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【借金3000万男の記録】

第9話 天職だったのかもしれない

営業職に転職すると決めた時、正直なところ、大きな不安を抱えていました。

それまでの人生で、営業という仕事に関わったことは一度もありません。体力を使う仕事一筋でやってきた僕にとって、「人と話して数字を作る」という仕事は、未知の世界そのものでした。「向いていなかったらどうしよう」「また振り出しに戻るんじゃないか」。そんな不安を抱えたまま、初出勤の日を迎えました。

でも、蓋を開けてみると、状況は僕の想像とは違いました。

最初から、調子が良かったんです。

振り返ってみると、僕はもともと人と話すことが好きでした。裏の仕事をしていた時期も、体力仕事をしていた時期も、どんな環境でも、人と話す瞬間だけは自然と楽しめていました。ただそれまで、その「好き」を仕事に直結させたことがなかっただけだったんだと思います。

営業の現場に立ってみると、今まで感じたことのない感覚がありました。

人と話すこと自体が、苦になりませんでした。

初対面の相手と話す緊張感も、もちろんありました。でも、体力を消耗する働き方とは違う種類の疲れで、むしろ「もっと話したい」「次はどう話そう」という前向きな感覚の方が強かったんです。先輩社員からのアドバイスも素直に吸収できましたし、何より、結果が数字としてすぐに返ってくることが、単純に面白かった。

気づけば、同期や周りと比べても、悪くない成績を出せていました。

正直、拍子抜けするくらいでした。あれだけ悩んで決めた転職だったのに、いざ始めてみると、驚くほど自然に馴染んでいけたんです。「もしかしたら、これが自分に向いている仕事だったのかもしれない」。そう思えるようになったのは、働き始めてそう時間が経たないうちのことでした。

これまでの人生で、「向いている」と胸を張れるものが、正直あまりありませんでした。借金、裏の仕事、離婚、子供と会えない日々。何かに追われ続けているだけの人生だと、どこかで思っていました。

でも、営業という仕事の中で、初めて「自分の強み」のようなものを見つけられた気がしました。

そして、成績が上がれば、当然、収入も上がります。

体力任せに働いていた時期とは違う形で、数字が動き始めました。時間の切り売りではなく、自分の話し方や工夫次第で、収入そのものが変わっていく。この感覚は、それまで経験したことのないものでした。

借金の返済ペースにも、はっきりと変化が出てきました。

600万円という数字に対して、これまでとは違う手応えを感じられるようになったのが、まさにこの時期からでした。同時に、たまに会える子供に対しても、「頑張っている父親の姿」を、少しずつ見せられるようになった気がします。

もちろん、順風満帆だったわけではありません。契約が取れずに落ち込む日も、当然ありました。それでも、体力だけを削っていた頃とは違い、「工夫すれば結果が変わる」という手応えがある分、精神的にはずっと健全でした。

この仕事に出会えたことは、今振り返っても、僕の人生における一つの転機だったと思います。

次回は、営業職での成績が安定してきた頃、僕が600万円の返済に対してどう向き合っていたか、そして次に立ちはだかることになった壁について書こうと思います。

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