Diageology 元ディアジオ・ジャパン株式会社社員の回顧録69
回顧録69
皆様こんにちは、元ディアジオ・ジャパン社社員による回顧録の第69回目です。
ディアジオ社としての業績を振り返る55回目になります。最初のディアジオ・ジャパン社の時のアイルランド研修でも当然ギネス・ストアハウスは訪問したのですが、その時は初めてでしたのでどんなところなのか見当もつかず事前知識も持たず伺いましたので、ただただ入ってコース通りに進んでいき、販売されたすべてのギネスビールの容器が飾ってあるコーナーで酒問屋時代に販売していたロンドンパブ・ギネスのボトルを探し、最上階のパブでギネスビールを飲みながら食事をしたくらいでした。最上階のレストラン・パブではメニューを写真に撮り、日本に帰ってからいろいろな飲食店様にこんな食事メニューでしたとコピーして配ったものです。確かギネス・アカデミーの注ぎ方講習はその時の研修旅行では受けなかったと思いました。前年に研修で行った同僚は受けたと言っていたはずです。確か終了証をたくさん持っていて、何枚かいただいたと思いました。
改めてギネス・ストアハウスについて申し上げますと、ギネスビールの工場の脇にある、ギネスビールの製造過程と歴史を疑似体験できる施設として作られた工場見学できる観光スポットでして、ものすごく広いお土産コーナーやレストランが併設されています。ギネスビール関係の会社やディアジオ関係の会社の名刺を見せますと、お土産の価格を割引してくれました。大概ダブリン観光をされる場合、コースの中にギネス・ストアハウスも入っています。横浜生麦のキリンビール社の工場見学に行かれたことのある方は、同じ感覚で楽しめると思います。
改めてキリン・ディアジオ社になってからスコットランド・アイルランド研修に行った際には、このギネス・アカデミーの研修も受けることになりました。今更ですが、先方の講師の方に一通り注ぎ方の講義を受け、実際に自分でも1パイント分注ぎ、注いだ分は自分で飲み干しました。その後係の方が名前を書いた修了書をいただいたわけですが、向こうでも流行っているのか、書かれた名前が「丸文字」の英語で書かれていて、何だかこんなところまで全世界共通なのかと変な感じに思った次第です。で、やはり無地の終了証をたくさんいただきました。日本でギネスビールを販売している営業マンと知っていたのかどうか、それともこの講習を受けた人たちがほかの人にもどんどん正式な注ぎ方を広めていって、終了証を渡してくれ、ということなのでしょうか、真意は分かりませんでしたがいただいて帰りましたね。日本では配りませんでしたし講習もできないこともありませんが、やはりアイルランドのダブリンのギネス・ストアハウスに行って受講してなんぼのものですよね。では何卒今後とも宜しくお願い申し上げます。
437、ポート・エレン、創業200周年を祝う
2025年5月、ディアジオ社傘下のアイラ島蒸留所ポート・エレンが、再開から1年を経て、創業200周年を記念する一連の取り組みを発表しました。アレクサンダー・カー・マッケイ(Alexander Kerr MacKay)は1825年、アイラ島南岸にポート・エレン蒸留所を設立しました。その後、ジョン・ラムゼイ(John Ramsay)の指揮の下、ブレンド用ウイスキーを生産する著名な蒸留所へと成長しました。長い沈黙と再開を繰り返す波乱万丈の歴史を持つポート・エレン蒸留所は、1983年に生産を停止しました。しかし40年間の沈黙を経て、再建されたポート・エレン蒸留所は2024年3月19日に開業しました。
創業200周年を記念し、蒸留所は新たなテイスティング体験やシングルモルト・スコッチウイスキーの近日発売など、一連の取り組みを発表しました。蒸留所はアトラス・オブ・スモーク(Atlas of Smoke)と題した新たなウイスキーの試飲も発表しました。これは、スコッチウイスキーにおけるスモークのニュアンスを探求することを目的としています。Atlas of Smokeプロジェクトでは、チームはスモークの風味に影響を与えるプロセスのあらゆる側面を詳細に調査します。これには、ピート濃度や蒸留カット・ポイントといった要素の検証も含まれます。
