Diageology 元ディアジオ・ジャパン株式会社社員の回顧録66

回顧録66
 
皆様こんにちは、元ディアジオ・ジャパン社社員による回顧録の第66回目です。
 ディアジオ社としての業績を振り返る52回目になります。昔アイルランド研修旅行に行った時のこと、当然アイリッシュ・パブ(日本でいう居酒屋さんがアイリッシュな造りと考えてください)でギネスビールを飲んだわけですが、回顧録10のギネスの章でも書きましたが、大きなパブは大体トイレと倉庫が地下にありました。
 ギネスビール社が各店舗様で地上から地下の倉庫にギネスビールの50Lのアルミ樽を突き落とすかの如く配達するのですが、地下では空になったアルミ樽を新しい樽に取り換える作業をします。また週に1回ビール・サーバーのコイルの洗浄を行うのですが、地上のビール・カウンターと地下のアルミ樽とのチューブの距離が結構長いため、そのままチューブを外してチューブ内のビールを廃棄してしまいますと量も多くもったいないため、途中で洗浄の距離を短くするためのコネクターが取り付けてあります。このコネクターがビールの損失量を少なくし、洗浄もビール・サーバーの近いところで済むように所作できるようになっております。
 また通常のピルスナー・タイプの生ビールは炭酸ガスで樽内の液面に圧力を掛ければ済むのですが、ドラフトギネスの場合は炭酸ガスと窒素ガスの混合ガスで樽内の液面に圧力を掛けなければなりませんので、炭酸ガス・オンリーより費用が高くなってしまいます。そこでギネスビールを扱われるアイルランドの多くの飲食店さんは、大気中から窒素を取り込み、炭酸ガス・ボンベを取り付けるだけで炭酸ガスと窒素ガスの混合ガスを作ることができる装置を取り付けております。私は直接見たことはないのですが、昔のギネスビールの資料の写真を見ましたところ、1m四方くらいの機器でしたでしょうか。そんなことまでしております、アイルランドではその位ギネスビールが出るのです。
 研修中ある飲食店様に伺いましたら、何とそこのお店さんでは自分たちのテーブルでドラフトギネスを注ぐことができ、しかもそのテーブルで飲んだミリ・リットル数分だけの料金を支払うという設備の付いたお店さんでした。自分たちでギネスビールをグラスに注ぎますと、そのタップの下についているメーターが動き出し、注ぐのを止めると止まる装置でした。カウンターでキャッシュ・オン・デリバリー(COD:料金先払いシステム)で購入するのが普通のスタイルですが、この様な企画もなかなか面白かったですね。ただでさえ生ビールを自分で注ぐ、という行為は何かうれしいですよね。今でもこのお店はまだあるのでしょうか、もう無いでしょうね。では何卒今後とも宜しくお願い申し上げます。

ディアジオ社としての出発54
419、160年の歴史を誇るインド工場を閉鎖へ
 2025年2月、ディアジオ社のインドの子会社であるユナイテッド・スピリッツ社は、テランガーナ州ハイデラバードにある160年の歴史を持つナチャラム工業開発地区にある製造施設を閉鎖する計画を明らかにしました。その理由は、市場動向の変化とインフラの老朽化でした。バンガロールに本社を置くユナイテッド・スピリッツ社は、ナチャラム工場が2023~2024年度の同社の営業収益の1.5%を占めたと発表しました。
 これは2023年初頭に取締役会で承認された複数年にわたるサプライチェーン・アジリティ・プログラムの一環であるとのことです。このプロセスの一環として、現在生産活動は停止していますが、設備や機械の定期メンテナンス、ユニット全体の清掃など、その他の重要な活動は、適用される規制要件を遵守して実施されています。さらに、同社は従業員の福利厚生に引き続き尽力し、この期間中も賃金を支給し続けることを強調しています。ユニットの将来に関するあらゆる決定は、法的義務を遵守し、従業員の最善の利益と福利を慎重に考慮しながら行われます。
 ユナイテッド・スピリッツ社は、ハイデラバードのマルカジギリにも拠点を構えているほか、ゴア州、マハラシュトラ州、バンガロール、ラジャスタン州、オリッサ州、西ベンガル州にも施設を保有しています。先月、ユナイテッド・スピリッツ社は経営陣の交代を行い、プラビン・ソメシュワールを新CEOに任命しました。
 2024年12月31日までの9ヶ月間で、ユナイテッド・スピリッツ社の売上は7.5%増加し、そのうち高級品セグメントは8.8%増加しました。一方ディアジオ社は先週、2024年下半期の有機売上が1%増加し、インドでの売上高が6%増加したと発表しました。高級品セグメントが牽引し、インド産外国酒類(IMFL)が力強い成長を見せたと指摘しました。インドにおけるウイスキーの売上成長は、マクダウエルズ、シグネチャー、ロイヤル・チャレンジが牽引し、スコッチウイスキーの売上はブラック&ホワイトが牽引しました。さらにディアジオ社は、約5年ぶりにアーンドラ・プラデーシュ州での事業を2024年9月後半に再開したと発表しました。これは、州政府が昨年、アルコール飲料の販売を民間小売業者に戻す新たな物品税政策を導入したことを受けての措置です。

