【借金3000万男の記録】
第18話 彼女の一言
交際が始まってから、僕は正直、身構えていました。
デート代、食事代、プレゼント。付き合うということは、当然、それなりの出費が増える。リーダーになってからの飲み会や食事会と同じように、「これも必要な出費だ」と、ある程度は覚悟していました。
でも、彼女の方から、思いもよらない一言がありました。
「無理にデートにお金使わなくていいよ。それより、返済に回して」
正直、驚きました。
これまでの人生で、お金のことで誰かにこんな風に言われた経験はありませんでした。むしろ、元嫁のように、知らないところで借金を作られた経験の方が、僕の中では強く残っています。だからこそ、彼女のこの一言は、余計に重く響きました。
「そんなの、悪いよ」
僕は、そう返しました。交際費くらい、自分がちゃんと出すべきだと思っていましたし、それを削ってもらうのは、彼女に負担を強いているようで、気が引けました。
でも、彼女は続けてこう言ったんです。
「今、無理して高い店に行かなくても、私は困らないよ。それより、あなたが借金を早く終わらせて、楽になる方が嬉しい」
その言葉に、僕はしばらく何も言えませんでした。
これまでの人間関係の中で、僕の借金を「自分ごと」のように考えてくれた人は、ほとんどいませんでした。元嫁は、むしろ僕の名義で借金を増やす側でした。友人関係も、数字を追いかける中で、自分から遠ざけてきました。
そんな中で、彼女は違いました。
僕の借金を、他人事ではなく、「僕たちの今後」に関わることとして、一緒に考えようとしてくれていたんです。
それから、僕たちのデートの形は、少し変わりました。
高い店に行くことは減りましたが、家でご飯を作ったり、お金をかけない場所を一緒に探したり。そういう時間も、僕にとっては十分すぎるほど楽しいものでした。むしろ、無理に取り繕わなくていい関係だからこそ、素の自分でいられる心地よさがありました。
浮いたお金は、そのまま返済に回すようになりました。
正直、これまでの返済とは、少し感覚が違いました。一人で歯を食いしばって切り詰めていた頃の「我慢」とは違う。彼女という理解者がいる上での、前向きな「選択」としての節約でした。
「早く終わらせたい」
以前も、同じ言葉を何度も思っていました。でも、あの頃の「早く終わらせたい」は、追い詰められた焦りからくるものでした。今の「早く終わらせたい」は、彼女と、これから先の未来を、身軽な状態で歩いていきたいという、前向きな気持ちからくるものでした。
同じ言葉なのに、中身はまったく違うものになっていました。
数字だけを見ていた頃には、絶対に得られなかった感覚です。お金の使い方一つとっても、隣に誰がいるかで、これほど意味が変わるものかと、この時期、痛感させられました。
次回は、この彼女との関係、そして返済がどう進んでいったのか、書ける範囲で続けていこうと思います。