テン・パート・スピリット・セーフ(Ten Part Spirit Safe)は、2024年3月の蒸溜所再開に合わせて公開されました。一般的な蒸溜所のスピリット・セーフでは、スピリッツの蒸留中にヘッド、ハート、テールの3つのカットしかできませんが、ポート・エレンのテン・パート・スピリット・セーフは、ハートから複数のカットを抽出できます。ブランドは、これによりこれまで未開拓だった風味と特徴の実現が可能になると主張しています。
ポート・エレンの特徴であるスモーキーなスピリッツは、この蒸溜所のフェニックス・スチルで蒸溜されています。ポート・エレンの特徴であるスモークは、木の煙、薬草のエッセンス、塩分、そして焚き火の残り火など、幅広い風味を包含する香りです。実験を通して、ポート・エレンの真髄である複雑な特徴をより深く理解するため、ポート・エレンのチーム、技術専門家、そしてウイスキーの専門家との協力により、現在私たちが理解しているスモークの世界における風味の様々な側面を検証する実験的仮説が立てられました。
一方、実験用スチルは、蒸溜所のウイスキー製造研究のためのパイプラインを確立するために使用されます。今年の5月下旬に開催されるFèis Ìleフェスティバル期間中、ポート・エレンは、フレーバーを重視した蒸留所体験を限定数で提供します。また、来場者は実験の過程を直接体験し、Atlas of Smokeプロジェクトの初期成果を味わうことができます。ポート・エレンの体験チケットは、蒸留所のウェブサイトで購入できます。価格は40ポンド(53米ドル)から600ポンド(796米ドル)です。
438、FIFAと2026年ワールド・カップで提携
2025年5月、ディアジオ社は、来年開催されるFIFAワールド・カップの公式大会サポーターに選出されました。この提携により、ロンドンに本社を置く同社は、来年夏のFIFAワールド・カップにおいて、アクティベーション、現地での取り組み、小売キャンペーンなどを通じて、テキーラ・ブランドのカーサミーゴスとドン・フリオ、スコッチウイスキーのブキャナンとジョニーウォーカー、そしてスミノフ・ウォッカといった主要スピリッツ・ブランドを活用できるようになります。世界で最も視聴率の高いスポーツ・イベントでもあるこの国際サッカー・トーナメントは、2026年6月11日から7月19日まで、カナダ、メキシコ、アメリカ合衆国で開催され、16の開催都市で試合が行われます。
439、スティッツェル・ウェラー蒸留所、リザーブ・シリーズを発表
2025年6月、ディアジオ社傘下のスティッツェル・ウェラー蒸留所(Stitzel-Weller Distillery)は、新たな限定シリーズのスティッツェル・リザーブの第一弾を発表しました。この新シリーズは、24年熟成のケンタッキー・ストレート・バーボンをはじめとする、蒸留所限定のボトリングを取り扱っています。ケンタッキー州ルイビルにあるこの蒸留所は1935年に設立され、かつてWLウェラー、オールド・フィッツジェラルド、パピー・ヴァン・ウィンクル(WL Weller, Old Fitzgerald, and Pappy Van Winkle)といったバーボンを製造していたことから、アメリカンウイスキーの歴史に名を残しています。蒸留所は1992年に閉鎖され、これらのブランドは他の場所で製造されることとなりました。
スティッツェル・ウェラーは、ディアジオ社による修復を経て、2014年にブレット・フロンティア・ウイスキー・エクスペリエンスとして再オープンしました。現在、この蒸留所では、ブレード&ボウ、IWハーパー、オーファン・バレル(Blade & Bow, IW Harper, and Orphan Barrel)といったブランドを製造しています。
新しいスティッツェル・リザーブ・シリーズは、貴重なアーカイブ樽の熟成原酒を蒸留所の訪問者にお届けするプラットフォームとなります。スティッツェル・リザーブ24年は、ディアジオ社でアメリカンウイスキーの原酒開発・能力担当ディレクターを務めるニコール・オースティン(Nicole Austin)が構想し、スティッツェル・ウェラー蒸留所の90年の歴史に敬意を表する初のリリースとなります。スティッツェル・ウェラー蒸留所は、国内で最も優れた熟成樽を継承できたことを幸運に思います。スティッツェル・リザーブの発売は、当蒸留所にとって極めて重要な瞬間です。これは、過去への賛歌であると同時に、大胆な前進でもあります。この格別な24年熟成のケンタッキー・ストレート・バーボン・ウイスキーは、数十年にわたる綿密な管理の下で熟成され、ひび割れた革、鞍油、焦がし砂糖の豊かな香りを醸し出す独特の味わいを醸し出しています。スティッツェル・ウェラー蒸留所を象徴する職人技と献身的な姿勢を体現したウイスキーです。