420、ホワイト・ロータスと提携
 2025年2月、ディアジオ社の2つのブランド、ケテル・ワン・ウォッカとタンカレー・ジンが、HBOのテレビ番組「ホワイト・ロータス」とコラボレーションしました。両ブランドは同番組の公式パートナーであり、タイを舞台に2月16日に初放送予定の第3シーズンの放送開始を記念して、両ブランドがタッグを組んで特製カクテル「ホワイト・ロータス・ヴェスパー・マティーニ」と「ホワイト・ロータス・パンチ」を開発しました。さらに、このパートナーシップを後押しするため、ケテル・ワンのスピリッツ・アドバイザーであるパトリック・シュワルツェネッガーが、タイの島を背景にホワイト・ロータスのヴェスパー・マティーニのカクテルを作る短編映画に出演しました。

421、ブレットがボトルド・イン・ボンド・バーボンを発表
 2025年2月、ディアジオ社傘下のブレット・バーボンは、自社で製造した蒸留酒を披露する初のボトルド・イン・ボンド(Bottled-in-Bond)製品を発表しました。ブレットの新しいボトルド・イン・ボンド・バーボンは、ケンタッキー州シェルビービルの蒸留所がオープンしたのと同じ年、2017年春に蒸留されました。バーボンの熟成もここで行われました。ブレット・バーボンの特徴である高ライ麦マッシュビルとボトルド・イン・ボンド基準での7年間の熟成により、このバーボンは豊かさと複雑さをもたらします。
 ボトルド・イン・ボンドとラベル付けされるには、1897年のボトルド・イン・ボンド法に定められているように、蒸留酒は単一の蒸留所と蒸留シーズンで造られ、最低4年間熟成され、アルコール度数50%で瓶詰めされていなければなりません。この法律は当初、違法で不純物が混入したウイスキーと戦うために制定されましたが、現代では品質基準として採用され、一部のクラフト蒸留所では在庫が成熟しつつあることの証、または大規模な蒸留所では調達からの脱却を示す証として採用されています。このウイスキーの香りはスパイスとトーストしたオークの香りが感じられ、口に含むとメープル、ナツメグ、バタースコッチの風味が感じられます。価格は55ドルで、全国で販売されています。
 2024年2月、ブレット・バーボンは初のシングルモルト・ウイスキーを発売し、常設ラインナップに加えました。当時、アメリカン・シングルモルトの定義はまだなく、TTB(Alcohol and Tobacco Tax and Trade Bureau:アルコール・タバコ税貿易局)が正式なガイドラインを発行するのは2024年12月のことでした。

422、ジョニーウォーカー・ブラックラベルの甘味を表現したジョニーウォーカー・ブラックルビーを新発売
 2025年3月、キリンビール社は、ディアジオ社が所有する、世界No.1(IMPACT DATABANK 2023に基づく販売数量)スコッチウイスキー・ブランドのジョニーウォーカーから、ジョニーウォーカー・ブラックルビーを4月1日より全国で発売します。宝石のルビーを想起させる色合いとファッション・ショーのランウェイを彷彿させるシーンの中で、大胆に歩き続けるモデルとともにブラックルビーが登場します。またブラックルビーの甘さやフルーティーさのイメージとしてブラックベリー使用することで、心躍る夜のはじまりがブラックルビーともにはじまることを「甘く、鮮やかに、夜がはじまる。」のメッセージとともに表現しています。
 ジョニーウォーカー・ブラックルビーは、ジョニーウォーカーのマスターブレンダーを務めるエマ・ウォーカーが手掛けた新しい味です。ジョニーウォーカー・ブラックラベルで使用するモルトを厳選し、赤ワイン樽、シェリー樽、バーボン樽で熟成し、甘味やフルーティーさを引き出し、蜂蜜のような濃厚さを感じさせる味わいを実現しました。特に赤ワイン樽で熟成されたウイスキーが前例のないほど使用されているとされています。また、ディアジオ社の蒸留所のローズアイルのモルトも含まれています。この蒸留所は、2010年に創業したディアジオ社の最先端の蒸留所で、ブレンデッド・ウイスキーに使われる原酒の生産拠点でもあります。

