Diageology 元ディアジオ・ジャパン株式会社社員の回顧録67

回顧録67
 
皆様こんにちは、元ディアジオ・ジャパン社社員による回顧録の第67回目です。
 ディアジオ社としての業績を振り返る53回目になります。アイルランド研修旅行の話を続けますが、途中の1日、ディアジオ・アイルランド社の営業の方と一緒に各担当しているパブを訪問し、12月のギネスビールの50L樽の仕入れ本数の調整の打ち合わせをするために同行いたしました。以前にも書きましたが、アイルランドではギネスビールの50L樽はディアジオ・アイルランド社が飲食店様に直接販売し、直接配達しております。確かその日だけでも5店舗位回りまして、ギネスビールの必要本数が各週15本から20本のオーダーになることを確認していったわけです。
 ダブリンの町中にパプや飲食店様がどのくらいあるのか分かりませんが、1店舗様だけでも12月の繁忙期に50Lの樽が60本から80本近くオーダーされるので、ある程度計画を立てて製造しませんと欠品という最悪の結果を招いてしまう恐れがあります。その他英国やドラフトギネスの飲用国からも発注がありますでしょうから、例年の実績は分かっているでしょうけれども、ひとつひとつ確認する必要があるのでしょうね。ギネスビールだけではなく、そのほかにハープ・ラガーもスミティックスもありますし、バドワイザーやカルスバーグもライセンス生産しておりましたので、全てのビールの各週に必要な本数をその店舗様のオーナーと打ち合わせしチェックしていたわけです。
 それでも回顧録の10の序章でも書きましたが、英国での話ですが、2023年の12月頃から英国でギネスビールが不足する事態に陥っている、とのニュースがありました。ギネスビールの樽が底をついた店があったり、まもなく在庫がなくなるという店があったり、英国全土でギネスビールが品切れになるパブが続出したそうですね。何でも並外れた消費の需要があったそうで、無いと言われるともっと欲しくなるのはどこも同じなのでしょう。たまたま11月にラグビーの国際試合が4週間続いたため消費量が増加したのかも、とありますが、こんなことは予定されていたことなので想定内のことでしょう。輸出担当者の想定輸出量通りだったのでしょうが、それまでコロナ禍で需要が落ち込んでいて、この3年で輸出量が低くなっていたので、3年前の輸出量との比較もできていなかったのでしょう。一気に皆さんが弾けて飲みまくったからなのではないでしょうか。そういえば高級テキーラのパトロンが同じく2022年の年末から欠品を起こしたことがありましたが、たまたま野毛のバーのRIGELさんにいた時、サッポロビール社のバカルディ担当の方と会いまして理由を聞きましたところ、米国の西海岸で相当数の需要があったので、あっという間に在庫が無くなってしまったそうです。コロナ禍が終わり、弾け具合が半端ないですね。では何卒今後とも宜しくお願い申し上げます。

ディアジオ社としての出発55
426、ディアジオ社の撤退を受け、スタウニング社が人員削減を実施
 2025年4月、デンマーク最大のウイスキー・メーカーであるスタウニング社は、ディアジオ社がディスティル・ベンチャーズ社から撤退したことを受け、従業員の約25%を削減しました。主に米国およびマーケティング部門の従業員13人を解雇しました。スタウニング社はより安全策を講じるため米国での事業規模を縮小せざるを得なかったためです。多くの異なる市場で事業拡大に多額の投資を行ってきたため、特に米国は物価が高く、関税導入を控えて市場に大きな不確実性が生じているため、とのことです。
 そのため、同社は当面、デンマークの母国市場とEU諸国に注力していく予定です。同社は、スピリッツに対する潜在的な関税賦課の可能性を受け、今後数ヶ月にわたり米国と欧州の状況を見極めていくと述べました。EUは最近、4月1日に発効予定だったアメリカンウイスキーへの50%の関税賦課を延期しました。スタウニング社の売上高は昨年、ディアジオ社の投資に支えられ約50%増加しました。この成長を牽引したのはドイツやデンマークなどの市場です。
 また、昨年、生産量を約40%削減するという決定も下しました。24基の新しいポット・スチルでどれだけの量を生産できるか、あくまでも推測に基づいたものでした。同社にとっては新しい試みでしたが、実際には蒸留所の拡張以降、業績は大幅に向上しています。そのため、生産量は計画よりも30%から40%増加しました。そのため昨年、在庫が過剰になり、このままのペースで生産を続ければ生産量が非常に多くなるため、新しい倉庫を建設する必要があると判断し、需要に対応できるよう生産規模を縮小することにしました。同社はヨーロッパ、アメリカ、そしてアジア太平洋地域で確固たるブランドであり続けたいと考えて、昨年、日本、台湾、オーストラリア、シンガポール、ハンガリーなど、多くの新規市場を開拓しました。
 ディアジオ社は2015年、投資部門のディスティル・ベンチャーズ社を通じて、デンマーク最大のウイスキー蒸留所であるスタウニング社の少数株を取得しました。同社は、以前より約5,000万ポンド(6,400万米ドル)を投資しており、これによりスタウニング社は2018年に新しい蒸留所を開設することができました。

