【借金3000万男の記録】
第16話 二度目の偶然
不思議なもので、人生には、同じ人と何度も偶然出会う時期があるのかもしれません。
その日も、本当にただの偶然でした。取引先回りの合間に立ち寄った店で、前職場の彼女と、また顔を合わせることになったんです。
前回会った時とは、正直、僕の状況がずいぶん変わっていました。
あの時は、「前は人のことを考えられる人だったのに」と言われ、自分の変化を突きつけられたばかりでした。挨拶から始めた小さな見直し。チームを意識するようになった働き方。そして今は、リーダーという立場を任されるようになっていました。
「久しぶり」
そう声をかけられて、また少し立ち話をすることになりました。
近況を話す中で、リーダーになったことを伝えると、彼女は少し驚いた様子で、そして素直に喜んでくれました。
「前に会った時と、なんか雰囲気違うね」
前回とは逆の意味で、そう言われました。
「人のことを考えられなくなった」と指摘された、あの日から。挨拶を続け、後輩の相談に乗り、チームの成績のために動くようになった、今の自分。彼女の目には、その変化がはっきりと映っていたようでした。
「前に言ったこと、覚えてる?」
彼女がそう聞いてきたので、正直に答えました。
「ずっと覚えてる。あの一言がきっかけで、いろいろ見直したから」
そう伝えると、彼女は少し照れくさそうに、でも嬉しそうな表情を見せました。
短い立ち話のつもりが、思いのほか長く続きました。お互いの近況、仕事の話、これまでの苦労話。彼女も、この数年でいろいろな経験をしてきたようでした。
話をしているうちに、僕の中で、ある感覚が芽生えていました。
数字だけを追いかけていた頃には、絶対に気づけなかった感覚です。人と話すこと、誰かと時間を共有すること自体の心地よさ。それを、彼女との会話の中で、久しぶりに強く感じていました。
別れ際、彼女が何気なく言いました。
「また、こうやって話せたら嬉しいな」
その一言に、僕はどう返事をしたのか、正直、あまり覚えていません。ただ、その日一日、彼女との会話が、頭から離れませんでした。
離婚を経験し、子供とはたまにしか会えず、数字だけを追い続けて孤独になっていた僕にとって、この偶然の再会は、何か新しい風のように感じられました。
次回は、この再会をきっかけに、僕と彼女の関係がどう続いていったのか、そして借金返済の道のりと合わせて書いていこうと思います。