423、メスカル・ブランドに投資
 2025年3月、ディアジオ社が出資するインキュベーター、プロングホーン社はニューヨークに拠点を置くDoce Mezcal社に投資し、メスカル市場への初進出を果たしました。Doce Mezcal社は、ガブリエラ・ローレンスとミア・トネッリ(Gabriela Lawrence and Mia Tonell)によって2022年に設立されました。両氏は、同ブランドを次の成長段階へと導き、市場シェアを拡大したいと考えています。Doce Mezcal社は、テキーラの同業であるアガベ・シロップへのプロングホーン社初の投資となります。アガベ・シロップは2028年まで年平均成長率(CAGR)11%で拡大すると予測されており、最も急成長しているスピリッツ・セグメントの一つとなっています。

424、ジョニーウォーカー、「ラグジュアリー・スコッチの新時代」へ
 2025年3月、ディアジオ社は、ジョニーウォーカー・ヴォールト(Johnnie Walker Vault)を発表しました。これは、文化的象徴とラグジュアリーな体験を融合させた、特注のコラボレーション・ブレンドを一つの「先見の明のある」旗印の下に展開する、新たなグローバル・ラグジュアリー・プラットフォームです。ラグジュアリー・スピリッツの新たな章を切り開くと言われるジョニーウォーカー・ヴォールトの世界的な展開は、同ブランドにとってこれまでで最も野心的なブレンディング技術の表現と言えるでしょう。
 この新しいプラットフォームの核となるのは、ジョニーウォーカーのマスターブレンダー、エマ・ウォーカーの芸術性、そしてエディンバラのジョニーウォーカー・プリンセスストリート店の地下深くに位置する、同ブランドの隠れたクリエイティブ・アトリエで厳選された極めて希少なウイスキーから、彼女ならではの物語を紡ぎ出す彼女の技です。ジョニーウォーカー・ヴォールトには、ブランドの希少な熟成樽やゴースト・カスクから厳選された500種類のウイスキーが常時保管されており、マスター・ブレンダーであるウォーカー自身が厳選し、ローテーションで提供することで、1,000万樽にも及ぶスコッチウイスキーの中から最高のウイスキーを厳選しています。
 ジョニーウォーカー・ヴォールトは、ラグジュアリー志向の消費者の進化するニーズへのコミットメント、そして高度なパーソナライゼーション、ユニークな体験、そして卓越した製品を通してラグジュアリー・スピリッツを進化させるという、私たちのコミットメントを反映しています。200年以上にわたる先駆的な職人技を基盤に、ジョニーウォーカーは現代の愛好家のために、高品質なウイスキー・ブレンディングを再定義しました。ジョニーウォーカー・ブルーラベルやジョニーウォーカー・ブラックラベルといった象徴的なブレンドは、スコッチウイスキーの限界を押し広げるというブランドのコミットメントを常に示してきました。ジョニーウォーカー・ヴォールトは、この伝統を引き継いでいきます。
 ジョニーウォーカー・ヴォールトは、特注ブレンディング、ラグジュアリーな体験、そしてクリエイティブなコラボレーションという3つの柱で構成されています。ウォーカーと彼女のチームは、30以上の蒸留所の樽を保有しており、これは現在スコットランドに眠る樽の総数の約半数に相当します。これらの樽には、50年以上熟成された樽、ポート・エレンとブローラのゴースト・ストック、予約制の高級蒸留所、そしてウイスキー界の象徴とも言える樽が含まれており、これらはかつての栄光へと細心の注意を払って再構築・修復されています。
 このヴォールトのオープンに伴い、ジョニーウォーカー限定のプライベート・ブレンディング・サービスも開始されます。これは、毎年スコットランドのエディンバラで、選ばれた少数のお客様をオーダーメイドの体験にご招待するものです。この体験の料金は5万ポンド(6万4,600米ドル)からで、お客様と一対一で行われるプライベート・ブレンディング体験が中心となります。ジョニーウォーカー・ヴォールトでの体験パッケージには、プライベートVIP旅行、パースシャーのグレン・イーグルス・ホテルでの宿泊、招待客限定のディアジオ・アーカイブのプライベート・ツアー、地元産の厳選メニューを楽しめるミシュランの星を獲得したレストラン、フランスのバカラ・ハウスの職人が手作りしたクリスタル・デキャンタで提供されるプライベート・ブレンド、そしてジョニーウォーカー・ヴォールト・アーカイブに記録されたプライベート・ブレンド・レシピ(希少な在庫状況により、将来的な委託も可能)が含まれます。
 ジョニーウォーカー・ヴォールトのオープンは、初めて文化リーダーを招き、ウォーカーとの共創、つまり芸術とウイスキーの職人技の融合という機会を提供します。2025年春、ジョニーウォーカー・ヴォールトは、世界的に有名な先見の明のあるクチュール・ファッション・アーティストとの初のコラボレーションを発表します。ジョニーウォーカー・ヴォールトに関する詳細情報、および特注のプライベート・ブレンディング体験へのお申し込みは、www.johnniewalker.com/en/vault でご覧いただけます。登録は3月12日から開始されます。