1999年に貯蔵された9樽からオースティンが厳選した原酒を使用し、アルコール度数61.7%で191本限定で発売されます。750mlボトルの価格は、蒸留所にてお問い合わせください。最初のボトルは、2025年6月から21歳以上の消費者向けに蒸留所で販売されます。
440、ナオ・スピリッツ社を1,520万ドルで買収
2025年6月、ディアジオ社のインド子会社であるユナイテッド・スピリッツ社は、ゴア州に拠点を置くジン・メーカー、ナオ・スピリッツ社の過半数株式を13億ルピー(1,520万ドル)で買収しました。この動きは、ディアジオ社がジン・ブランドのグレーター・ザンとハプサを製造するナオ・スピリッツ社の株式22.5%を3億1,500万ルピー(410万米ドル)で取得してから3年以上経ってからのことです。同社はナオ・スピリッツ社の株式保有比率を30%から約97.07%に引き上げました。ディアジオ社は同ブランドの株式を100%取得する予定で、最終取引は保留中です。ナオ・スピリッツ社は、ユナイテッド・スピリッツ・リミテッド社(USL)としても知られるディアジオ・インディア社の子会社となりました。ディアジオ社は、ナオ・スピリッツ社がインドのクラフト・ジン分野でリーダー的存在になったと指摘しました。
ナオ・スピリッツ社は、2017年にアナンド・ヴィルマニによって設立されました。同社のグレーター・ザン・ジンは、インドおよび世界各地から採取された9種類のボタニカルを使用して作られており、ハプサ・ジンには、ヒマラヤ・ジュニパー、新鮮なターメリック、ゴンドラージ・ピール、生のマンゴーなどのボタニカルが使用されています。昨年、同社はジンにとどまらず、熟成スパイスド・ラムのピパ(Pipa)を発売しました。ディアジオ・インディア社の最高イノベーション責任者は、ラム酒がジンに続き次にブームとなるスピリッツになると考えています。
441、スミノフアイス、缶入りキャンペーン開始
2025年6月、世界展開25周年を記念し、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)ブランドのスミノフアイスは、初のグローバル360°キャンペーンを展開し、缶入り商品へと移行しました。マッキャン・ニューヨーク社(マッキャン・ワールドグループ社は、ニューヨークに本社を置く国際的な広告会社で、世界100カ国以上にオフィスを持っています。1960年に日本に進出し、1994年には独立した日本法人を設立しました。)との提携により開発されたこのキャンペーンは、6月10日に世界20カ国以上で初公開されました。
調査によりますと、過度に磨き上げられた完璧さに対する消費者の反発が高まっており、消費者は本物らしさと共感性を求めていることが明らかになりました。この変化は、スミノフアイスの遊び心と大胆さを兼ね備えたキャンペーンの歴史と自然に一致していると言われています。最近のグローバル・フォーカス・グループ調査では、スミノフアイスは真面目になりすぎないタイプの飲み物、つまり気取らない楽しさの代名詞として表現されていました。そのため、キャンペーン・クリエイティブは、スミノフアイスの長年にわたる遊び心のあるトーン・オブ・ボイスを重視し、「私たちはアイスと呼ばれていますが、液体です。私たちも理解していません」、「最高のレストランでは提供されません」といったキャッチフレーズで、ブランドを善良で、理屈に合わない、そして不遜な存在として描いています。この特徴的なフレーズに、Z世代の67%がコメディやミームを好むというインターネット文化に関する最新の知見を加えました。その結果生まれた画期的なクリエイティビティは、ブランドへの忠実さと誠実さを保ちながら、現代の消費者の注目を集めることを目指しています。
このキャンペーンは、ボトルから缶への移行を含む新しいパッケージ・デザインのグローバル展開と並行して開始されます。これは、RTD購入の多くが店頭での衝動買いであるコンビニエンスストアのカテゴリーにとって非常に重要であると言われています。またこのキャンペーンは、スミノフのグローバルなアプローチをさらに強化し、デジタルコンテンツとソーシャルコンテンツの強化を継続しています。消費者が、フェスティバルや友人とのピクニックなど、外出先で楽しむのに最適な、便利な形状の象徴的なドリンクを求めている今、スミノフアイスの新たな章を形作り、これまで以上にタイムリーなタイミングでグローバルなステージに登場させます。スミノフアイスは、私たちがまだ『RTD』という言葉を使う前から、このカテゴリーのリーダーであり続けてきました。