427、シロックとロボス1707の株式交換に参入
 2025年4月、ディアジオ社は、アメリカのプロ・バスケットボール選手のレブロン・ジェームズ(LeBron James)がスポンサーを務めるテキーラのロボス1707(Lobos 1707)の過半数株式を取得し、さらに新たに設立しました合弁企業が北米におけるシロック・ウォッカのブランド権を取得しました。この動きは、ディアジオ社が大手投資アドバイザリー会社メインストリート・アドバイザーズ社(Main Street Advisors:MSA)と設立した合弁事業の一環です。この合弁事業は、北米におけるシロックのブランド権を最大限に活用し、ロボス1707の世界的ブランド力を強化することを目的としています。
 ディアジオ社の2024年6月30日期決算では、ウォッカ・ブランドの売上高が26%減少しました。しかし、合弁事業を通じて、このウォッカ・ブランドの業績はディアジオ社の北米における財務諸表には含まれなくなり、今後は合弁事業および関連会社からの収益として計上されます。その他の市場においては、シロックはこれまでと同様に、ディアジオ社の業績に反映させます。両社は共に、Cîrocブランドの潜在能力を次世代に最大限に発揮し、Lobos 1707の次なる成長段階を推進するための強固な基盤を構築していきます。
 MSA社はカリフォルニア州サンタモニカに拠点を置き、Complex、Dave’s Hot Chicken、Fenway Sports Group、Gin & Juice by Dre and Snoopなど、数多くの企業に投資を行ってきました。今回の提携を通じて、従来のモデルでは実現できない方法で、両社のリーチ、共感、そして収益成長を加速させる新たな機会を切り拓きます。今日、ソーシャル体験はより意図的なものとなり、デジタル空間が発見を促進し、透明性はこれまで以上に重要になっています。ブランドを成長させるには、ストーリーテリングを再考し、エンゲージメントを再考し、単なるお酒以上の体験を創造する必要があります。両ブランドは、それぞれ独自のアイデンティティ、消費者への訴求力、そしてリーダーを維持します。これには、Lobos 1707の創設者兼最高クリエイティブ責任者であるディエゴ・オソリオ(Diego Osorio)が含まれます。
 Lobosシリーズには、エクストラ・アネホ、レポサド、ホベンの3種類のテキーラと、メスカル・アルテサナルが含まれます。テキーラは何世紀にもわたる蒸留法を用いて造られ、スペイン産ペドロ・ヒメネス樽でソレラ方式で仕上げられています。2020年には、アメリカのバスケットボール選手、レブロン・ジェームズがMSAを通じてこのブランドに投資しました。このテキーラは、ドン・フリオとカーサミーゴスに続き、ディアジオ社の主力テキーラとなります。