425、ディアジオ社の撤退でディスティル・ベンチャーズ社で雇用喪失
 2025年3月、ディアジオ社は、ディスティル・ベンチャーズ社のアクセラレーター・プログラムへの新規ブランドの参入を中止しました。これにより雇用が失われています。2013年に設立されたディスティル・ベンチャーズ社は、スタートアップ・ブランドの成長を支援するグローバルな飲料アクセラレーター会社です。ディアジオ社は設立当初から同社への出資に合意していました。ディアジオ社は長年にわたり、このパートナーシップを通じてベルサザール、ティップルスワース、キコリ、シードリップ、ミスター・ブラック、リチュアル・ゼロ・プルーフ(Belsazar, Tipplesworth, Kikori, Seedlip, Mr Black, and Ritual Zero Proof)の6つのブランドを買収してきました。
 このたび、ディスティル・ベンチャーズ社との10年以上にわたる提携により、新興スピリッツ・ブランドの育成と拡大に成功してきたことを受け、アーリー・ステージのベンチャー投資に対するアプローチを戦略的に見直すこととなりました。今後、ディアジオ社はディスティル・ベンチャーズ・プログラムに新たなブランドを参入させることはありません。また、小規模なディスティル・ベンチャーズ・チームは、既存の投資案件数を削減し、管理していくため、引き続き活動していきます。
 この動きは、ディアジオ社がCAGNY(Consumer Analysis Group of New York:ニューヨーク消費者分析グループ)カンファレンスで発表した戦略と一致しています。プレゼンテーションでは、持続可能な長期業績を達成するための4つの主要優先事項として、業績の最適化、持続可能な売上高成長の実現、営業レバレッジの向上、フリー・キャッシュ・フローの最大化を挙げています。2月、スミノフ・ウォッカやドン・フリオ・テキーラをポートフォリオに含むディアジオ社は、2025年度上半期の有機売上高が1%増加しました。当時、同グループは、今後の関税導入が年度後半の業績に影響を及ぼす可能性を指摘していました。ラテン・アメリカおよびカリブ海地域での落ち込みに加え、2024年にはカーサミーゴス・テキーラの売り上げが20%減少したため、ディアジオ社の2024年度の売上高は横ばいとなりました。(続く)


 さて第66回目の回想録でしたが、いかがでしたでしょうか。ディアジオ社としてスタートしての52回目でした。前書きで多くのアイリッシュ・パブのトイレは地下にある、と書きましたが、あるアイリッシュ・パブさんでは、小をするほうは昔の公園にあった、コンクリートの壁だけみたいなトイレが多かったように思います。そして日本でも見ますが、小の用を足すほうの便器には、あちらの国でも同様に、緑やピンク、黄色の消臭剤なのか洗浄剤なのか小さい球状のものがお小水の流れる下の部分に驚くほどびっしりと敷き詰められていました。日本ではトイレがそれほど大きくはないですが、せいぜい入っていても1個か2個ですよね。
 さすがにドラフトギネスの消費No.1の国だけあって、お小水の流れる総量も半端ない量だと思います。パブと言えばギネスビールですし、そのほかにハープ・ラガーもあればスミティックスもバドワイザーもカルスバーグもビール・タップがカウンターのところに並んでいますので、どれもこれも飲んでいましたらそりゃ出るものも出ますよね、ただでさえ利尿作用もありますし。
 調べてみましたら、トイレボールという名前だそうでして、薬剤のほか香料や洗浄剤も入っているそうでして、防臭や消臭の役目も果たすそうです。それにしても相当数のトイレボールが置かれていましたよ、大きいトイレでしたから100個近くはあったかと思います。汚い話のついでで恐縮ですが、ギネスビールをたっぷり飲みますと、翌日の大きいほうはいつもより黒くなるような気がします。こんな話で申し訳ありませんでした、今回限りにします。
 さて、このようによしなしごとを書き綴っていますが、これからもまだまだディアジオ社につきましての回顧録は続けていく所存でございますので、ご指摘等ございましたらどんどんお寄せいただきたいと思います。何卒今後とも宜しくお願い申し上げます。


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