【ショートショート】増えすぎた人口(1,722文字)
オギャー、オギャー。
1人の女がたった今、母となり、地球上に1人、人口が増えた。
今や地球上には、人類が生まれた時からは想像できないほどの人間が生息している。
このまま雪だるま式に人口が増え続けたら、あちこちが人で溢れ、1日に十分な食事をとることもままならなくなるだろう。
この現状を重く見た各国の元首や重要人物が、会議をしていた。
A国の元首が発言した。
「わが国や他国の人口は、急激に増え続けています。もちろん死ぬ人もいますが、生まれる人に比べたらずっと少数。こんなことを言うのは不適切かと思いますが、太っている人や年老いて生産性のない人、たった1人でも地球に重い負担をかけるような人には、さっさと死んでいただきたい」
B国の元首が、深刻な声で返答する。
「しかし、人が死んだとなると墓が必要になります。墓は、個人が生きたという印のようなものであって、たくさんあっても何かの役に立つことはありません。死んで年数の経った人の墓は、場所を確保するために“墓じまい”という形で撤去してしまうことがあります。しかし、簡単にできることではないし、費用もかかります。本当は墓なんて作らず、海や森に散骨してしまうのがいい方法だと思いますが、成仏できないと考える人が多いのか、死ぬ前に墓の手続きや土地購入をする人は実に多い。政府が勝手に墓場を壊してしまうこともできないから、厄介なものです」
「一つ提案があります」
C国の元首が立ち上がった。
参加していた各国のリーダーや高官の視線が集まると、白熱した口調で話し始める。
「無作為に選んだ高齢者やその他の人を、他の星に送ってしまうというのはどうでしょうか。そうすれば、地球上の人口を調節することができます」
A国の元首が反論する。
「そんなことをしたら、人権侵害にならんかね?」
「それについては考えてあります。
宇宙旅行に無料で行けるという抽選券を、国を挙げて配布し、われわれが選んだ者たちを“運良く抽選に選ばれた”ように見せかければいいのです。
皆、喜んで他の星へ行ってくれるでしょう」
B国の元首の意見に、反対する者は出なかった。
食料を十分に積んで、星を開拓するのに必要な道具や材料を隠すようにして積んだ宇宙船は、手頃な星へと向けて出発した。
長い旅が終わり、新天地へ着陸すると、驚くべき光景が広がっていた。
宇宙人が、なんとか文明を築き、細々と暮らしていたのだ。
地球から送り出された搭乗者は引き返そうとしたが、宇宙船は自動運転に設定されていたため、戻る方法はわからない。
じっとしていても仕方ないので星に降り立つと、言語翻訳機を持った宇宙人が話しかけてきた。

「この星に何のために来たのですか? 定住するつもりなら、すぐお引き取り願います。われわれは宇宙旅行という形でこの星に送られたのですが、着いた時に気がつきました。ここに送られたのは、元から住んでいた星がパンクしてしまうほどに生物が増えたので、厄介払いするためにここに送られたのだと。この地も広くはありません。行き着いた理由が同じであれど、先に住んだのは、われわれです。元の場所へとお戻りください」
送られた人々は困った表情で言い返した。
「戻りたくても、宇宙船の操作がわからなくて戻れないのです」
その言葉は自動的に翻訳され、宇宙人の耳に届く。
「そうですか。幸いなことに、われわれは“地球”という惑星の存在を存じていて、そこでの人々の生活について研究していました。だから宇宙船の操作くらいなら問題ないと思います」
宇宙人は人々を宇宙船に乗せると、搭載されている機械をいじった。
「さあ、これで地球へ戻れますよ。無事に着いたら言ってください。“あなた方は、確認もなく他の星に何かを送らないで欲しい”と」
かくして人々が帰還すると、送った張本人たちはその知らせを聞いて驚いた。
何があったのかと聞くために、送り込んだ人に会うと、怒った様子でこう言った。
「よくも私たちを騙しましたね。着いた先にいた宇宙人に言われました。“確認もなく、他の星に何かを送らないで欲しい”と」
それを聞いた元首たちは驚くと同時に、困ってしまってこう考えた。
――人類最大の過ちは、繁栄し、繁殖しすぎてしまったことなのではないかと。
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