428、ウエストワード・ウイスキー、破産申請
 2025年4月、アメリカのシングルモルト・ウイスキー、ウエストワード・ウイスキー社は、深刻な流動性問題に直面した後、事業再建のため連邦破産法第11章の適用を申請しました。ハウス・スピリッツ・ディスティラリー社(ウエストワード・ウイスキーとして営業)の創業者兼CEO、トーマス・ムーニー(Thomas Mooney)は、デラウェア州連邦破産裁判所に破産法第V章に基づく自主破産申立てを行いました。第V章は、中小企業が破産手続きを迅速化し、事業再建の交渉、事業の支配権の維持、そして監督強化を可能にするためにのみ利用できます。
 オレゴン州ポートランドに拠点を置くウエストワードは、2004年に米国でわずか30社しかないクラフト蒸留所の一つとして設立されました。同ブランドは、最近正式なカテゴリーとなったアメリカン・シングルモルト・ウイスキーのパイオニアとして知られています。ウエストワードは、プロキシモ・スピリッツ社傘下のストラナハンズ、ディアジオ社傘下のブレット、そしてサントリー社のクレアモント・スティープに次ぐ、アメリカン・シングルモルトのトップブランドであると主張しています。同ブランドは2018年にディアジオ社が支援するディスティル・ベンチャーズ社から投資を受け、全米展開にも着手しました。しかし、ディアジオ社は先月、ディスティル・ベンチャーズ社のアクセラレーター・プログラムへの新規ブランドの参入を停止すると発表し、その結果、雇用が減少する事態となりました。
 ウエストワードの深刻な流動性問題と財務上の大きな負担の複数の要因とは、特に過去2年間における、新型コロナウイルス感染症の流行後、アルコールおよびスピリッツ製品の需要の全般的な減少と軟化、そして世界経済によるコスト上昇とインフレといった問題が指摘されています。また、ウイスキーの過剰生産が売れ残り在庫の蓄積と生産能力への多額の投資、雇用、そして大規模倉庫の賃借による過剰生産を引き起こしたと指摘されています。同社は、これらの問題は運営契約における一定の制限により外部からの資金調達が不可能なことがさらに悪化していると述べています。
 ウェストワード社は、デンマークの蒸留酒メーカーであるスタウニング社、オーストラリアのウイスキー・メーカーであるスターワード社、日本のウイスキー・メーカーである嘉之助社、そして英国のブランドであるフィールデン(Fielden)など、ディスティル・ベンチャーズ社から投資を受けた数多くのウイスキー・ブランドの一つです。ウェストワード社は基本的に健全ですが、さらなる成長資金が必要です。ディアジオ社からの資金提供は今後行われず、創業者や外部投資家を含む様々な資金調達方法を検討しています。
 ウエストワード社の現在の年間生産能力は、完成ウイスキー9リットル・ケース約5万本分に相当し、現在の価格で将来の純売上高は2,500万米ドル以上となります。同ブランドの現在の在庫は6,800バレルを超えており、将来的には9リットル・ケース17万本分以上に相当し、今後5年間で60%を超える年平均成長率(CAGR:compound annual growth rate)を支えるとされています。また、超高級アメリカンウイスキー(価格60米ドル以上)のカテゴリーが活況を呈しており、昨年は8億3,900万米ドルに達し、60米ドル未満のウイスキーの3.2%の減少に対して、年間4.6%の成長を記録したと指摘されています。ウエストワード社は米国(オレゴン州とカリフォルニア州)および海外(オーストラリアと台湾)の主要市場に注力します。同社によりますと、同ブランドはカリフォルニアで成長を示しており、超高級アメリカンウイスキー全体の成長率15.6%に対し、16.1%増となっています。

429、21 Seeds創業者、詐欺罪でディアジオ社を提訴
 2025年4月、フレーバー・テキーラ・ブランドの21 Seedsの創業者たちは、親会社ディアジオ社に対し、傘下のカーサミーゴスとの競合製品開発計画を隠蔽したとして訴訟を起こしました。21 Seeds社の株主は、4月2日にFortis Advisors LLC社が提出した訴状の中で、この大手酒類メーカーがカーサミーガス・ハラペーニョ・テキーラという競合製品を開発することで、アーンアウト目標に設定された販売目標達成能力を損なったと主張しています。またディアジオ社による2022年の21 Seeds社買収は当初から詐欺行為だったと主張し、競合製品の導入計画について虚偽の報告をすることで、ディアジオ社を後払い方式の売却に誘導したと主張しています。
 ディアジオ社は、3人の女性創業者が会社の規模拡大と米国の店舗展開を目指した後、2022年春に非公開の金額でこのブランドを買収しました。ディアジオ社は、今回の買収は急成長カテゴリーの高成長ブランドを買収するという当社の戦略に合致すると述べています。21 Seedsフレーバー・テキーラ・シリーズは現在、キュウリ・ハラペーニョ、バレンシアオレンジ、グレープフルーツ・ハイビスカスの3種類で展開されています。その時点では未公開の開発中のフレーバー・テキーラ製品であったカーサミーガス・ハラペーニョが、21シーズの主力商品であるキュウリ・ハラペーニョ風味のテキーラと、同社のコアな女性顧客層の両方を狙っていたと述べています。フォーティス・アドバイザーズ社はさらに、買収以来、ディアジオ社は21 Seedsを現在も休止状態に置き、マイルストーン達成やアーンアウト支払いの可能性を意図的に排除する形でブランドを管理・運営しており、これは買収契約に直接違反していると主張しています。取引完了から3年間(アーンアウト期間の60%に相当)が経過しましたが、21 Seeds社はディアジオ社の支配下で完全に停滞し、売上高は一貫して横ばいでした。フレーバー・テキーラ分野における21 Seeds社の首位の地位は失われ、ブランド認知度、市場浸透度、そして業界での牽引力においてより高い地位を築いた競合他社に追い抜かれてしまいました、と訴えています。(続く)