442、ロー・アンド・コー、生産を一時停止
2025年6月、ディアジオ社傘下のアイルランドのウイスキー・ブランド、ロー・アンド・コーは、ペルノリカール社のミドルトン蒸留所、タラモア蒸留所、ダブリン・リバティーズ蒸留所など、アイルランドの他の蒸留所と同様に生産を停止した最新の蒸留所となりましたが、ビジター・センターは引き続き一般公開しており、既存在庫を活用し、既存および新規のお客様の需要に応えるため、既存在庫のブレンドとパッケージングは継続されます。ディアジオ社は今年初め、ケンタッキー州レバノンにあるカーボン・ニュートラルなウイスキー蒸留所での生産と樽詰めを一時停止し、ブレット蒸留所の生産量は予定より進んでいると述べました。
ダブリンに拠点を置くこの蒸留所は、ディアジオ社が2014年にブッシュミルズを売却した後、アイリッシュウイスキー事業への復帰を果たした最初の事例として、2017年に設立されました。生産は2019年に開始されました。このブランドは、1926年に閉鎖されたアイルランド最大の蒸留所、ジョージ・ロー・アンド・カンパニー社をかつて率いたジョージ・ローにちなんで名付けられました。同社は2020年初のシングルモルト、ポート樽で熟成された13年物のアイリッシュウイスキーが誕生しました。最近では、初期の樽を使用したソレラ・ウイスキーも製造しました。(続く)
さて第69回目の回想録でしたが、いかがでしたでしょうか。ディアジオ社としてスタートしての55回目でした。前書きでキリン・ディアジオ社時代にスコットランド・アイルランド研修に行ったくだりを書きましたが、スコットランドではスペイサイドにあるドラミュア城(Drummuir Castle)という西洋の城を訪問し1泊しました。メイン道路から急に細い道にはずれ枯草の生い茂っている道を通り抜けたところにその城はありました。ディアジオ社はスコッチウイスキー事業関連でその城を所有していて、パートナーシップに基づいて利用しているとのことです。この城はスコッチウイスキーの本拠地とされていて、顧客向けのイベントや宿泊施設として利用されているそうです。
この城は1847年にトーマス・マッケンジーによって建てられたヴィクトリア朝スコットランド建築で、小塔や胸壁が特徴とのことです。ドイツのロマンティック街道にあるノイシュヴァンシュタイン城みたいに白くそびえる城ではありませんが、モンティ・パイソンのアーサー王の映画「ホーリー・グレイル」に出てきた城のイメージそのままでした。
郷に入れば郷に従えで、この城に入ってからすぐに行ったのはスコットランドの衣装に着替えることでした。あの独特なキルトのスカートのような伝統衣装です。ザ・ベイ・シティー・ローラーズが着ていたようなタータン・チェックのスカートをはき、ひざ下までのロング・ソックスに腰には太めのベルトをし、股間にぶら下がるような何かものをつけたかと思います。当然スカートなどはいたこともありませんので、下半身はやたらスースーする感じでしたが、この衣装を着用したままで夕食をいただいたり、元ディアジオ社でオーバン蒸留所の蒸留所長をされていたイアンさんのジョニーウォーカー・ブルーラベルの講義を聞いたのです。また壁一面に並べられているウイスキー群もどれでもどれだけでも飲んでよい、という太っ腹なところもありました。
寝室は一人一部屋なのですが、私があてがわれた部屋は地下のほうにありまして結構広い部屋でして、寝たのは夜遅くで酔っ払っていたのでよく覚えていないのですが、部屋の調度品が何だかやたら大きい訳の分からないものがたくさんあり、何のためにあるのかもわからず、気色悪かったのを覚えています。もしかしたら元々奴隷をつないでいた部屋で、その後そんな部屋がなかったかのように繕うためにいろいろ物を置いていたのではと疑ったほどでした。
さて、このようによしなしごとを書き綴っていますが、これからもまだまだディアジオ社につきましての回顧録は続けていく所存でございますので、ご指摘等ございましたらどんどんお寄せいただきたいと思います。何卒今後とも宜しくお願い申し上げます。
