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みどりが うれしそう

午後3時を過ぎても暑い日。
ジャンパーなしで森に入りました。
どの樹も若い青葉をつけていて、森の奥までを見通すことはもうできません。
真上には少し疲れたような淡い水色の空があります。
視線を下ろしていくと、薄い黄緑の葉をつけた樹冠の枝たちの隙間に水色の空や白い雲がありました。

乾いた落ち葉の上にしずかに安全靴を下ろすのですが、シャカリ、シャカリと落ち葉たちが返してきます。
踏み下ろす地表にも若い緑がありました。
いつ地上に顔を出したのか、一枚だけ葉をつけた幼い笹が並んでいます。
同じ背丈の笹の兄弟はひとつの節をつくり終え、そこから細く尖った茎を伸ばし始めています。まだまだ大きくなると言っているようでした。

森の奥まで歩き、ホオノキの大樹の前に来ました。
大樹の根元あたりから伸びたホオノキジュニアの新芽が開いています。
冬芽の間は互いにぴったりと身を寄せ合っていた6枚の葉が、それぞれ意志を持ったように反り繰り返ろうとしています。
少し赤みを帯びた葉の大きさは10センチほど。あの30センチを超える草履のような葉になる日が必ず来ることを信じました。

ホオノキジュニア

伸び始めた笹を踏まないように森を回ります。
小さな花が総状についたウリハダカエデの葉は、三本指の恐竜の足跡のような形です。どの葉も、緑が濃いだろと言っていました。
歩を進めます。
ケンポナシの前に来ました。
記憶に残っているのは、固い豆粒のような冬芽です。いつそうなったのか、茶色の芽鱗を割って淡い黄緑色の幼葉が生まれていました。ケンポナシは晩熟のようです。
ケンポナシの幹を巻くように歩くと、ミズキの樹がいました。
楕円形のミズキの葉は伸び盛りといったところでしょうか、10センチを超える葉が何枚もありました。
ただ、何枚かの葉には虫食い穴が見られました。穴をあけられた葉とその隣の無傷の葉と、緑の照りに変わりはありませんでした。
虫たちの育ちに、潔く身を捧げたように見えました。

森を回り、「ここにおいで」と言ってくれるヤマグワの樹の前に来ました。
若葉を日よけにするようにヤマグワの雌花がありました。見ればどの枝にもついています。

ヤマグワの雌花

赤く甘い実を想い浮かべました。
森の鳥たちも待っているに違いありません。
銀シートを敷いて寝ころびました。
地面から背中に伝わる冷たさが心地よいです。
天井をつくり始めた緑の葉が逆光で深緑に見えます。
微かに揺れる葉を見つめます。誰に言われた訳でもないのに、冬芽を破って黄緑色の葉が広がっています。
太陽が一番低くなる日から一番高くなる日を過ぎてまた一番低くなる日まで、森の樹々の営みは途切れることを知らないのでしょう。
目をつむると、ホオノキやウリハダカエデ、ケンポナシ、ミズキの緑葉が浮かびます。どのみどり色も、どこかうれしそうな色でした。
目を開けると、ヤマグワの若葉と雌花が見えます。ぼくも、ホッとうれしくなりました。

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