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【借金3000万男の記録】

第12話 「前とは違う」と言われた日

その日は、本当にただの偶然でした。

営業の外回りの途中、ふらっと立ち寄った店で、前職場の同僚だった女性とばったり会ったんです。裏の仕事から抜け出し、まっとうに生きようと決めた頃、一緒に働いていた相手でした。

「久しぶり」

そう声をかけられて、少し立ち話をすることになりました。近況を聞かれるまま、営業職に転職したこと、成績が伸びていること、ある程度は正直に話しました。相手も驚きながら、素直に喜んでくれました。

でも、会話を続けるうちに、彼女がふと、こんなことを言ったんです。

「なんか、変わったね」

一瞬、何のことか分かりませんでした。成績が伸びていることを、前向きに捉えてくれているのかと思っていました。でも、続けて彼女が言った言葉は、僕の予想とは違うものでした。

「前は、自分のことより人のことを考えられる人だったのに」

その一言が、胸に刺さりました。

彼女が知っている「僕」は、まだ裏の仕事から抜け出したばかりの頃の僕でした。生活を切り詰めながらも、周りの人のことを気にかけたり、困っている人に声をかけたりしていた僕。そういう姿を、彼女は覚えてくれていたんです。

でも、今の僕はどうだったか。

成績が伸び悩んでいる同僚に、アドバイスひとつしない。周りに気を配る余裕もなく、ただ自分の数字だけを追いかけている。彼女の一言で、これまで薄々気づいていながら見て見ぬふりをしてきた自分の姿を、はっきりと突きつけられた気がしました。

「そう、かな」

僕はそれだけ答えるのが精一杯でした。

彼女に悪気があったわけではないと思います。むしろ、久しぶりに会った僕を見て、素直に感じたことを口にしただけなんだと思います。だからこそ、余計に重く響きました。取り繕う理由もない、本当にただの率直な感想だったからです。

その日、家に帰ってからも、彼女の言葉が頭から離れませんでした。

「前は、人のことを考えられる人だった」

裏を返せば、「今は、そうじゃない」ということです。

数字を追い続けた結果、僕は確かに成績を手に入れました。でも、その過程で、自分が大切にしていたはずのものを、いつの間にか手放していたんだと思います。人との繋がり。誰かを気にかける気持ち。困っている人に手を差し伸べる余裕。

孤独に気づいた時にも、心のどこかで違和感はありました。でも、彼女の一言で、その違和感の正体が、はっきりと言葉になった気がしたんです。

「自分は、変わってしまった」

その事実を、認めるしかありませんでした。

この日をきっかけに、僕は少しずつ、自分の働き方や、人との関わり方を見直し始めることになります。数字だけを追いかける生き方が、本当に自分の望んでいたものだったのか。もう一度、ちゃんと考え直す時期に入っていきました。

次回は、この出来事をきっかけに、僕が実際にどう変わろうとしたのか、そして周りとの関係をどう立て直していったのかについて書こうと思います。

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