないのよ。だから全部、真面目な長嶋論を語り合って。
それは本人はもちろん、地獄の伊東キャンプメンバーひとりひとりと長嶋さんであるとか、ライバル選手と長嶋さんであるとか。ミスターを中心に相関図を頭に描いたトークを展開してね。太陽である長嶋茂雄と、その周りに点在する〇〇という惑星、みたいな話。男の星座(梶原一騎)って感じ。
大谷翔平ですら、この日は長嶋太陽系の惑星の1つ。
いつもなら、最後は近くの「野球居酒屋」に寄って、他の野球好きのお客さんやマスターと、プロ野球談議に花を咲かせてお開きにするんだけどさ。
炉端焼きのお店を出て、その野球居酒屋の前を通った時に、ガラス越しに席が空いているか確認したら、2人分空いていたんだけど。
でも何か、2人の空気で「今日は偲ぶ会だし、たっぷり長嶋さんの話もしたし、今からワイワイやるのは…もういいかな」って感じになって、そのまま駅まで歩いて解散しましてね。
ちょっとセンチメンタルな気分と、野球好きとしてふさわしい飲み方をした、充実感に溢れた1日になりました。
野球の伝道師、長嶋茂雄さん。本当にありがとうございました。
<余談>
2人のこの日の話題で、唯一ちょっと怒ったのは
某巨人OBが長嶋宅へ連日弔問に行っている、という記事をお互い事前に読んでいて。
野球変態の会、公式見解として
「ご遺族が気を遣うし、色々な方が次々訪れて大変なんだから、いくら行きたくてもそこは自重しろ」と言わせて貰います。
(おわり)