 さて第67回目の回想録でしたが、いかがでしたでしょうか。ディアジオ社としてスタートしての53回目でした。序章の続きですが、ディアジオ・アイルランド社の営業の方と同行した時のことですが、私は英語が話せませんので、先方さんが何をしゃべっているのか2割くらいしか理解できなかったのですが、競馬好きで日本の北海道の競争馬の生産牧場を知っている、と言ったのを覚えております。アイルランドも競馬で有名な国ですが、日吉にありますO‘Brien’s Irish Pubのオーナは競馬好きで、パブを作る時にアイルランドの職人に競馬関係の絵柄を壁にたくさん書いてもらってました。趣味嗜好のあふれる素敵なアイリッシュ・パブになっております。
 話を戻しますが、その営業担当者が言うには(ノートに英語で書いてもらいましたので分かりました)北海道の白老ファームや社台ファーム、ノーザンファームを知っているとのことで、私もその頃競馬をやっていましたのでその牧場の名前くらいは知っていましたので、何か親近感のある営業マンだなと安心したのを覚えています。英語もろくすっぽ話せないアジアの果てから来た同じディアジオ社の社員のために、自分の営業を見せてくださり、おいしいお昼ご飯の店に連れて行ってくれたのです。
 お昼ごはんと言えば、その営業担当者は何も食べずに私にだけ昼ごはん食べて行けとばかりに、メニューを持ってきて、ギネスビールも飲んでいけというので、テーブルで一人で飲んで食べたという記憶があります。その彼は事務所で打ち合わせでもしていたのでしょうね。メニューもアイリッシュ・ランチがどんなものだか全く知りませんでしたので、どんなものかなと思っていましたら、メニューにあったのはタコス料理が何種類かだけで、その中から選んだのです。そうしましたら結構大きいタコスが2つお皿に乗っているではありませんか、ギネスビールをパイントで先に飲んでましたので、食べきれずに半分残してしまいました。横須賀のどぶ板の若いアメリカ兵たちも、夜街に出た時はタコスを選んで食すのは知っていたのですが、アイルランドでもメキシコ料理のタコスは定番だったのです。
 最初のアイルランド研修旅行時は、アイルランド共和国はバブルの絶頂時でして、GNPも世界中でトップクラスの頃でした。ギネスビール社も行け行けゴーゴーで売り上げを伸ばしていた時期に当たります。クオリティや注ぎ方にはうるさいギネスビールですが、忙しいのは分かるのですがギネスビールの注ぎ方が結構ひどい店も何店か見受けましたね、そんな時こそしっかりしなくてはいけないのですが。人の振り見て我が振り直せ、ではないですが、あまり見せたくないシーンだったのではないでしょうか。あれだけ日本では口酸っぱくギネスビールの注ぎ方にはうるさく言ってますのに、本国はこんなだったなんて。営業の方もクォリティーより売り上げの数字のほうがプライオリティが高いのでしょうね。
 しかし、アイルランドはそんな中でも、町中にそれ程人があふれていたようには思いませんでしたが、下町情緒あふれると言いますか、あまりぎすぎすした感じは全くなく、人情味たっぷりのアットホーム的な感じがしたものです。私たち一行が初日の日にホテルに遅い時間に着いたのですが、それでも初めてのアイルランドの夜ですから、町のアイリッシュ・パブに繰り出そうということで皆で出向いたのです。丁度ホテルの近くにアイリッシュ・パブがあり、かなり疲れていたものの、席についてギネスビールを飲み始めたのです。ただ漠然と皆で飲んでいましたら、我々の疲れている顔が分かったのでしょうか、店のオーナーが、どこから来たんだ、今着いたのか、ではこれでもつまみにしな、とばかりにスナック菓子を1つ何気なくポンッと私たちのテーブルに置いてくれたのです、サービスで。大変うれしい出来事をよく覚えています。
 さて、このようによしなしごとを書き綴っていますが、これからもまだまだディアジオ社につきましての回顧録は続けていく所存でございますので、ご指摘等ございましたらどんどんお寄せいただきたいと思います。何卒今後とも宜しくお願い申し上げます。


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